- 2019年02月06日 22:52
安倍総理「森羅万象」発言。歴代総理はどう発言?
1/2統計不正問題が焦点となっている最近の国会ですが、それに関連して本日6日の国会答弁での安倍総理の発言が話題になっています。国民民主党の足立信也参議院議員から、特別監察委員会の報告書を読んだかについて問う質問への答弁の中で出た発言で、以下の通り報じられています。
出典:首相「森羅万象すべて担当」 でも統計不正報告書は未読足立氏が「テレビの前の方はガクッときたと思う。大事なことなのに残念」と返すと、首相は「総理なので森羅万象すべて担当している」と説明。「さまざまな報告書があり、すべて精読する時間はとてもない。世界中で起こっている(ことに関する)電報などもある」とし、自身の多忙ぶりに理解を求めた。これに対し、足立氏は「気持ちは忖度(そんたく)いたします」と皮肉った。
この「森羅万象すべて担当している」という総理の答弁が、ネットで大きな反響を呼び、Twitterでは「森羅万象」がトレンド入りする事態にまでなっています。

森羅万象とはどのような意味でしょうか。三省堂のスーパー大辞林によれば、「宇宙に存在する、すべてのもの」とされています。辞書通りに意味をとるなら、安倍総理は宇宙に存在するすべてのものを担当していることになり、神に近しい存在ととれるわけです。

もちろん人間ひとりでそのようなことはできませんから、ネット上で大きな反響を呼んだのでしょう。Twitter上では「森羅万象担当大臣」というタグまで作られ、これもトレンド入りしています。
しかし、この言葉は本来の意通りにとるべきなのでしょうか? 国会答弁や霞が関において、比喩的に使われている言葉だという意見がありました。ここでは過去に国会で、「森羅万象」がどう使われてきたかを見ていき、安倍総理がどのような意味で使ったかを考えてみましょう。
まず、安倍総理の過去の発言です。今になって騒がれていますが、総理になってから既に「森羅万象」を複数回使っています。
出典:安倍晋三(総理大臣) 平成30年02月20日私の場合は、もちろんこの予算について、森羅万象全てのことについてお答えをしなければならない立場ではありますが、全てのことについては、しかし、それは全て私が詳細を把握しているわけではありません。
出典:安倍晋三(総理大臣) 平成29年11月28日政府が取り扱っている森羅万象全てを私が説明できるわけでは当然ないわけでございますから
過去の安倍総理の発言を見る限り、総理という立場は森羅万象を取り扱うものだが、その全てを自分ひとりで把握・説明はできない、という認識は以前から持っていたようです。総理の立場が森羅万象を取り扱うというという認識を、他の総理大臣も持っていれば、安倍総理の発言は国会答弁における意味を踏襲したものだと言えるでしょう。
では実際に過去の総理大臣で、森羅万象を使った人はいるのでしょうか? 結論を先に言うといました。
出典:菅直人(総理大臣) 平成23年04月18日(強調部引用者)率直に申し上げて、そういう御指摘そのものには十分反省をしなければならないと思っております。と同時に、総理という役割はまさに森羅万象のことに対して対応しなければなりませんので、それぞれの役割が内閣全体としてはあるわけでありますから、私が細かいところまで全てを知っているかと言われれば、率直に申し上げて、そこまでは承知をしていない。
上記の菅総理(当時)の発言は、東日本大震災における政府対応を巡る答弁の中で出たものですが、総理の役割は「森羅万象のことに対応」としており、また細かいところまで総理個人が知ることはできない、という意味において、今回問題になっている安倍総理のものとほぼ同じものだと言えます。しかし、当時この菅総理の発言が話題になった記憶はありません。