- 2019年01月28日 20:31
映画館でエロゲを観た!──『劇場版 Fate/stay night heaven's feel』
2/2素晴らしい戦闘シーンも、素晴らしい背景も、声優さんの素晴らしい声も、素晴らしい映画をつくるためではなく、素晴らしいFateをつくるためのもの。素晴らしいFateとは、ここでは、すばらしいエロゲのことだ。
『FGO』をはじめとするコンテンツをとおして収集したカネと情熱とテクノロジーが、今、たわわに実ったエロゲとして、映画館に顕現したのである。
視聴している最中、私は興奮しっぱなしだった。
最初のうちは、黒セイバーとヘラクレスの迫力ある戦闘とか、そういったものに気が向いていたが、中途からは桜のエロゲ所作に打ちのめされた。
桜は、ただエロいわけではない。
桜のエロさは、エロゲヒロインのエロさであり、桜の可愛らしさもエロゲヒロインの可愛らしさだった。
ヒロインの処女性──懐かしくも時代錯誤なネタ――を、堂々とシネマスクリーンに映し出す heaven's feel マジでエロゲ。しかしFate HF2章、これも原作がそうだから仕方ないとは言え、この2019年に桜の口から出てくる一言目にして最大の障害扱いの台詞が「私、処女じゃないんですよ」なのは「さ、さ、さすが処女厨ギャルゲー時代の生まれ~~~」と正直シュール過ぎて笑いそうになった。何事にも時代性というモノはある。
— 星崎連維(れん) (@rennstars) January 21, 2019
今では覚えている人も少なくなったかもしれないが、エロゲの最盛期において、ヒロインが処女かどうかは大変な問題とみなされ、これによってヒロインの人気、ひいては作品そのものの人気が左右されることがしばしばあった。
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この処女云々の件に限らず、あえて古いエロゲ的雰囲気を除去することなく、間桐桜、エロゲヒロインとして体当たりの演技! ちゃんとエロゲ的にかわいく、ちゃんとエロゲ的にエロく、ちゃんとエロゲ的に悪い人していて、満額回答である。
中盤以降の、雨が降りしきるあたりからの桜のエロゲヒロインっぷりに、私の脳内では「エ・ロ・ゲ! エ・ロ・ゲ!」という謎の祭囃子が鳴りやまなかった。もし、私の手元に打楽器があったら、打ち鳴らしていたかもしれない。
キャンディを舐める桜の姿を眺める頃には、「Fateが時代に追い付いたんじゃない。時代がFateに追い付いたんだ。これで勝てる(何に?)! 違う、もう勝ったんだ(誰に?)!」という、熱病めいた快哉が頭をよぎることもあった。映画館の暖房が効いてきたせいか、それとも私以外のみんなも熱病めいてきたのか、館内がやけに暑く感じられた。
エロゲの熱にうかされた二時間
繰り返すが、この作品が、映画としてどのように評価されるのかは私にはわからない。
だが、スクリーンシネマとして上映されたエロゲとして考えるなら、これは極上コンテンツであり、一見の値打ちがあるものだと思う。
Fateシリーズのどれかに愛着のある人なら、迷うことはない、カネと情熱とテクノロジーによって磨き上げられたこの映画を目に焼きつけてくるのがいいと思う。大丈夫、この作品は「Fateを愛してきた人々に応えるためにリソースを全振りしている」から、期待を裏切られることはないはずだ。
「これからFateシリーズを知りたい」という人に勧められるかといったら……正直、この作品だけを見てもわかりにくい気はする。前作や、他のプラットフォームの『Fate/stay night』に触れるか、他のFateシリーズでキャラクターを知ってからのほうが無難かもしれない。
だとしても、2004年にエロゲというプラットフォームで生まれたFateがどういう作風を志向していたのか、あの当時のエロゲというプラットフォーム周辺でどんなキャラクターや情念や属性が重視されていたのかを知りたい人には、これは、またとない入門用テクストとなるのではないだろうか。
『劇場版 Fate/stay night heaven's feel』は、エロゲ時代のミームの貴重な生存者であり、と同時に、カネと情熱とテクノロジーを吸い集めて生み出された映画化されたエロゲである。
そのような作品が、女性のお客さんや外国のお客さんも含めてたくさんの人に楽しまれていたことも含め、私のような00年代からのファンとしては、今回の映画自体が聖杯──Fateの作中では願望を満たす器とみなされている──そのものだった。
いや、聖杯以上の何かか。
2004年の段階では、まさかFateが15年の歳月に耐えるとは思ってもいなかったし、裾野の広いファンを獲得して映画化されるなど思いもよらぬことだった。まして、ただの映画化ではなく「映画化されたエロゲ」ときたもんだ。奇跡としか言いようがない。
00年代のエロゲ、00年代のFateを思い出させてくれる、どうにもエロゲな作品だった。
もちろん最終章は見届けなければならない。来年の春が待ち遠しい。
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