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【読書感想】フェイクニュース

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フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 (角川新書)

フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 (角川新書)


Kindle版もあります。フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 (角川新書)

フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 (角川新書)

内容(「BOOK」データベースより)
「ねつ造された報道」などというイメージとは異なり、いまや戦争兵器としての役割をも担うフェイクニュース。国家が本気でその対策を取る時代になっているにもかかわらず、日本では報じられない、その真の姿を描く。

 「フェイクニュース」というと、「ニセの情報に踊らされないように、みんな、ネットリテラシーを磨きましょう!」みたいな話になりがちなのですが、この本を読んで、現代の情報戦争の一端を知ると、「もう、個人レベルでどうこうできるようなものじゃないな」と考えざるをえなくなるのです。

フェイクニュースがここまで大げさな話になっていることには理由がある。ネット世論操作は近年各国が対応を進めているハイブリッド戦という新しい戦争のツールとして重要な役割を担っている。ハイブリッド戦とは兵器を用いた戦争ではなく、経済、文化、宗教、サイバー攻撃などあらゆる手段を駆使した、なんでもありの戦争を指す。この戦争に宣戦布告はなく、匿名性が高く、兵器を使った戦闘よりも重要度が高い。

EU、アメリカ、ロシア、中国はすでにハイブリッド戦の体制に移行している(あるいは、しつつある)。そのためフェイクニュース、ネット世論調査はハイブリッド戦という枠組みのなかで考える必要がある。単体でフェイクニュースのことを取り上げても有効な解決策は生まれない。

 別な角度から考えるとフェイクニュースとネット世論操作は社会変化を反映しているとも言える。ネットの普及がもたらした社会変化のひとつであり、民主主義の終焉でもあり、低い文章読解力がもたらした弊害でもある。フェイクニュースというのは我々の社会が、現在直面している軍事、社会、そして民主主義の危機を象徴している。単純にファクトチェック組織を作るとか、事業者が管理を厳しくするとかで解決できる話ではない。

 いまや、「フェイクニュース」は、みている人を騙して喜ぶ、というような単純なものではなくて、国家や公的な組織が事実の一部を強調することによって世論をミスリードしたり、特定の国や組織に対し、好印象を持たせたり、悪印象を植えつけたりする「ハイブリッド戦」の一部になっているのです。

 ミサイルを撃ち込んだり、派兵したりするのはリスクもコストも高いので、相手国の世論を動かすような情報操作(印象操作)を行う「戦争」が、ネット上で現在も行われています。

 敵対する国を軍事力で抑えつけるよりも、ネットでその国の世論を自分の国寄りにするほうが、はるかに効率的ですよね。  もちろん、さまざまな勢力がそれぞれの思惑で動いているし、世論というのも、そんなに簡単に操作されるわけではないのですが。

 この本のなかでは、ロシアの組織がアメリカ大統領選でフェイクニュースを流してアメリカの分断をすすめた例や、ヨーロッパ各国の政党にも影響を与えている例が紹介されています。

 また、ツイッターでのフェイクニュースの拡散による株価の操作の事例もあり、金融市場をターゲットとしたフェイクニュース企業もすでに存在しているそうです。

 もはや、フェイクニュースは、愉快犯がつくるものではなくて、ひとつの「産業」となっているのです。
 当事者にとっても、泥棒や強盗を自分の手でやるよりも、罪悪感はずっと少ないでしょうし。

 事実かどうか確認する「ファクトチェック」がネットには存在しているわけですが、それがうまく活かされていない、というのが現実なのです。

 MITメディアラボがツイッター社の協力を得て、過去の全てのツイートを対象(アカウントが停止、削除されたツイート、削除されたツイートなどを含む全量)に調査した結果だ。『事実報道とフェイクニュースの拡散(The spread of true and false news online)』(2018年3月9日、Soroush Vosoughi, Deb Roy, Sinan Aral, Massachusetts Institute of Technology (MIT), the Media Lab)では、ウソと真実の情報の伝播速度や範囲などが比較研究されている。
 この研究では六つのファクトチェックサイトで真偽判定を受けた事実とウソの情報をピックアップし、それぞれがどのように拡散していったかを比較している。

 ウソは事実よりも速く広く拡散する、という結果は一部では衝撃的に受け止められた。これまで何度も「フェイクニュースに比べて、その検証記事は10分の1程度しか拡散されない」といった話は経験則として語られてきた。それがデータによって現実はさらにひどいことが拡散された。事実が伝播するのは1000人程度であるのに比べ、ウソは多い時は10万人まで拡散する。拡散力において100倍、拡散速度は20倍である。もっともよく取り上げられるテーマは政治でずば抜けて多く、その伝播速度も速い。

 拡散しやすいウソに対する感情は、「驚き」、「嫌悪」が多い。論文ではそれまで知らなかった新しいことについてのウソに反応しやすいとしている。しかし単純にブライトバートや日本のネット上でヘイトスピーチを繰り返す人々を見る限り、「それまで知らなかった新しいこと」よりは単純に既知の憎悪の対象に対する新しい嫌悪感をもよおすウソに反応しているように思える。このへんの解釈はバリエーションがありそうだ。

 この調査ではボットの与える影響については否定的で、インフルエンサーの影響も認められなかったとしている。ふつうの人が拡散していることになるが、トロールやサイボーグが使われている可能性は残る。サイボーグとはシステムの支援によって高速、効率的に人間が運用しているアカウントである。

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