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【読書感想】フェイクニュース

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 フェイクニュースがあっという間に広まっていくのに比べて、それがウソであることを指摘したものはなかなか拡散されないし、ウソだとわかったあとも、拡散した人々はほとんど謝罪することはないのです。
 「炎上」するような記事や発言についても、それに対する修正や謝罪はなかなか浸透しない。
 「人は見たいものを見る」ということが、MITの研究でも明らかにされているのです。

 フェイクニュースは、すでに世界中に広がっているのです。

 日本ではあまり紹介されることがないが、フェイクニュースとネット世論調査はアジアにも広まっている。特に目立つのは、敵対う政党やメディアが発信する情報を「フェイクニュース」として批判し、処罰、追放することだ。2018年1月22日、ロイターは『東南アジアの指導者たちは「フェイクニュース」を口実にしてメディアを統制し、批判者を処罰する(’Fake news' crutch used by SE Asian leaders to control media, critics charge)』という記事でいくつかの例をあげて、東南アジアで行われている政府によるフェイクニュースを口実にした言論統制の実態を紹介している。

 インドやフィリピンではフェイクニュースを使いネット世論調査を行った政党が政権を取っているし、インドではフェイクニュースが原因の殺人事件が珍しくない。カンボジアやフィリピンでは政治家がネット世論操作戦略専門家を雇って世論調査を行うのが当たり前になっており、フィリピンの大統領は大々的な世論操作を行って。カンボジアでは対立する野党の党首をフェイクニュースで国家叛逆を企んだとして逮捕、投獄した。

 またアジアの特徴としてフェイクニュース産業とでも呼ぶべき業界ができあがっている事があげられる。発注者は主に政治家で、多数のトロールやボットを運用しているネット世論操作戦略専門家(PR戦略家と呼ばれているが、やっていることはSNSを通じた世論操作に他ならない)に選挙で有利になるようにネット世論操作を依頼する。

 敵対する勢力を明らかな証拠がなくても、「フェイクニュースを流した」として処罰する、ということも珍しい話ではないのです。 
 こうして、お互いに「あいつらはウソつきだ!」とやりあっていれば、よほど慎重にファクトチェックをする人でないかぎり、どちらが正しいかの判断はつけられなくなってしまいます。

 そして、こういう世の中の変化から、日本も無縁ではないのです。

 巻末には「参考文献リスト」があって、自分で調べてみたい人には、おおいに役立つはずです。ここまできちんとしている新書はそんなに多くはないんですよね。
 もはや、個人のリテラシーでは太刀打ちできなくなった、国家のハイブリッド戦の一部としてのフェイクニュースが膨大な資料やデータとともに論じられている、興味深い新書でした。
 

フェイクニュースの見分け方(新潮新書)

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世界を変えた14の密約 (文春e-book)

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デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義 (集英社新書)

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