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書評:「ありえない」をブームにするつながりの仕事術

「ありえない」をブームにするつながりの仕事術: 世界初パクチー料理専門店を連日満員にできた理由 (絶版新書) [単行本]
佐谷 恭
ソーシャルキャピタル
2019-01-09

著者は世界初となるパクチー料理専門店「パクチーハウス東京」を立ち上げた人物だ。ここ数年メディアでたくさん取り上げられたので目にしたという人も多いだろう。実は筆者とは旧知の間柄でもある。

そういえば昨年、繁盛していたにもかかわらず店を閉めたと風のうわさに聞いていたものの、その理由もその後何をしているのかも知らなかった。それらの疑問は、本書を読んできれいに氷解した。

著者が最初にパクチーハウスを設立した時、多くの人がリスクが高いという理由で反対したという。中には現役の飲食店経営者もいたそうだ。だが著者のスタンスはいい意味で型破りだった。
日本パクチー狂会の活動を通じてパクチー好きが「結構いる」ことはわかっていた。しかし、知名度も低いその時代、人口におけるパクチー狂の割合は1%ぐらいだなと見積もっていた。つまり、乗降客5万人とされる経堂駅であれば500人。その全員が月一回来ても足りない。

そこでもっとメジャーな食材なり業態を選ぶのが常識であろう。でも僕には常識は無かった。

僕の行動指針によると、行きたいところにはなんとしてでも行きたい。時間はかかるかもしれないけど、いつか必ず。そういう店づくりをすれば、僕のような人がわざわざ来てくれるんではないだろうか。だってその店は食事は美味しいのはもちろんのこと、面白い人にたくさん会えるのだ。僕ならわざわざ電車に乗っていくな。そういう人に来てもらおう!

僕は商圏を関東ぐらいに設定した。4000万人の1%は……40万人。これは十年単位じゃないとさばききれないな。パクチーハウス「東京」と東京をつけたのはそういう意味だ。東京圏には一店舗で十分だからここ以外に作る必要が無い。
結果、「そこにしかないもの」を求める客が西日本や海外からも来店する人気店が誕生することとなった。

著者のスタンスは一貫していて、お店を単なる飲食サービスを提供する空間とするのではなく、いろいろな人間が出会い、交流を深めることで様々な刺激が生まれる場を創り上げようとするものだ。
「交流する飲食店」というサブタイトルをパクチーハウス東京に付けたのは、僕自身が旅で訪れた海外のゲストハウスでの体験を多くの人に味わってほしいからだった。
(中略)
さっきまでまったく知らなかった人と会話をして、その日を楽しんでもらえればいい。いろいろな感覚、考え方の人がいることを知るだけでも世界平和の一歩となる。人と人とがしゃべるきっかけを築くことで「店内が盛り上がる」ぐらいのことを考えていたが実際はそれどころじゃなかった。

隣り合ったお客さん同士が会話を楽しみ、次回の予約を一緒にしてくれることがあった。隣の人と話してみたら面白く、近くのテーブルが次々つながって仲良くなり、店をリピート利用してくれるだけでなく「世界の料理研究会」みたいなグループを作って東京中の飲食店をめぐるようになった人もいた。さらに、パーティ営業というスタイルで誰でも参加できる社交の場を作ったら、そこで意気投合した人同士が気が合って話が合って、一緒に会社を作ることになったと報告してくれた。
これはその後に立ち上げたコワーキングスペース「パックス・コワーキング」運営にも当てはまる。
もしかすると「何気なく一緒にいること」が、人の長所を引き出し、人と人をつなげやすくするのかもしれないと考えました。そこで、一日2時間ほどの食事に費やす時間よりも、その4~5倍の時間を費やす日々の仕事の時間を、この発想で変化させれば面白いことが起こるのではないかと思いました。
パクチーハウス東京を閉店してからの著者の行動は、200㎞以上を走破するサハラマラソン等のウルトラマラソンに参加したり、コースやタイムにとらわれないマラソン“シャルソン”(ソーシャルマラソンの略)を考案し、その団体を立ち上げたり、さらにはそれをグローバルで実施するグローカル・シャルソンを実施したりと、一見すると全くの新天地に旅立ってしまったようにも見える。

でも、根底に流れる理念は今も昔も変わってはいない。
僕は起業して10年半、飲食業(パクチーハウス東京)、オフィス業(Pax Coworking)、イベント企画(シャルソン)をやってきた。その根底にあるのは一言でいうと「旅と平和」。つまり旅人(=自発的に動く人)が増えると世界が豊かで平和になるだろうという僕の予測と信念を、さまざまな形で証明し、納得してもらうことを目指している。
“40歳定年制”というコンセプトがある。人生100年時代、一つのことでキャリアを突き詰めるのではなく、40歳のあたりで一度棚卸をし、自身のこれからやってみたいこと、出来ることを見つめなおそうという考えだ。

著者の転身はその一つの幸福な成功例のように筆者には思える。

筆者自身も毎日ジョギングはしているが、今日からちょっぴり長めに走ってみようという気になった。40代になって転身を考えている人、とりあえずパワーが欲しいという人におススメの一冊だ。

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