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行政のスリム化のために必要なこと

2013年度の国家公務員の採用が56%も削減されるのだとか。どう思います?

答えは、人によって区々でしょう。

採用を半減した程度では生ぬるいとか、或いは、そんなことをすれば行政の停滞を招き、ひいては国民に迷惑をかける結果になるとか。

私思うのですが、テレビや新聞の論調はどうも一貫性を欠いているのが嫌なのです。マスコミの基本的姿勢は、行政のスリム化は、年配の職員を首にするか、或いは新規の採用を抑制するかは別として、大いに推進すべきであるというものだと思うのです。

まあ、そのような考え方は当然あってよし!ですが、それを言うのであれば、少々の行政のサービス低下があっても余り文句は言えないと思うのです。しかし、何か社会的に注目を浴びる事件や事故が起きる度に、役所は何をしていたのだというご批判ばかり。もちろん、役所が怠慢であるケースもあるのでしょうが、中にはそうではなく過大な役所の介入を求める声もあるのです。

それに、マスコミは、例えば地方自治体がふるさと納税に取り組むようなことを大変大きく取り上げたりするのです。ふるさと納税を推進するために、地方自治体がどれほど多くの予算と人員を投入したのか?しかし、その割に地方自治体が得たメリットは微々たるものではなかったのでしょうか?国全体で考えたらむしろマイナス。それでも、そんなことをマスコミは盛んに取り上げる、と。
そして、その一方では、役所の無駄をなくせと言う。

役所の無駄をなくすのは当然ですが、無駄なことをするのをマスコミが助長していることも忘れてはいけないのです。

岡田副総理は言います。「一定の身分保障がある公務員に辞めてもらうのは難しい。採用で抑えるしかない」

確かに、生首を切るのは難しい!しかし、何か方法があるのではないでしょうか?だって、数十年前までは、50歳前後で役所をおさらばする公務員なんて大勢いたからです。

それに、そもそも中身に関係なく一律に各省庁にスリム化を求める姿勢もおかしい。そんなことだったら、何のために政権交代をしたか分からない。パーフォーマンスだけの仕分け作業はおかしいとしても、しかし絶えず行政の中身を見直す作業が必要であるということに間違いはないでしょう。

私は、何が必要な仕事で何がもはや必要ではないということについて、全省庁に渡って客観的に述べることはできませんが、しかし、自分が関係してきた仕事についてなら言えるのです。

例えば、銀行や信用金庫などの金融機関を検査監督する業務。このような業務を遂行するために、金融庁には1500人ほどの定員が認められ、そしてそれを補完するために全国の財務局にも相当の定員が確保されているのです。

では、これだけの大規模な人員が昔から確保されていたのか?

決してそんなことはないのです。金融監督庁や金融庁が発足する以前も、大蔵省銀行局と財務局にはそれなりの人員が金融機関の検査監督のために認められていたのですが、その規模は格段に小さなものでしかなかったのです。それが、今やこれだけの大所帯に。

では、何故金融機関の検査監督のための人員が増員されたのか?

それは、バブル経済が弾けて不良債権問題が発生し、金融危機が起こったためなのです。金融危機の再発を防ぐためにはどうしても大規模な増員が必要だという主張が認められたということです。もう10年以上も前のことなのですが、当局が人員増大を要請した理由としては、アメリカは日本とは比べ物にならないほどの検査官が配置されており、我が国が金融危機の再発を防ぐためにはどうしても検査体制を充実する必要があるというものであったのです。

では、今でもこの検査体制は維持すべきなのか?

その前に、それだけ立派な検査体制を抱えていたアメリカはその後どうなったのでしょうか?

言うまでもなく、その後アメリカでは住宅バブルが弾け、日本に負けないほど深刻な金融危機を招いてしまったのです。

つまり、どれほど立派な検査体制を有していても、それだけでは金融危機の発生を未然に防ぐには十分ではないのです。では、何のための検査体制なのか?結局、金融危機を未然に防ぐことが
できないというのであれば、それほど大規模な検査体制など維持しておく必要もないのではないのか?

私思うのですが、税金を投じて金融機関の検査体制を確保しようというのではなく、金融機関が自ら監査法人などにこれまで以上の厳しい監査をさせることの方が先決であると思うのです。そして、仮に監査法人がずさんな監査を行った時には、厳しく対処すれば済むことも多い筈なのです。

私は、当局の検査が一切不要であると言っているのではないのです。ですが、現在のように、金融機関側に予告の上検査に入るような中途半端な検査ではなく、検査に入るのであれば、突然予告なしで入るような真の検査をすべきだと思うのです。今の検査は、立派な経営を行っている金融機関もそうでないところも、同じように順繰りに行うもので緊張感に欠けていると言わざるを得ないのです。

ということで、大胆にスリム化ができる部門は、どれだけでも探せば出てくると思うのです。但し、
真のスリム化を進めるためには前提があるのです。それは何かと言えば、現在の各省庁の業務を定めた法体系を全面的に見直し、不要になったと思われる業務を廃止するために法律の改廃に取りむくことが必要であるのです。

はっきり言って現在の六法全書は厚すぎる!

確かに、世の中の仕組みが変化し複雑になるのであるから、それに応じて法律の数も多くなり複雑になるのは当然であるのですが、それにしても不要になった行政事務が多すぎるのではないのか?

しかし、役人というものは、法律に従って行動しなければいけないので、どんなに必要性が薄れたと思われる仕事でも、法律が改廃されない限り、バカ正直に続けてしまうものなのです。

本当は不必要な法律の規定もあり、また不必要になった行政事務もあるのに、ただ以前の通り事務を踏襲する、と。

何故不必要な法律の改廃が進まないのでしょう?

それは、法律を新たに作ることは役人にとって手柄になる訳ですが、法律の改廃などは、面倒くさいだけで特に手柄になることが少なかったからなのです。さらに言えば、議員立法といって、国会議員の先生が作った法律を廃止しようなどということを考えると、当の先生から睨まれるようことにもなりかねないので、君子危うきに近寄らず、と。

で、その結果、膨大な法律のジャングルが出来上がり、その結果、役人の仕事は増えることあっても、減ることはない、と。そして、そのような状況で、定員だけ減らせと政治家が言うので、役人は右往左往することになってしまうのです。

法律を作る仕事、或いは廃止する仕事は、本来国会議員の仕事であるのです。

行政をスリム化したいと政治家が本当に考えるのであれば、法律の改廃に本格的に取り組むことが先決です。

何故、それをやらないのか?

能力の問題?それとも、そんなことをしてもマスコミが褒めてくれないから?

いずれにしても、法律の改廃なしに行政のスリム化を進めることはできないことを肝に銘ずるべきでしょう。

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