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「外国は中古が多い」は本当か? 総務省の中古スマホ推進に感じる課題と矛盾

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総務省と公正取引委員会が、携帯電話大手3社が下取りした中古スマートフォンの流通実態調査に着手している。目的は、中古スマホの国内での流通活性化だ。

現在各社は、新品スマホの購入促進を目的に、「使っているスマホを中古として引き取る代わりに割引を行う」という施策を採っている。この際、買い取った中古スマホが「日本国内ではあまり流通せず、他国に流れている」ことを問題視しているようだ。

中古スマホがあると新品が流通しづらい。だから携帯電話大手は中古をあえて国内流通していない。中古スマホの流通量が増えれば、携帯電話の入手コストが下がり、国民の負担が下がる……。

総務省が考えているのはこういうシナリオのようだ。

だが、この話はどうにもおかしい。「中古スマホをめぐる事情をきちんと理解していないのではないか」「中古スマホの商品特性を理解していないのではないか」と思えるからだ。

そこで、筆者の目から見た「中古スマホ促進施策のズレ」を指摘してみたいと思う。

アメリカでは「古いスマホは家族に譲る」

まずポイントは「中古スマホの利用率は、本当にそこまで大きな問題なのか」ということだ。

すぐに手に入りやすい調査データとしては、2018年2月にMMD研究所がオークネット総合研究所と共同で行った「日本とアメリカにおけるスマートフォン中古端末市場調査」がある。筆者はここ10年、年に最低でも5回はアメリカへ取材に出かけており、市場的に状況がよくわかっている、という点も加味して、ここでは「海外における中古市場のベンチマーク」として、アメリカをターゲットにおいてみたい。

この調査によれば、日本での新品端末利用率は「93.9%」。アメリカの「78.5%」に対してかなり高い。ネット調査であること、調査期間が2017年12月と、すでにそれなりの時間が経過していることに留意する必要はあるものの、「日本は新品に偏っている」との指摘は正しい。

ただし、ここでいう「新品でない端末」とは、中古販売された端末だけを指すわけではない。

もともと、日本においては端末を「家庭内に保管している」人の割合が群を抜いて多い。この調査によれば、日本では60.7%の人が家庭内に保管しており、アメリカでは43.7%に減る。では、携帯電話会社による中古買取、中古販売店への売買、オークションサイトへの売買が多いのか、というとそうではない。それらは日本と差がほとんどない。日本と違うのは「家族・友人に譲った」という項目。ここが12.3%もある。

MMD研究所がオークネット総合研究所と共同で行った「日本とアメリカにおけるスマートフォン中古端末市場調査」より。アメリカも日本も、中古へ流通するスマホの比率は変わらないが、「家族・友人に譲る」率では大きな違いがある

すなわち、アメリカという市場に限って言っても、「中古スマホの販売が活発」なのではなく、「使用済み端末の融通が活発」なのだ。

日米中古事情の違いは「修理」事情から生まれる

なぜこのような違いが生まれるのか? 理由は複数考えられるが、もっとも大きいのは、携帯電話事業者による販促が活発で、新品を買うハードルが低い、ということだ。新品を買いやすい環境にあるなら、誰もが新品を欲しいと思うのは当然のことだろう。

ここで筆者が注目するのは「修理」のコストと頻度である。同じ調査の中で、日米の修理に関する意識の違いも明確になっている。

日本では、修理の費用について、実に39.6%の人が「無料だった」と答えている。理由は、半数の人が「修理を補償するサービス」に加入しているからだ。携帯電話事業者によるものが41.3%、メーカーによるものが10.2%なので、合算すれば過半数を超える。これがアメリカの場合、47.2%の人がなんの補償サービスにも加入していない、と答えている。結果的に、日本の場合、携帯電話利用料金と重畳される分月々の費用が上がり、無償修理の比率が高くなる。

日本ではスマホの修理が「無料」だった人の割合が圧倒的に多い

スマホ修理費用の違いの理由は、日本では「修理を補償するサービス」に加入している人の比率が圧倒的に高いからだ

アメリカには、日本に比べて「携帯電話修理店」の量が圧倒的に多い。日本には総務省による「登録修理業者制度」があり、登録することが必要な状況だが、アメリカではそうではない。ショッピングモールなどには安価な修理業者が必ず出店しており、低価格に修理を請け負うようになっている。

一方でこの違いは、「スマホをどのくらいキレイに使うのか」という、中古端末の品質に影響している……と筆者は見ている。

日本の場合、わざわざ売る端末は、価格下落を恐れ、かなり状態の良い形で扱われる。中古業者の話を聞いても、「日本からのスマホは状態が良い」という点については一致した見解である。

一方海外の場合、中古の品質はそこまで高くない。ケースの利用率が低いこともあるが、「カジュアルに直せる」「カジュアルに売れる」ことから、それこそ「傷一つない状態」を維持する必然性が薄い、ということがあるのだろう。

特に中国やアメリカでは、携帯電話をカジュアルに販売できる、という特徴がある。どのくらい手軽かというと、街角に「携帯電話の自動買取機」が置かれているのも珍しくないくらいだ。

筆者がサンフランシスコ市内で見つけた「ecoATM」。スマホを入れると査定して買取までを行ってくれる「自動買取機」。同社はサンフランシスコを中心に、もう5年近く地道にビジネスを展開している

筆者が中国・深圳でみかけた「携帯電話の自動買取機」。こうした端末が駅の通路などに多数あり、日本よりもずっとカジュアルに中古買取が行われている

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