- 2012年04月02日 01:55
湯浅誠の声明とインタビューへの違和感
1/2湯浅誠が内閣府参与辞任について述べた言葉や、
湯浅誠からのお知らせ: 【お知らせ】内閣府参与辞任について(19:30改訂、確定版)
それをめぐって受けたインタビューに違和感がある。
特集ワイド:内閣府参与を辞任、湯浅誠さん「入って」みたら見えたこと - 毎日jp(毎日新聞)
もともとの意図を考えるとうなずけるものはある
もともと、湯浅の辞任の言葉は誰に、どんなつもりで言った言葉なのかを考えながら読むといいと思うのだが、まず彼が内閣府参与になったことで政府の犬になったとか、梁山泊の末路状態みたいな受け取られ方をしたことに対して向けられた言葉ではないかと感じる。
湯浅が自分の掲げた要求や理想モデルのために、政府に参画すること自体は、十分にありうることだと思う。ぼくのような左翼だって、自分たちの言っていることを実現するために、部分入閣するなんて有り得る話だし、中央政府だけでなく、地方政治でもいろんな実験がすでにある。その中身こそ問題なのだが、ぼくは湯浅が参与としてやってきたことの中身を評価するほどの情報はない。だから、湯浅が政府に参加して良いとか悪いとか、そういうことをいえる立場にはない。
政権の一角に入ったことへの反論として、湯浅の声明やインタビューを読むと、わりと素直に入ってくる。頑迷に政権参加を否定する相手に対して、“現実を変えるために自分を変えず、そうやって石頭なことを言っていたら何も変わらない。現実をよくするために一歩でも二歩でも前へ進む選択と努力をすべきだ”、“入ってみて気づく現実もたくさんあるんだ”――こういう角度での発言として読むと、湯浅の気持ちがわかったように感じるのだ。
内閣府参与になることも要求を実らせる第一歩だが、そこから外れる――席を蹴るのも状況を動かすパフォーマンスなのだ、と湯浅は述べる。「なんだ。都合が悪くなったら責任逃れで逃げていくのか」という批判を意識してのことだろう。ここも湯浅の反論の心情はよくわかる。
自分の掲げた要求や理想に一歩でも近づけるために、観客ではなく当事者として動く。動いたことの責任はとる。逆にいえば、一歩たりとも近づけず、それどころか後退してしまったときには、その責任を運動側は感じるべきであり、感じないままの無感覚の運動は反省すべきだ――こういうふうに湯浅は言っている、とぼくは解釈した。
湯浅の発言の一部や、それが一人歩きすることのあやうさ
誰に言っているかを想定し、上記のように要約すれば、違和感はほとんどない。
ところがである。
湯浅の声明は長い。
長いので、いろんなことが含まれている。その中には首をかしげるようなところや、相互に矛盾するようなところが出てくる。さらに、そういうものが他人によって独立してとりだされるとき、逆に有害な言説になって逆立ちしてしまうのだ。
たとえば城繁幸などは、湯浅のこの声明を読んで、消費税引き上げに言及していることに小躍りしている。
日本で左翼と呼ばれる人達は、ほぼ例外なく「日本型雇用死守、消費税引き上げ反対」を旗印としている。だがそれは、終身雇用に入れない人を排除することであり、排除された人へのセーフティネットをも否定することだ。
その意味では彼ら既存左派は、ほぼ例外なく小さな政府主義者と言っていい。
http://jyoshige.livedoor.biz/archives/5325033.html
湯浅は声明の中でこの問題を何と言っているのか。
湯浅は、医療を例にとって、給付全体をふやさないと大変なことになるけども、負担(税・社会保険料)はこのままでいい、というのでは、私費負担を増やす方向にしか行かんではないか、と述べる。
そりゃそうだ。
で、「大企業や大金持ちから持ってこい(俺たちは1円も負担しないぞ)」という議論を紹介したうえで、自分の財源論を5点にわたって述べていく。
簡単にまとめておくと、1)税の原則は「あるところからもらう(応能原則)」なので、税目として消費税だけを考えるのは適当ではなく、所得税の累進制強化や資産課税・相続税強化、グローバルな金融取引課税や法人課税など広く考えるべき。実際の経緯としても、法人税減税が行われる、リーマンショックにもかかわらずグローバルな金融課税はなかなか進展しない、タックスヘブン(ケイマン諸島など)を経由した不正事件が日本でも相次ぐ(オリンパス、AIJ)など、国内外において企業が強すぎ、各種租税特別措置、証券取引優遇税制など改善すべき余地が多々ある。
http://yuasamakoto.blogspot.jp/2012/03/blog-post_07.html
これはまったく正しい。
そして、日本の「既存左派」というのは基本的にこの路線である。
たとえば社民党は、そもそも消費税(およびその引き上げ)という選択肢を排除していない政党であるが、
消費税3%「上げざるを得ない」/社民政審会長が発言TV番組 - しんぶん赤旗
税制には、富の偏在を防ぎ、負担能力のある人から社会の支えが必要な人へと所得を再分配させていく機能こそ必要です。逆進性の強い消費税を基幹税に位置づけて安易に税率を引き上げることは、低所得者層に一層の負担を強いるだけです。所得税・住民税の最高税率の引き上げや累進性の強化、企業に応分の社会的責任を求めた法人税の見直しに取り組みます。
http://www5.sdp.or.jp/vision/vision.htm
と党理念(社会民主党宣言)にあるように、湯浅と同じ構想である。
共産党はどうか。これは消費税という税制そのものに批判的な政党である。
では、共産党は庶民負担を一円も求めないのだろうか。共産党はもともと「累進課税・応能負担での税制改革」を掲げていたが、さきごろだした社会保障「提言」では、具体的に「負担」にふみこんでいる。
このような社会保障の抜本的な拡充をおこなうためには、ムダの削減や富裕層・大企業への不公平税制の是正などだけでは財源は確保できません。この財源は、国民全体で、その力に応じて支えることが必要です。所得や資産に応じた負担――「応能負担」の原則、累進課税の原則に立った税制改革で財源を確保します。
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2012/02/post-141.html
そして、「所得税の課税所得に対して累進的に1・5〜15%の税率を上乗せして課税」を具体的に提言し、国民負担を求めるさいの3条件まで提示している。
消費税増税に反対することがすなわち「ビタ1文出さない」ということとイコールのはずがない。城は自分の「脳内左翼」の亡霊と戦っているにすぎない。



