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メディアは人を叱ってくれない

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 現代人、特に朝から晩までインターネットをウロウロしているような人は、人間同士が面と向かい合ったコミュニケーションが減ったぶん、ディスプレイ越しに・メディア越しに学習する機会が増えているかと思う。書籍や漫画やインターネットは沢山のことを教えてくれるのは事実なので、どんどん学べばいいんじゃないかと思う。
 
 けれどもメディアは人を叱ってくれない。
 デタラメな解釈をする人がいても、メディアはそのことを注意してくれない。
 このあたり、引っかかることがある。
 
 たとえば午前二時まで本を読みふけっている中学生に対して、筆者がディスプレイからニュッと出てきて「明日学校だろ?中学生の寝る時間だ」「他の分野の本も読まないと危ないぜ」などと親切に教えてくれることは無い。そして、メディアの読み手が曲解に曲解を重ねた受け取り方をしていても、メディアの送り手は口出しすることも修正することもできない。

読んだものを取捨選択できてしまう・自由解釈ができてしまう弊害


 
 だからメディア越し only の学習は、当人に取捨選択や受け取り方が委ねられ過ぎているというリスクが常につきまとう。同じ本を読んでも十人十色の受け取り方があるが、もし、その受け取り方や解釈が見当違いだったとしても、メディア越しにしか学ばない人は、その見当違いを修正される機会が無い。かくして、最優秀とみなされるメディアに触れているにも関わらず、ちっとも身になっていないか、むしろ有害な曲解をインストールされて良しとしている人間さえ出来上がってしまう。
 
 こうした問題は、本来、講義を受けるだとか、師匠や先生から教わるとかいった学習形式をとることによって、ある程度まで解決されるものだった。「ここはこういう意味だ」「そこの解釈は一般的にはこうなんだよ」といった具合に、アイコンタクトを伴いながら教えてくれる先達がいれば、初学の段階でいきなりトンデモ解釈に辿り着くことは少なく、ついでに体系だった理解というものも達成しやすい。もし、新解釈を生み出す場合も、一般的な解釈を踏まえたうえで、そこから型破りを選ぶことができる。どうしても師匠や先生が見つからない場合も、抄読会のような、複数の人間でメディアにあたるような学習形式をとれば、独りよがりのトンデモ解釈に辿り着くリスクを軽減できるのかもしれない。
 
 しかし、部屋に籠もって一人で本やインターネットから学ぶことを専らとしている人には、このようなチャンスは得られない。独りよがりにどこまでも突き進んでしまうリスクを回避するためには、メディアとメディアの比較検討を繰り返すような“注意深い態度での接触”“体系や文脈を意識した学習”がよほど必要だろう。ところが、その“注意深い態度での接触”“体系や文脈を意識した学習”という習慣自体が、ただ見たいメディアだけを選好しているだけでは身につけにくいときている。せめて一度、どこかで誰かから習わなければ、難しい。
 
 だから「インターネットなどのメディアを摂取しまくっていれば、独りぼっちでも賢くなれる」と思うのは、たぶん大間違いなのだろう。いくら知識の断片を吸い込みまくったところで、その知識を吸収する順序・作法・コツといったものを多少なりとも学んでいなければ、たいして役に立たないか、むしろ有害な頭でっかちに陥ってしまうのがオチではないだろうか。実は勉強も、独りで引きこもってやるよりも、他の人の意見やアドバイスと自分の考えを比較できるような環境でやったほうが良いのだろうし、そのような環境を提供してくれる場所*1に背を向けるのは大きなディスアドバンテージだと覚悟すべきなのだろう。
 

全能感に耽溺したい人のための、メディア独学への引きこもり



 尤も、ただ知的全能感に溺れたいがために知識を集めている人の場合、「メディアは人を叱れない」はむしろメリットになるかもしれない。
 
 なぜなら、メディア越しの学習だけに徹すれば、誰かに叱られることも間違いを指摘されることも無く、唯我独尊の無限回廊に引きこもることができるからだ。自分の知見が、現実世界でどこまで通用するのかを気にする必要も無い。「自分はまだ不勉強」という自覚に耐えられないようなプライドの強い人でも、本を一冊読めば俺TUEEEE*2し放題――そんな境地に溺れるべく、メディア越しの学習に引きこもるという情況も、近頃ではありふれたものになっているようにみえる。

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