裁判員制度が実施されたのが2009年5月21日ですが、あと5か月で満10年となります。
私自身は裁判員制度には反対であり、この10年近くがたつ中でその弊害が一層、顕著になったと評価しています。
政府(法務省)では、「裁判員制度の施行状況等に関する検討会」の第1回会合が1月16日に開催されました。
「裁判員制度の施行状況等に関する検討会 第1回会合(平成31年1月16日)」
委員ですが、いつもの刑事法学者はいません。
委員名簿(敬称略)
猪原誠司 警察庁刑事局刑事企画課長
大澤裕 東京大学大学院法学政治学研究科・法学部教授
大沢陽一郎 株式会社読売新聞東京本社編集局総務
小木曽綾 中央大学大学院法務研究科長・教授
島田一 東京地方裁判所部総括判事
菅野亮 弁護士
武石恵美子 法政大学キャリアデザイン学部教授
堀江慎司 京都大学大学院法学研究科教授
山根香織 主婦連合会参与
横田希代子 東京高等検察庁総務部長
和氣みち子 公益社団法人全国被害者支援ネットワーク理事
公益社団法人被害者支援センターとちぎ事務局長
この裁判員制度を実施する側からの関心事は、長期化する裁判と出頭率の低下です。
最近は200日裁判というように非常に長期の裁判員裁判が出てきました。平成27年の改正では非常に長期にわたる事件を対象事件から除外することとしましたが、200日という非常に長期と思われるものも除外されずに実施されました。
長期だから外す、長期でないから裁判員裁判ということですから、被告人のための制度でないことははっきりしているのですが、長期になることによって出頭率も低下の一途となっています。
現在の出頭率は、平成30年11月末速報によれば、平成30年度では
出頭率23.1%(前年度22.66%)
当局がいうところの義務が免除された者を除いた出頭率67.9%(同63.9%)
となっています。前年度からみると、特に義務が免除された場合の出頭率は、増加はしていますが、恐らくさらに出頭義務の免除の範囲を広げたからと思われます。
長期裁判に出頭できないのは当然なのですが、マスコミの論調はさらに審理期間を短縮せよと迫るものがほとんどです。
「【茨城新聞】 裁判員制度見直し 負担をいかに減らすか 」(茨城新聞2019年1月28日)
「裁判員制度見直し 負担をいかに減らすか 」(佐賀新聞2019年1月23日)
「裁判員辞退率が上昇」(宮崎日日新聞2019年1月15日)
「◆期間短縮と負担軽減を図れ◆」
「裁判員制度10年 選任手続き不参加の市民増加で課題も」(NHK2019年1月7日)
興味関心は、いかにして裁判員の出頭率を上げるか、そのためには裁判員裁判のやり方を見直せというものです。
刑事裁判は誰のためにあるのか、被告人の刑事責任の有無(有罪・無罪)とその量刑を審理・判断するのですから、裁判員の負担がどうこういうのは本末転倒です。
裁判員制度の顕著は弊害はこちら。
「「被告人の権利を守れるのか」史上最長約200日の「裁判員裁判」で浮き彫りになる課題」(弁護士ドットコム)
今では出頭率低下の中で形骸化してきた裁判員制度をとにかく継続させることに必死となっているだけで、マスコミの関心も大分、薄れており、いわばひっそりと行われているのが裁判員制度です。
いずれによせ、国民の理解など得られるものではありません。
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- 2019年01月30日 08:03