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世耕大臣のダボス会議での「人質司法」擁護“失言”を、朝日はなぜ削除したのか

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現職経産大臣の発言の影響

次に問題となるのは、世耕氏の発言の影響である。

「ダボス会議」は、ジュネーヴに本部を置く独立した国際機関「世界経済フォーラム」の年次総会であり、政府間の公式会議ではないが、知識人やジャーナリスト、多国籍企業経営者や国際的な政治指導者などのトップリーダーが一堂に会し、世界が直面する重大な問題について議論する場であり、そこでの発言は、国内外のメディアから注目されている。

ゴーン氏の事件では、日産の西川社長らが、社内調査で把握したゴーン氏の不正事実を検察に持ち込み、ゴーン氏が逮捕され、出席できなかった取締役会でゴーン氏を代表取締役会長職から解職したという、企業ガバナンスという面からは本来許されないやり方で経営トップを交代に追い込んだ。その背景には、日産と、その大株主でフランス政府が筆頭株主のルノーとの経営統合をめぐる争いがあったとも言われている。

ゴーン氏が逮捕・起訴されても、フランスのルノーの側では、「推定無罪の原則」を重視し、ゴーン氏を会長職にとどめていたが、身柄拘束が長期化し、解消される見通しが立たないことから、とうとうゴーン氏は、ルノーの会長職辞任に追い込まれた。

そのような事態を招いた、「長期の身柄拘束の解消の目途が立たない」という現実が、日本の「人質司法」によるものだと海外から批判されているのである。日本の有力な自動車メーカーである日産の経営に関わりを持つ経産省にとって、「人質司法」に対する国際的批判は他人事ではない。

そうした中で、司法制度については所管外の経産大臣が、海外のメディアも多数取材しているダボス会議の「日本に関する討論会」の場で、日本の「人質司法」を擁護し、海外からの批判に反論するかのような発言を「敢えて」行い、しかも、その発言が「明らかに誤っていた」ということになると、国際社会に対して、日本の刑事司法への重大な誤解を与えることになる。そればかりか、今後、日産とルノーとの関係にも関わりを持つ可能性のある日本の経産省のトップが、日本の刑事司法制度の現状について基本的な理解を欠いていたことを露呈することになり、今後、日産とルノーをめぐる問題への経産省の対応にも重大な悪影響を及ぼしかねない。

世耕発言の該当部分が削除されたのはなぜか

もう一つの重大な問題は、一度ネット記事で掲載した世耕大臣のダボス会議での発言を、誤りが指摘された後に、何の断りもなく削除したのは、いかなる事情によるものなのか、という点である。

新聞紙面の記事と異なり、ネット記事は、修正や削除が容易にできる。誤った事項があった場合に、訂正を明示することなく、修正・削除が行われることもある。しかし、今回のネット記事は、現職閣僚の、国際的な会議の場での発言に関するものだ。それに対して読者から批判の声が上がっているのに、何の断りもなく一部削除することは許されない。発言の内容が実際の発言と異なっていたのであれば、明示的に訂正するのが当然だ。もし、記事に掲載した世耕氏の発言が日本の刑事司法制度に関する誤った発言であることが分かったのであれば、発言に関する記事はそのままにして、発言が誤っていたことを別途指摘すべきだ。

ネット上での誤りの指摘を受け、その発言を削除したとすれば、朝日新聞は、現職有力閣僚がダボス会議で行った誤った発言の「隠ぺい」を行ったことになる。

森友・加計問題で安倍政権を徹底追及し、激しく対立してきた朝日新聞である。安倍政権の中枢を担う現職閣僚と不透明な関係を疑われないよう、ネット記事から世耕氏の発言に関する記述の一部を削除した経緯と理由を明らかにすべきだ。

世耕氏はどう対応すべきか

世耕氏は、まず、ダボス会議の「日本に関する討論会」において、日本の刑事司法に関してどのような発言をしたのか、全体を公表すべきである。そして、同発言中に、誤った発言があったのであれば、海外メディア等に対して速やかに訂正し、日本の通信傍受について正しい理解が得られるように措置を講じるべきだ。

その上で、その発言の趣旨、「人質司法」など日本の刑事司法制度に対する海外からの批判への反論の中で、なぜ「通信傍受」の話を持ち出したのかについても明確に説明すべきだ。

ダボス会議での「通信傍受」に関する“失言”は、日本の有力自動車メーカー日産とフランスのルノーとの経営統合問題にも影響を及ぼす可能性があるばかりでなく、刑事司法制度に対する日本政府の姿勢自体にも疑念を生じかねない。世耕氏は、現職経産大臣として十分に説明責任を果たすべきだ。

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