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米国新聞社のコペルニクス的転回はどこまで保つか

昨夜(1月30日)のNHKテレビ「ガッテン」は、慢性腎臓病治療に「コペルニクス的転回」が起きているとという内容でした。

従来は腎臓病患者に運動は禁物、とされていたのが、近年は「運動でよくなる」と真逆な考えが主流だというのです。

まあしかし、いかなNHKでも、これでコペルニクス的転回って、少々苦しいなって思って見てました。それなら米国の新聞経営のほうがまだしも当てはまるのではないか?昨日、たまたま目にしたNiemanLabの記事を思い出してそう感じました。

かって、米国の分厚い新聞は広告にあふれていました。ほぼ全てがローカル紙で、競争相手はゼロか、いても1紙なので、地元広告をごっそりいただけたからです。しかも高い料金で。

その結果、広告収入は全収入の8割程度を占めると言われ、宅配収入や一部売りによる購読料収入は2割程度が常識とされてきました。

が、2000年をピークに、じわじわとインターネットの影響を受け、2008年のリーマンショック後は「紙」の新聞広告収入は急激に減り出します。

それを何で埋めるか?それは購読料の値上げという手段しかありませんでした。その値上げのペースがどんなに凄まじかったか。それをテキサス大の二人の学者が、全米の主要25日刊紙について調査した結果が、つい、先日、専門誌で公表されています。

調査は、2008年、リーマンショック後の2012年、2016年について、各紙の宅配の年間料金がどれだけ上がったかを調べ、それでどれほど読者が減ったかも表示していて、とても興味深いのです。NiemanLabの記事に転載されている表はこれです。

リーマンショック時、NYタイムズの年間宅配料金は530ドルでしたが、2016年には978ドルと、1.8倍になりました。日本じゃ考えられない値上げです。

もっとすごいのはLAタイムズで104ドルから624ドルと6倍も高くなりました。25紙全体で見ると8年間で宅配料金は2倍以上になっているのですが、reach ratioで見ると、3分の2は紙の読者として値上げに耐えて、取り続けていることがわかります。

LAタイムズなどが、つい10年ほど前までは月10ドル以下で毎日玄関先まで届く新聞を購読できたのは、広告収入がべらぼうにあったからで、料金は用紙代とインク代にも及ばないレベルでした。購読料金を安くして読者数を増やすことが広告代金の引き上げにつながるためだったのでしょう。

それが、今やネット広告、モバイル広告にシェアを奪われ、紙の新聞の広告収入は激減。例えば、Statistaによると、あのNYタイムズでさえ、2008年から10年後の2017年の広告収入はネット広告を入れても3分の1以下、購読料収入の半分程度です。

まあ、そんなことから、米国の新聞経営が広告収入頼みから購読料収入頼みに完全に軸足が移動したことで、コペルニクス的転回を遂げていることを実感したわけです。

これからも紙の新聞の料金は上がり続けるのでしょうが、調査をしたテキサス大の筆者たちは「宅配が2倍に、一部売りが3倍になっても、3分の2の読者が残ったということは価格弾性性が新聞の場合は低いということだ」と分析しているようです。

つまりは、値上げがあっても読者の脱落率は低いので、まだまだ何とかなりそうだと見ているのかもしれません。

しかし、NiemanLabの記事を執筆したJoshua Benton氏は記事の末尾でこう警告します。

「でも問題は、新聞はこれ以上紙の読者を増やせないことだ。過去50年以上、新聞を読んできた人々はこのまま続けて欲しいだろうが、たとえ紙の新聞の値段が2008年レベルまで下がっても、今23歳の人が突然、スマホを切り、日刊ラスベガスレビュージャーナルの読者になることはないだろう」

「だから、値上げで広告収入減を補う戦略は、永遠に機能するものじゃない」

(蛇足)こういう米国の値上げ戦略を見ると、日本の新聞は値上げにストイックですね。読売は今年1月から月363円の値上げに踏み切りましたが、これは何と25年ぶりとのことで、値上げ幅は1割未満。米国の例に倣えば、この程度の値上げで脱落する読者は極々少ないと見切ったのでしょうね。賢明な判断だったかどうかは近日中に明らかになります。

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