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「中学校についてくる」両親の過干渉に悩み、「2ちゃんねる」に助けられた〜マサミの場合 - 生きづらさを感じる人々24

警察庁は2018年の年間自殺者数(速報値)を発表した。それによると、18年は2万598人で、37年ぶりに2万1000人台を下回った。また9年連続で前年を下回り、減少傾向が続いている。しかし、若年層の自殺者は増加傾向で、特に未成年女性は増加している。

関東に住むマサミ(39・仮名)が「死にたい」と思うようになったのは高校時代だが、そのベースは中学生の頃にすでにあったという。ちなみに、「生きづらさ」という言葉を知ったのは最近のこと。知ってからも、自分のようなメンヘラに対して使っていい言葉かどうか躊躇していた。

「私は一人っ子で、両親ともに過干渉でした。両親とも学校について来ようとするんです。幼児園児ならいいとは思うんですが、中学生ですよ?よく友達からも『マサミの家は過保護だね』と言われていました。自由がないと感じました。一生、自由がないんじゃないか、って。かといって、親も親切でやっている。悪気はないことはわかっています。私には被害者意識があるんですが、親には加害者意識はないんですよね。中学2年生の頃が一番きつかったですね」

父親は財閥系の商社マン。母親は専業主婦。日本が高度成長期からバブル期を迎える頃なら、ひとつの“成功モデル”の夫婦だったはずだ。「働く父親」を支える「専業主婦の母」。サラリーマン一家なら、それが普通だった時代があった。そのもとに生まれたマサミは、両親に大切に育てられた。しかし、“大切”の仕方が過剰で、子どもであるマサミには窮屈さを感じさせるものだった。

「私が4歳くらいで成長が止まっていればよかったのかもしれません。でも、私は成長しても2人とも干渉してきました。被害者意識が強くなるだけでした」

過干渉というと、取材でよく聞くのは、母親からのものだ。そういうケースは父親は無関心だったり、放置だったりする。しかし、マサミの場合は、両親ともに過干渉だ。気が休まる暇もない。

「高校に入っても自由がありませんでした。そうは言っても、親との縁は切れません。親元から離れられないことが続きました」
高校時代から「死にたい」と感じていたマサミ(仮名)

経済的に余裕がある家庭だったが、過干渉だったために喜べない

過干渉が長年続いたことで、さすがにマサミもメンタルが壊れ、「死にたい」と思うようになっていった。両親の過干渉はマサミが自立するタイミングを奪った。精神科クリニックへ通院もした。

父親は商社マンだったためか、お金に余裕があり、マサミに対しては、海外旅行でもお金をかけた。マサミはそれを心理的には拒否しつつも、仕方なく、受け入れていた。

「私が10代であっても、父は高級ブランドを買い与えました。うちだけが特殊じゃないかもしれないんんですが、“そこまでお金をかけなくても...”、ということもするんです。たとえば、年に1回、アメリカやカナダなどへ旅行をしていたのですが、飛行機はビジネスクラスやファーストクラス。それは子どもの頃から贅沢だと思っていたんです。そういうことは社会人になってから、やっとビジネスクラスやファーストクラスに乗れたって感じが健全だと思うんですよ」

経済的に余裕があるならば、それを楽しむ人生もあるだろう。しかし、マサミは、両親の過干渉な面を嫌がっていたため、子どもへ過剰なお金をかけることを良いこととは思えなかった。

「お土産や食べ物だって、私が『食べたい』と言って買ってくるのなら嬉しいです。でも、言ってないのに買ってくるんです。両親の行為が受け入れられません」

コミュニケーションが閉じたものになり、社交的でなくなる

高校を卒業して、専門学校に通うことになったが、それも両親が用意した道であり、やりたいことではなかった。

「通いたいわけじゃなかった。高校を卒業しても自由じゃないんだ」

こうした両親からの過干渉は、マサミのコミュニケーションを内向きにさせていった。

「中高では決まった人としか話さなかったんです。知らない人と話すのがしんどい。『なんでこんな人と話すんだろう』と損した気分になったんです。なので、外で道を聞かれても無視しました。話すのに必然性がないし、面倒。必要がないものに労力を使いたくなかったんです。思春的なものもあいまって、非社交的になっていたんです」

父親の過干渉はマサミが20歳を過ぎても続いた。父親は趣味がデジタルカメラの撮影だというが、マサミの職場にきて、働いている様子を撮影しにやってきた。

「父は“愛しているから”と言うんです。子離れができていないんです。自分が悪いと思ってないようです」

遺書を作ったり、ノートに「死にたい」「自由になりたい」と書いた。そして2ちゃんねるへ

マサミは「死にたい」と思うものの、その方法を知らず、どうしていいかわからずにいた。だが、遺書のようなものを書いていた記憶がある。

「頻繁に紙に書いていました。ノートに何冊も書きました。『死にたい』とだけ書いたときもありました。親に対して、自由になりたかった、ということも書いていました」

20歳を超えた頃になると、ノートではなく、インターネットの電子掲示板に書くようになる。草の根BBSの頃はROM(Read Oniy Member = 掲示板に書き込むことはせず、読むだけのユーザーのこと)が多かったが、2ちゃんねるが登場すると、頻繁に書き込んだ。専用ブラウザを使い、メンタルヘルス板などにアクセスをしていた。

「2ちゃんでも『死にたい』と書いていました。ただ、ハマった板はないんです。泥沼にはまってしまう気がして...」

当時は、様々な人がレンタルの電子掲示板を設置していた。筆者も1998年頃から、「生きづらさ系」をテーマにした電子掲示板を設置していた。しかし、誰か個人が運営する電子掲示板に、マサミは「死にたい」とは書かなかったという。

「誰かの掲示板に書き込むのは迷惑かな?と思っていました。それに自分の書くものは文章になってない。迷惑もかけず、前後の文脈を無視していいのは、2ちゃんねるだけ。自殺系サイトにもアクセスしませんでした。2ちゃんだけで満足していましたから」

辛かったときに助けられたのは2ちゃんねる

その後、2004年頃になると、日本のソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)のさきがけである、ミクシィ(mixi)が登場した。マサミもミクシィに参加した。

「この頃から(ネット・コミュニケーションが)だいぶ変わった。メンヘラ的な日記を書いたんです。すると、メッセージがくるようになりました。そのメッセージの主が参加するコミュニティを見ると、宗教関連のコミュニティが多かったので、警戒しました。2ちゃんのときはまったく警戒心がなかったんですけどね」

マサミはSNSより、2ちゃんねると相性がいいようだ。2ちゃんねるは今では「5ちゃんねる」と改名しているが、今でも、5ちゃんねるにアクセスし、書き込みを読んでいる。

「一番辛かったときに助けられたのは2ちゃんねるです。人生で辛く、どん底にいたときに助けられました。同じ板にずっといたわけではないんですが、オフ会にも通うようになりました。そのときの友達とは今でも付き合いがあります」

20代後半にもなると、メンヘラ友達の中に自殺で亡くなった人も出てくる。葬式に出ることもあった。

「ずっと『死にたい』と思っていた自分が死んでいませんから、『死にたい』と言っている人は、それに反して、長生きするものだと思っていたんです。通院している人の方が死なないと思っていたんですが、同世代の人が亡くなるのは辛いですね。希死念慮がある人には、私も『病院に通ったほうがいい』とアドバイスをしていましたが、OD(OverDose:処方薬の過剰摂取)で亡くなった人は多いですね。それに、田舎に比べれば、都市部には病院も多いので、贅沢な部分もあります」

SNSでは、家族や知人が消さない限り、自殺した人のアカウントが残ったままということもある。

「本人が死んだのに、ミクシィ(のアカウント)は残るんだ」

マサミは今、通院している。病院はそのとき住んでいる場所の近くのクリニックへ行っている。20代の頃は、診断は「不安、鬱傾向」だという。30歳を過ぎてからは、「鬱、躁鬱、不安神経症」と言われた。また、相談相手は今もインターネット。5ちゃんねるに結局、戻ってきている。

「座間9人殺害事件のように、SNSは個人間のメッセージのやりとりができるので、弱みに付け込まれやすいですね。5ちゃんねるはそれができません。座間事件で私が被害者側にならなかったのは、初めてのネットコミュニケーションの経験がツイッターではなく、2ちゃんねる(5ちゃんねる)だったからではないでしょうか」

*記事の感想や生きづらさに関する情報をお待ちしています。取材してほしいという当事者の方や、こんな話も取材してほしいというリクエストがあれば、Twitterの@shibutetu まで。

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