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「新築がお好きですか? 日本における住宅と政治」(ミネルヴァ書房)読了

今月、夫が定年退職となる。
で、先日「住宅ローン」の話になった。
10数年前、新築一戸建てを購入。引っ越しを済ませ、一回目のローンの引き落としがあった直後、夫は大動脈瘤破裂。
もしそのまま・・ということがあったならば、家のローンはゼロとなった。
幸いにして、生き残ったわけだが、夫の手術からほどなくして、ワタクシのがんが発覚。二回の入院・手術となった。
「今回契約内容を確認してみたんだけど、ローンの名義を二人にしていて、特約つけていたら、(私が)がんになった段階ででローンはちゃらだったんだよなー。違う人生があったかもなー」
ことほど左様に、ローンの呪縛は人の生きる選択肢を狭めていたりする。
人はなぜ、そうまでしても新築一戸建てを買うのだろうか?

政治学者の砂原庸介神戸大学教授の「新築がお好きですか? 日本における住宅と政治」(ミネルヴァ書房)は、こうした「持家社会」が日本においてなぜ形成されて来たのかを政治側からの視点で明らかにして行くと同時に、上記の疑問への’厳しい’答えを提供する。

住宅政策に公的介入が行なわれるのは、それが社会の資源であり、また社会福祉とも直結する部分でもあるからだ。
歴史を遡れば、戦前、日中戦争が激化する中で、家賃が高騰。政府にとっては地代・家賃の統制が要請される。世帯主が徴兵されたあとの生活安定基盤対策、まさに「銃後の護」として安価な住宅共有が求められたのである。
戦後、住宅営団はGHQにより閉鎖。内務省国土局を中心に国庫補助住宅が建設され、1951年に公営住宅法が制定される。建設省と厚生省の激しい所管争いをしながら、公営住宅建設は増大され、1955年には日本住宅公団が設立。郵便貯金などを用いた財政投融資資金や生命保険借入金等の民間資金を活用しながら、大都市圏で大規模な宅地開発等も行ない「ニュータウン」を拡大する。こうして公民ともに住宅供給は拡大されて、1970年代初期まで高度経済成長を支えて行くことになる。

これが、今や「負の資産」となっている。
増加する空き家、災害によっての住宅崩壊が突然、局地的に発生する。
1995年に発生した阪神・淡路大震災は木像密集市街地には大規模な火災も発生させて甚大な被害をもたらした。
2011年の東日本大震災も同様に、津波の被害で家をなくした人々に住宅供給をどう行なって行くのかは行政にとって大きな課題となった。
持家が軸となっている社会の場合、復興も持家再建支援となる。となると、復興住宅は「残余化」することになる。東日本大震災では「みなし仮設」の制度ができ、前進を見る者の、持家社会においては人々を移動させることは難しく、その地域での再建を志向しつけなければならない。
一方で災害から年月が経ってくると、借上復興住宅にいた人々が期限の満了を受け、立ち退きを求められるといった問題も起ってくる。
公と私の部分をどう判断するかも、難しい問題となるのだ。

なるほど。
私は、もっぱら家を買う、借りる主体としての側しか、日本の住宅政策を見て来なかった。
実はそこには、政治側の何かしらの意図に基づいた政策決定(法律、助成金等)によって、知らず知らずのうちに巧妙に誘導されているということに気付いていなかった。
「家を持って一人前」的な「持家で安心」といった「住宅双六」の唯一の’あがり’のもとでのマインドセットと引き換えに、多くの人々は莫大なローンと、長過ぎる通勤時間、休みなく働き続ける・・といった、個人や家族の人生そのものを捧げることとなるにもかかわらず、だ。

そして、多くの場合「こんな家にすみたい」という理想は現実にはならない。
「完全に自由な選択」とはなっていないのである。
そこにこそ、日本政治の根幹を見る。

あとがきにもあるように、「住宅」は「家」であり、そこに住まう「家族」とは切り離すことができない。
住宅政策と現実に生きる人々、家族の変化は相互に作用する。
逆に言えば、空き家や一人暮らしの増大も含めて、住宅における負の資産対策と家族政策はブリッジでつながっているのだ。
そう言う意味でも、住宅政策こそ日本の最優先課題なのである。

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