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直木賞の「宝島」を読む

 直木賞の受賞作で話題になっている「宝島」(講談社・1850円)を読んでみた。書店では品切れということで、アマゾンに発注しておいたら、案外に早く届いた。包みを開いてみて、その分厚さに、まず辟易した。新しい本は一日で読んで、その日のうちか翌日のブログに書いて「一丁あがり」でやってきた私のスタイルには納まりそうもない。

直木賞というのは、どういう賞なのかと改めて検索してみたら、芥川賞が純文学作品を対象とするのに対して、直木賞は大衆娯楽作品という大まかな住みわけがあるようだ。本を買ってしまってからでは遅いのだが。ただ、沖縄を舞台にした作品というので、読んでみる気になったのだ。

 決して読みにくい本ではない。ウチナーグチというのだろうか、独特の沖縄方言を基調にして書かれてはいるのだが、読んでいると意味は自然にわかってくる。沖縄の人が、本土の人を相手にして話してくれている雰囲気になっている。ただし私にも一日で読むのは無理だった。くたびれて途中でやめたら、そこからペースか乱れて、私はこの数日間、ブログを書く気にもなれずにいた。

 「宝島」のタイトルには、サブタイトルとしてHERO‘s ISLANDという英語を添えてある。沖縄を宝の島だと言って自慢しているわけではない。反米(そして反日本政府も含む)の闘士の物語なのだ。

それも、正面切った高潔な英雄などではない、米軍基地から物資を盗み出す、最高に評価しても「義賊」と呼べるかな、という程度の人たちなのだ。そして語り部になる主役は、沖縄警察の捜査官という設定になっている。これも、アメリカ軍に対しては抵抗する方法がなく、日本政府からも期待されない迷子のような存在になっている。

 この本の帯紙に書いてある宣伝文では「基地から持ち出された”予定外の戦果と英雄の行方”、奪われた沖縄(ふるさと)を取り戻すため、少年少女は立ち上がる。」としているのだが、それほど単純な構造ではない。最後に「コザ暴動」の場面が出て終るのだが、「それでどうなったのさ」という思いが残る。

 私が思うには、この「宝島」というタイトルは反語なのだ。戦後日本の、あらゆる矛盾を押し付けられた「ゴミ処理場」のように、今の沖縄はなっている。でもそれは本来の沖縄の姿ではない。美しい海に囲まれた楽園であることは、奪うことのできない事実なのだ。それでも便利なゴミ処理場の役割を、日本政府は押し付けずにはいられない。本土から切り離して独立させるなどは、夢にも考えてはならないのだ。

 それでは沖縄は、どんな未来を描いて進んで行けばいいのだろうか。沖縄の人たちが、「正当な日本人」として待遇される日は、来るのだろうか。そんな根の深い問題を背景にしながらも、あくまでも「大衆娯楽小説」として読めるというのが、今回の受賞理由になったのだろう。

沖縄ではいま県民投票の準備が進んでいる。政治的な問題には、政治的な意思表示が必要になる。そんな「時ネタ」の材料としても、この本が広く読まれることを期待したいと思った。

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