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「読みやすい文字」ってなんだろう?フォントについて調べてみた

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世界に文字の種類はどれくらいあるのでしょうか。パソコンのフォントだけをみても何百、何千と種類があります。手書きで考えれば筆跡鑑定という言葉があるぐらいですから、世界の人口と同じだけあるといえるでしょう。

それだけの数がある文字ですが、読みやすい文字というものが確実にあるのもまた事実。達筆な文字とは違った、読みやすい文字とは何なのでしょうか。それが今回、編集長から私に課せられた課題です。

読みやすい文字ってなんだ?


読みやすい文字とは何か。そう考えた時、頭に浮かんだのは年齢に関係なく誰でも間違いなく読める文字であるということでした。子どもからお年寄りまで利用する場所で、誰もが当たり前のように目にしている文字…。駅のホームにある駅名が書かれたあの看板の文字は読みやすい気がします。

そこで、駅名が書かれているフォントの種類は何なのか、調べてみました。

2018年3月4日の産経新聞によると、各鉄道ごとに使っているフォントが違うのだとか。例えば、JR東日本は漢字が「新ゴB」で、ローマ字が「Helvetica Bold」。


JR西日本も漢字は「新ゴB」ですが、ローマ字は「Frutiger Bold」と違います。


同じJRでも東と西で違うというのは意外でしたが、地下鉄の場合はどうなのか。東京メトロは漢字が「新ゴM」で、ローマ字は「Frutiger Condensed」


都営地下鉄は漢字が「新ゴDB」で、ローマ字はJR西日本と同じ「Frutiger Bold」


駅名をわかりやすくを伝えるという役目は同じでも、文字のフォントが違うということは知りませんでした。他にも鉄道会社はたくさんありますが、駅名のフォントは各社統一ではないようです。

フォントの鍵は「バリアフリー」

なぜこのようなフォントに決まったのか。

JR東日本広報部によると、「背景として駅名が書かれた案内サインはバリアフリーの設備に該当するため、国土交通省が定めたバリアフリー整備ガイドラインを参考に決めました。現在のサイン設備のフォントは約20年前から使用しております」とのことでした。

恐らく東京メトロも都営地下鉄も同じ理由であると考えられます。

そうなると気になってくるのが「バリアフリー整備ガイドライン」とは何か。国土交通省のホームページに難しく書いてあるのですが、要約すると、日本は高齢化が進んでいるだけでなく、障がい者の数も増加。2020年にはオリンピック・パラリンピックの開催も控えています。そうした状況中で、障がいを持つ人や高齢者が公共の交通機関をスムーズに利用できるようにガイドラインを整備していこうというもの。

その中で駅名の表示については、誘導案内設備に関するガイドライン(http://www.ecomo.or.jp/barrierfree/guideline/data/guideline_shisetsu_2018_04.pdf)の中に「書体は、視認性の優れた角ゴシック体とすることが望ましい」という一文があります。さらに「文字の大きさは、視力の低下した高齢者等に配慮して視距離に応じた大きさを選択する」と書かれています。

出展:誘導案内設備に関するガイドライン

角ゴシック体の例として上記の書体があげられていますが、近年では読みやすさ、見分けやすさを工夫した書体が開発されていて、現場の状況に応じて適切なものを選択することが望ましいとも記されています。

新聞各紙のフォントはどうなっているんだろう


駅名はこのようなガイドラインに従ってフォントを選んでいるようですが、新聞はどうでしょうか。新聞も駅名同様、誰が見ても読めることが大切です。調べてみると大変興味深いことがわかりました。

新聞といっても読売、朝日、毎日、産経、日経など色々な新聞社がありますが、各社で使っているフォントが違う上に、オリジナルのフォントを使っている会社もあります。

朝日新聞は独自の朝日書体というフォントを使っています。1950年代〜60年代にかけて書かれた文字が元になっていて、朝日新聞の紙面で使われ始めたのは1980年9月から。特徴は字の内側のスペースがゆったりと広くなっていることで、どんなに小さな文字でも大きく見せて読みやすくなっています。

ちなみに朝日書体自体もより読みやすくするため、時代に合わせて進化を続けているそうです。ペースは2ヶ月に1度ほどの割合で1回、数十〜数百文字をリニューアルしています。太い線を細くするなど、本当にわずかな変化なので朝日新聞を熟読している方でも見落としてしまうかもしれません。

そもそも知らなかったのですが、新聞の本文に使われている文字は平たくつぶれているそうです。これは物資がなかった時代に紙面の限られたスペースに少しでも多くの情報を掲載するためのアイデアでした。

これだと確かに紙面に多くの文字を書き込むことが出来るのですが、読みやすさにおいてはまだまだ改良の余地があったとか。そこで自社でオリジナルのフォントを使っている毎日新聞社が考えたのが、大きくて現代的で親しみやすい文字。1950年代後半から読みやすさにこだわったフォントが導入されました。

特に力を入れたのが仮名文字。毛筆が全盛の時代から鉛筆やボールペンなどの硬筆が主流になる中で、毛筆とは違う硬筆に近いフォントへと変更したそうです。確かに現代の我々にとってみれば毛筆より硬筆のフォントの方が読みやすいですよね。

試行錯誤を繰り返して誕生した毎日新聞社のフォント「毎日新聞明朝L」や「毎日新聞ゴシックM」の生みの親はタイプデザインディレクターの小塚昌彦さん。


ぼくのつくった書体の話 活字と写植、そして小塚書体のデザイン

小塚さんは1929年生まれ。47年に毎日新聞に入社し、毎日新聞の書体デザインの制作・開発に従事します。定年退職したあとは書体メーカーとして有名なモリサワでタイプデザインディレクターに就任。「小塚明朝」「小塚ゴシック」という和文書体の開発も行っているフォントのスペシャリストです。

毎日新聞のホームページには、小塚さんのインタビューが掲載されていました。
「それまでの書体は、江戸時代の木版彫り師の流れをくむ彫刻師が、ツゲの木や鉛に彫った種字から、同じ大きさの鉛活字を作っていました。種字とは書体の基になる字のことです。天地(縦の長さ)2ミリちょっとの文字を手彫りしていたのです。しかも印鑑と同じように裏文字です。」

今のような印刷技術がない時代ですから、よく考えれば当たり前なのですが、それにしてもすごい話です。

小塚さんはこのような時代の後に入社するわけですが、先輩から「それまでの書体や見本を見るな!何も見ずに書け」と厳しい一言を浴びせられたそうです。オリジナルの書体を作るわけですから、既存の書体の影響は受けるなというわけですね。それにしても厳しい。

職人の世界を感じさせるエピソードですが、そうした厳しい環境の中で小塚さんらは3人で約2年かけて7000字を製作。その後も作り続けた結果、手がけた原字のデザインは10万字を超えました。

書体を作る上でのコンセプトについては、読みやすい文字とは何かのヒントとなるエピソードを話しています。
書体は組んだ時に、文章の書き手の意図を読者に伝える媒体に徹するべきです。スムーズに情報を伝える<水>のような存在でなければなりません。でも水にも産地ごとの個性があるように、書体にも透明な個性はあっていい。毎日新聞の場合は、冷たい美しさよりも温かい親近感を感じられる文字になるように心がけました。

人間が読みやすい文字のサイズについて小塚さんは8ポイントから11ポイントの大きさが良いと語ります。個人的にはやや小さい気もしますが、確かに新聞記事の文字はウェブ記事の文字よりも小さいですよね。

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