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アメックスのプラチナカードは申込制を導入しても「高級ブランド」でいられるのか? - 森山祐樹(中小企業診断士)

2018年10月、クレジットカードブランドのアメリカン・エキスプレス(以下、アメックス)のプラチナカードが刷新され、日本でも金属製のメタルカードが発行された。アメックスのプラチナカードは、これまでプロパーカードホルダーの限られたメンバーへの招待制であったが、今回の刷新によって他のクレジットカードと同様に申込制となった。

この変更により、高額な有料会員の取り込みを幅広く行える半面、カードの希少性とブランド価値の低下も予感させる。そこに潜むアメックスのジレンマを読み解いてみたい。

(※なお、アメックスにはグリーン、ゴールド、プラチナ、センチュリオン、提携カードなど様々なラインナップが存在するが、本稿では日本国内のプラチナカードにフォーカスする。)

■アメックスプラチナカードとは

アメックスのプラチナカードは、1993年に日本で初めて発行されたいわゆるプレミアムカードの先駆けである。当時、ステータスの象徴であったゴールドカード市場に他社が参入し、ゴールドカードの上位という位置づけとして更なるステータスを付加するためにアメックスが発行したのが始まりだ。

その後、プラチナカードの存在が認知され始めると、日本国内においてもプラチナカードと名乗る、または位置づけられるプレミアムカードとして、ダイナースクラブプレミアムカード、JCB The Class、三井住友プラチナカード等(一部、プラチナではなくブラックカードの位置づけだという意見もあるが)をはじめ、その他にも多数のカードが発行され、そのサービス内容やステータス感を争う市場を形成している。

■アメックスプラチナカードの刷新内容

今回発表されたアメックスプラチナカードの主な刷新内容は、メタルカードへの変更とプラチナカード取得方法の変更であった。メタルカードへの変更は、これまでのプラスチックカードと比較して重厚感を醸し出し、時折シルバーカードと見間違えられていた従来のプラチナカードと比較してプレミアム感を創出している。

一方、プラチナカードの取得方法については、これまでアメックスが発行するプロパーカードに申込み、一定期間クレジットヒストリーを磨いたのちに、アメックスより限られたメンバーのみに招待が届く「招待制」から、他のクレジットカードと同様に誰でも申し込みができる「申込制」へ変更された。

そのため、これまで存在は漏れ聞こえていたものの、その内容は謎に包まれていたプラチナカードのサービスが、今回HPに詳細を公開し、個別の申し込みを解禁した。背景には、グレーゾーン金利の撤廃と年収の3分の1までしか貸し出せない総量規制による影響が存在している。

一昔前まで、純血を保つがごとくアメックスブランドはプロパーカードにのみ許されていた。しかし近年の提携カードの拡充やリボ払いのPR、会員への新規会員紹介キャンペーンの実施など必死の施策の背景には、これらの規制により、会員一人当たりの利益率が低下し、多くの会員を抱えることで利益を確保する方向へシフトしたことが影響していると思われる。

■バーゲンセールのトレードオフ

これまでのアメックスは、非常に秀逸なマーケティング手法により、プラチナカードのプレミアム感を高めてきた。そこには、適度な希少性や人との違いを感じさせる仕掛け、男心をくすぐるような絶妙なブランディングが存在している。

その証拠に、他のプラチナ相当のクレジットカードの年会費が数万円(JCB ThaClass5万円、三井住友プラチナカード5万円等)の中で、アメックスのプラチナカードの年会費は13万円(税抜き)と飛び抜けて高い。これは、プラチナカードの中でもアメックスのプレミアム感を求める人が市場に一定数存在していることの証であろう。

プレミアム感を更に高めるアメックスプラチナカードの特典は様々なものがあり、全てをここで紹介できるわけではないが、1つ上げるとするならば、非常に質の高い24時間365日のコンシェルジュサービスであろう。

世の中のサービスには電話応対サービスがごまんと存在するが、アメックスのコンシェルジュサービスの質はその中でも群を抜く。携帯通信会社の電話応対などは当然のことながら、ファーストクラスや上顧客専用のダイヤルを持つ国内航空会社の電話応対よりも高いレベルを持ち、NOと言わないサービスを提供する。

しかしながら、今回のプラチナカード申込制への変更により、従来よりも会員数が増加すると考えられる。それにより、これまでアメックスの強みであった高品質なコンシェルジュサービスが質を担保しつつ、その会員増に対応できるのか。

加えて会員増は、希少性を失わせ、実質的なブランド価値の低下を予感させる。特に売りであるコンシェルジュの電話応対を減らすべく、ネットでの手続きや申込みに移行するサービスが増加しており、それらに誘導する施策も目立つ。

■アメックスは今後もブランド価値を維持できるのか?

規制による影響とはいえ、利益額の追及による量(会員数)の増加、それにより手間のかかる質の高いサービスから、ITを活用した自動化サービスへの転換は高額の年会費を支払う会員にどう影響するのであろうか。

限られた優良顧客に提供してきたサービス品質が、その量に耐えられず悲鳴をあげ、サービスの見直しを余儀なくされるかもしれない。招待制の廃止によりプレミアム感を失ったが、それに対する対価がメタルカードのみでは心もとないのではないか。

これからのアメックスはどこへ向かうのか? 質と量のトレードオフにどう対応していくのだろうか? その昔、ゴールドカードのプレミアム感が低下した際にプラチナカードに活路を見出したように、現行のプラチナカードとセンチュリオンカード(ブラックカード)の更なる高みを創出するのだろうか。

今回のプラチナカードの刷新は、アメックスの新しい戦略転換を感じさせる大きな変革なのではないだろうか。

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