この10年くらい、「地方自治体の財政再建は進んでいるのか。」という議論になる時に、「臨時財政対策債」の扱いで結構判断が分かれるな、という印象を持っています。例えばですが、大阪では知事、市長を始めとする維新系の方は「財政再建は進んだ」と言い、それ以外の方は「市債は増えているではないか」という議論になります。それは臨時財政対策債の見方が全く違うからです。
臨時財政対策債というのは、国が地方にお渡しすべき交付税の中に、国は財政難で財源が足らないので、ひとまず地方側が借金をして、その償還を後日、国が100%面倒を見るという仕組みです。もっと分かり易く言うと、国が「今、カネ無いからとりあえずあなた借金して。あとで必ず返すから。」と地方に言っているという感じです。
たしかに、国が100%償還財源を面倒見ると約束しているのですから、これは「市が返すべき借金の目線から外していい。」と見る事も出来ます。しかし、「国が面倒を見るかどうかはともかく、市債は市債。市の借金ではないか。」というのも一理あります(なお、「臨時財政対策債」という名前の地方債があるわけではありません、あくまでもすべて「県債」、「市債」でして、それを帳簿上そういうカテゴリーに分類しているだけです。)。ここで「大阪では財政再建が進んでいるのかどうか。」の判断が割れます。
私の感じを言うと、「臨時財政対策債の償還はたしかに国が100%面倒見てくれる事になっているが、実体的には、国から貰う交付税に食い込んで来る。地方が返すべき借金の目線から外していいとは思わない。」というものです。臨時財政対策債は国の責任と言い切って、地方自治体が返すべき借金の目線から外す論理には「3対7」くらいの分(ぶ)しか与えられません。
というのも、そんなに地方交付税総額が増えていませんし、今後も増えていく事はあまり想定されません。そういう中では、臨時財政対策債を積み上げてしまうと、その償還額が地方交付税の真水部分(具体的な事業に使える分)を相当に圧迫します。論理的には、本来貰うべき真水部分の地方交付税にオントップで償還財源100%を乗せた形で地方にカネが来るべきです。そして、総務省は「そうなっている」と言うでしょう。しかし、一括で貰う地方交付税の総額が増えていないのであれば、償還分が膨れ上がる分だけ真水部分が減っていきます。