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勤労統計不正よりも深刻なGDP統計に関する安倍首相のフェイク説明

国会前に発覚した勤労統計集計の不正問題。立憲民主党を始めとする野党各党は今国会の重要案件として追及する構えで今日の枝野氏の代表質問でも取り上げられた。

しかし、国の行く末に影響を及ぼすという意味では、より大きな統計をめぐる問題が存在している。

GDP(国内総生産)に関する統計に関して安倍首相が行ってきた説明の問題だ。GDPは日本では国民経済計算として内閣府が算出している。しかし、その算出基準が年度によって変えられてしまっているため、連続性に欠けており、前後の比較を適切に行えないのだ。そして、このことを利用して、実際には伸びていない日本のGDPを「アベノミクスの成果」で成長したと説明してきたのが安倍首相だ。東京新聞が昨年8月に取り上げ、町田徹氏や小塩丙九郎氏などがブログで指摘されているところであるが、2016年に国際基準に合わせるためとして、研究開発費の項目が追加されるなどGDPの総額に有意に影響を及ぼす算出方法の改定が行われた。

アベノミクスという経済政策の成果を検証するためにGDPを使うのであれば、それまでの統計データとの補正を行うのが当然だ。ニッセイ基礎研究所経済調査室長の斎藤氏の報告によれば、新基準では2016年第1四半期に名目GDPは540兆円を超え、過去のピークを超えているが、旧基準で補正すれば、500兆円程度で、過去のピークである98年第1四半期の520兆円を下回ったままだ。ちなみに、私の事務所で、研究開発費を除いた比較のためのGDP補正値を使って作成したのが下のグラフ①だ。これによれば旧基準では1997年の523兆円が過去最高値となっている。

グラフ①

もう一つ、より根本的な問題がある。アベノミクス開始後のGDPの伸びは、円安によって大きく嵩上げされたものであるという点だ。

国際比較は、基軸通貨であるドル建てで行うのが当たり前であり、ドル建てのGDPピークは、新旧基準ともに2012年の5兆9572億ドル(新基準;6兆2032億ドル)であったが、2015年では新基準でも4兆3831億ドル(旧基準;4兆1248億ドル)に過ぎず、これを大きく下回っている。海外からは、日本の経済力は衰退しているとみられているが、それは数字をみれば単純に示されているのだ。(※年間平均レートで計算)

グラフ②

統計というものは国家の通信簿、成績表であり、経済、政治すべての事象を評価する源だ。出来るだけ正確に、かつ連続性を持つものであることが必要であることは言うまでもない。ましてや、一国の首相が、自己の最大の経済政策の成果を国民にアピールするのであれば、ごまかしなく正確なデータを元に行うのが当然であろう。繰り返すがアベノミクスという経済政策の成果を検証するためにGDP統計を使うのであれば、それまでの統計データとの補正を行うのが当然だ。その意味で安倍首相がこれまで国民に行ってきた説明はフェイクを含んだものであり、ファクトチェックが必要なものと言える。

保守やリベラルという立ち位置、あるいは党利党略を超え、こういったことを正直に、真摯に検討することが日本の将来に繋がると思うが皆さんはいかがお考えだろうか。

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