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青沼陽一郎氏の裁判員制度の批評こそ支離滅裂

 裁判員制度が始まって10年がたとうとしていますが、青沼陽一郎氏の裁判員制度批評があまりに支離滅裂です。

集中連載 10年で崩壊した!裁判員制度に「正義」はあるか/上 割れる「殺人事件」判決の支離滅裂」(サンデー毎日2019年2月3日)

 青沼氏の主張は、結局のところ、1人1人殺しても死刑にならないのはおかしい、こんなひどい事例なのにということをメインに、裁判員制度の導入の理由が「そもそも裁判員制度は、オウム真理教事件の裁判が長期化したり、刑事裁判の判決に不服な犯罪被害者たちが

「裁判官は被害者、遺族の感情を理解できていないのではないか」
「裁判官には一般常識がないのではないか」と声を上げはじめたところに、司法改革の一環として、市民の司法参加の議論が加わって導入されたはずだ。」

として、不満をぶちまけています。

 せっかく裁判員裁判で死刑判決が下されたのに、「先例」に従って控訴審で無期懲役に減刑した、けしからんというのが論旨です。

 判断能力が減退し心神耗弱が認定されれば必要的減刑なので死刑判決は刑法上もあり得ないわけですが、青沼氏は、それらも納得できないという遺族の感情が強調されています。


マスコミが伝えない裁判員制度の真相

 冒頭に青沼氏の結論が述べられています。
「「司法の民主化」と期待を集めた裁判員制度が今年5月、施行から10年の節目を迎える。「市民感覚の反映」を謳いつつ、先例重視との狭間で揺れ動き、死刑を含めた量刑判断が公正に機能してきたかは甚だ疑問だ。法廷取材を続ける筆者が集中連載で徹底検証する。」

出版時に勝ってみたのですが…


裁判員Xの悲劇 最後に裁かれるのは誰か

 そもそも裁判員制度は、司法の民主化がそのものが目的ではありませんし(司法の基盤強化が目的です)、裁判官が非常識だからなどという理由で導入されものでもありません。議論の過程ではえん罪問題が言われ、陪審制度の是非という議論の経過は辿っていますが、青沼氏は自らが勝手に思い描いた裁判員裁判を理想のものとして論じているだけです。

 死刑にするかどうかについて「先例」にとらわれるなといのであれば、それはイコール死刑にしろという意味合いしかないわけですが、青沼氏は、死刑が特別の刑罰であることを全く理解されていないようです。

 裁判員が誰がなるのかわからず、あたった裁判員の発想だけで死刑になったり、ならなかったりする方が不正義なのですが、それを控訴審が是正するのはむしろ控訴審の役割としては当たり前すぎるくらい当たり前の話です。

裁判員制度の意義が揺らぐ? だったら死刑にすべきなのか 岡田成司氏の見解
裁判員裁判の死刑判決が高裁で破棄される 守られるべきは先例ではなく基準 勝手に作られる裁判員制度の意味

 青沼氏の論調は、こんなひどい事件で裁判員が死刑としたのに、それを減刑するなんて裁判員制度の意味がない、だから「破綻」だと主張しているのでしょうが、もともと裁判員制度の導入の意味も理解していないことを露呈しています。

 私からみれば国民に裁判員に就任することの義務を課したことの意味が空洞化した出頭率こそ、破綻を示しているのですが、観点は全く違います。
10年を迎える裁判員制度 「裁判員制度の施行状況等に関する検討会」

 裁判員制度が、裁判員が被害者の気持ちをわかってくれて死刑にするための制度と考えているなら、そういう制度ではないので、直ちに裁判員制度の廃止派になったらいいと思います。

2019年2月3日撮影

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