- 2019年01月30日 15:45
数字のマジック
毎月勤労統計の話が大盛り上がりです。ただ、あの件の問題点を本当に明らかにしようとするのは結構大変だろうと思います。「第三者委員会の独立性が担保されていなかった」というのは面白ネタだとは思いますし、厚生労働省のドン臭さを如実に表しています。しかし、物事の本質はそこではありません。
私が官邸に居る人間であれば、雑に言えばこういうシナリオを描くでしょう。そして、これを前提に論理の構築をするはずです。
① 2004年に抽出調査にした。⇒15年も前の話でよく分からない。関連文書は廃棄されているものがかなりある。
② その後、抽出調査でやった結果、雇用保険等の支払いが過少であった。⇒民主党政権時も含まれる。皆で反省。
③ 2018年に抽出調査に復元を加えた。⇒そもそも、抽出調査が間違っていたので現実に近くするよう努力したのだろう。
④ 復元は賃金を高く見せるためのものではないか。⇒そんな事実はない。
⑤ 統計法に基づかず勝手に統計の手法を変えるのは問題ではないか。⇒政務が与り知らぬことだった。問題なので処分する。
⑥ 過少支給分についてはどうするのか。⇒精一杯の努力をする。
こういう反論が返ってくる事を前提に野党諸姉諸兄は考えないと、単に情緒的に「けしからーん」では適当にあしらわれて終わりです。ちなみに安倍総理は②を言うのが多分大好きです。③は「たしかに正当な手続きに基づいてやらなかったのは問題だが、やった事自体はより現実に近くしようという事だから問題なし。」と強気に撥ね返してくるように思いますし、そう言われた時の反論は結構難しいのです。
あと、きちんと対案を出していかないと、与党側から「再発防止プラン」とか出てきて野党の出る幕無しになってしまいます。ここは少し高目のボールとして「統計問題改革案」を作っておくべきでしょう。目立ちたい人が過激な発言をして盛り上がる「公開ヒアリング」なんてのは、問題の解決になりませんし、官僚側からすれば「(1時間程度の)肝試し」だと思われているだけです。あの「公開ヒアリング」、官僚側はガチガチにガードし、議員側はパフォーマンスに走るという事で良くないんですよね。私は現職時代、あまり参加せず、参加する時はTVカメラの隣に座っていました(そうするとTVに映らないので)。
ここから今日の本題ですが、私が毎月勤労統計以上にヤバいと思っているのが、(統計ではありませんが)内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」です。簡単に言うと、これから10年くらいの経済はこれくらいで成長して、金利はこの程度、インフレ率はこうなるみたいな試算です。元々この試算は政治的にもみくちゃにされる傾向があります。特に成長率を高く見積もりたい経済産業省、成長率が高いと予算増要因なので固く見積もりたい財務省との間で数字を巡って激しいやり取りがあります。これまでも政治的にニュートラルな試算ではありませんでした。
ただ、昨年の試算はそういう次元を超えて異常でした。安倍政権になってから、ベースラインケース(それまでやっていた普通の試算)に加えて、成長実現ケースというものが加えられました。潜在成長率を大幅に上回る3-4%の成長率を設定するシナリオです。潜在成長率を大幅に超える成長率なんて長期間続くはずもないのに、そういう試算を出してきて、どちらかと言うとそちらをプレイアップするやり方が横行してきました。
これだけでも「?」なのに、昨年の試算で長期金利を異常なまでに大幅に下げました。平成29年1月の試算では、2025年時点でGDP成長率3.8%、長期金利4.4%で試算していましたが、平成30年1月の試算ではGDP成長率を3.5%、長期金利3.2%で試算し直しました。成長率見通しは大して下げず、長期金利だけ大幅に下げました。これは何を意味しているかと言うと、国の借金の対GDP比が拡大しないようにしているわけです。
理由は簡単で、プライマリーバランス大幅赤字が解消しない中、金利の見通しを大幅に下げないと、国の借金の対GDP比が拡散するシナリオにしかならないからです。プライマリーバランス均衡を放棄する代わりに、国民には粉飾予想を見せて「大丈夫だよ」と宥めているというふうに見えます。たしか、茂木大臣は「モデルを回したらこうなった」と言い訳してましたが、そんなはずはありません。間違いなく神の手が入ってます。この件はずっと気になっており、「何をどうしたら、こんな数字になったのか。」を調べてみようと思っている所です。
その観点で興味深く疑っているのが、今日、経済財政諮問会議に出されるであろう中長期の経済財政試算です。これは統計ではありませんが、毎月勤労統計の大騒ぎを見てどういうものを出してくるのか注目したいと思っています。
ちなみに、私はGDPそのものの計算も神の手が入っていると見ています。この数年、「統計改革」の名の下にGDPについても算定手法が変わっており、かなりヤバい事をやっているのではないかと私は疑っており調べています。ただ、これが難しいのは、仮にヤバいものが見つかったと仮定しても、それを公開したら世界経済に大混乱を引き起こすおそれがある事です。夕張市も、ギリシャも、公開情報で出している数字に粉飾、隠蔽があり、それが判明した所から危機になっています。そういう空恐ろしさを最近感じます。



