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米中対立の背後で進む「ロシア」の急拡大、圧倒的軍事力で南米・アジア制覇はすぐそこに=高島康司

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世界の目が米中対立に集中するなか、その背後でロシアの影響圏がどんどん拡大している。今や南米・アジアへと勢力を伸ばし、米国の覇権を崩すところまで来ている。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)

※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2019年2月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

動き出すプーチン。米国の覇権を脅かすロシア兵器「S-400」とは

米司法省、ファーウェイと創業者の娘を起訴

1月28日、米司法省は、中国の情報通信機器大手・ファーウェイと、同社の創業者の娘で最高財務責任者兼副会長の孟晩舟氏を起訴した。銀行詐欺通信詐欺司法妨害のほか、米通信機器大手Tモバイルから技術を盗もうとした罪に問われている。

この逮捕をめぐり、中国とカナダ、そしてアメリカの関係が悪化している。ウィルバー・ロス米商務長官は記者会見し、「中国企業はもう何年も前から我が国の輸出法を破り、制裁に違反し、自分たちの違法活動の便宜のために米金融制度を利用してきた。それはもう終わりだ」と述べ、強硬な姿勢を明確にした。

この起訴は、3月1日にひかえた米中協議で、中国の知的財産権の保護に関して最大限の譲歩を引き出したいトランプ政権の戦略が働いていると見られている。

3月1日の協議ではなんらかの妥協が成立し、米中の対立関係は緩和するとの見方も強いが、米中のせめぎ合いはこれからさらに激しくなることは間違いない。

3月1日の協議が決裂すると、中国製品に対する追加関税の導入でIT機器のグローバルなサプライチェーンもズタズタに寸断されることから、米中関係の成り行きには目が話せなくなっている。

ロシアの動きが報じられなくなっているが…

このように、いま主要メディアの報道は米中関係に集中している。

そのため、2014年3月のクリミア併合以来、一時は軍事衝突の可能性さえあったロシアの動きはまったく注目されなくなっている

最後に注目されたのは、昨年の11月26日に発生した黒海、ケルチ海峡におけるウクライナ海軍艦艇のロシアによる拿捕事件である。

しかし、事件後数日間は緊張したものの、いまではほとんど忘れ去られた事件になった。ロシアの動きは、いわば米中対立の影に隠れてしまい、まったく見えなくなっているのが現状だ。

ウォールストリート・ジャーナルの特集記事

しかし、注目されなくなったからといって、ロシアの動きが止まったわけではまったくない。

むしろ、アメリカと中国が鋭く対立し、それに多くの時間とエネルギーを傾注している背後で、ロシアの影響圏はどんどん拡大しているのが現状だ。

1月23日、米大手経済紙の「ウォールストリート・ジャーナル」は、「新しい鉄のカーテン:アメリカの空軍力に挑戦するロシアの迎撃ミサイル(The New Iron Curtain: Russian Missile Defense Challenges U.S. Air Power)」という長い特集記事を掲載した。これは、ロシアが複数配備した高機能迎撃ミサイルシステムの「S-400」により、米空軍が従来の作戦計画の変更を迫られているという内容だ。

記事には、ロシアがシリア北部から東ヨーロッパ、そして北極圏に配備した「S-400」が、広大な空域をロシアの防空圏としている地図が掲載されている。この空域では、米空軍の自由な活動を実質的に困難にさせている。記事では、「いまのとこシリアでは米空軍は予定した作戦を実施できているものの、「S-400」のため将来は計画の変更を余儀無くされるだろう」との発言を紹介している。

「S-400」

アメリカの覇権の前提にあるのは、圧倒的な軍事力である。必要であれば、世界のどの地域でも軍を動員して敵を駆逐する能力が、結局は覇権を維持するための前提になっている。

しかしもし、ロシアの配備した「S-400」が米空軍を迎撃する能力があり、これを米空軍が恐れて戦略を変更しなければならないのであれば、世界の一部の地域ではロシアが制空権を握っており、アメリカの軍事的な覇権の前提が崩れつつあることを示しているはずだ。

ちなみに「S-400」は、周囲600キロの飛行物体を探知し、400キロメートル離れた地点で撃墜できる高機能迎撃ミサイルシステムだ。巡航ミサイルであれ、超音速の戦闘機であれ、また、地球の裏側から成層圏を飛行してくる大陸間弾道弾であれ、どんな飛行物体も探知し、危険の及ばない位置で撃ち落とすことができる。

ライバルのアメリカの防空システム、「パトリオット」との決定的な違いは、全方位の目標を見つけ出し撃ち落とす能力だ。アメリカのシステムは、あらかじめ指定された180度の範囲しか探知できない。

さらに「パトリオット」は、発射装置を準備して戦闘態勢を整えるのには30分かかる。くわえて、「パトリオット」が目標を破壊できる距離は、「S-400」の400キロに対して180キロと半分以下だ。

これはミサイル防衛だけでなく、戦闘機や爆撃機との戦いにおいても重要な意味を持つ。「S-400」に狙われたら最後、戦闘機や爆撃機にはミサイルを発射したり爆弾を投下したりする時間的な猶予は一切ない。

このように「S-400」は、現存する迎撃ミサイルシステムで最先端の兵器でアメリカも開発できていない。そのため、中国やシリア、そして将来的にはイランのようなロシアの同盟国のみならず、サウジアラビア、トルコ、インドなどのアメリカの同盟国も購入を決定している。いまインドネシアが導入を検討しているところだ。

「ウォールストリート・ジャーナル」の記事にもあるように、いま「S-400」の防空圏はシリア北部から東ヨーロッパ、そして北極圏というロシアの領土に比較的に近い地域に配備されているが、これが中国やイラン、さらにアジアの他の地域に配備されるようなことにでもなれば、これらの地域におけるアメリカの作戦能力は限定され、アメリカの軍事的な覇権にほころびが出てくるに違いない。

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