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アメリカ政府正常化をもたらした遠因 トランプの暴走を止める三権分立

アメリカの政府機関閉鎖がようやく終わり、正常化される。

トランプ大統領がメキシコ国境の壁建設費を盾に、政府機関を再開するつなぎ予算に署名してこなかったため、政府機関が1か月以上も一部閉鎖されてきた異常事態がようやく終わるのだ。

アメリカというところはすごいところで、これで80万人の政府職員が無給で、商務省・環境保護庁・教育省のほぼ全員、財務省や国防総省・運輸省の半数が自宅待機であったというから、その影響はとても大きかっただろう。

先の中間選挙で上院の勢力が拮抗し、共和党が53、無所属を含む民主党系が47、単純過半数なら大統領与党である共和党が提出していた壁の建設費を含んだつなぎ予算案が成立するところだが、疑似妨害を終わらせて採決に持っていくためには60人の賛成を必要とする規定があるそうで、成立しないままが続いていた。アメリカでは、党議拘束がないので、壁建設費を含まない民主党案に賛成する共和党議員が6人出たそうだが、これもやはり60人には達せず、膠着が続いていた。

トランプ大統領は、まさにウルトラCのような方法として、大統領権限による非常事態宣言を行い、国防総省に壁を建設させるということを検討していたようだが、これは実行されなかった。

今までも、まさにやりたい放題をしてきたトランプ大統領が、予算を人質にとり、選挙公約の「壁建設」を押し通そうとしたができなかった背景、「非常事態宣言」発令をしなかった理由はどこにあったのか。今朝の朝日新聞が久しぶりに読み応えのある内容の特集を組んでいたが、そこに短くその答えが示唆されていた。前例のないこの手法について、民主党が司法に訴えれば裁判所によって無効とされる可能性があるとホワイトハウスの法律顧問団が判断したというのだ。

そこで思い出されるのは、トランプ大統領が就任直後、イスラム圏などからの入国を禁止する大統領令を出し、空港で大混乱を生じた時のことだ。2017年3月にハワイ連邦地裁の判事がこれを差し止めて、混乱を収めたことがあった。2017年12月に連邦最高裁が一時差し止めを解除して実施を認め、2018年6月に連邦最高裁で大統領命令は最終的に認められたが、地裁レベルではハワイ州以外でも異なる判断が相次いでいた。

これとは別に、メキシコ国境から米国への不法入国者による亡命申請を拒否する大統領令について、サンフランシスコ連邦地裁が一時差し止めを命じていたが、これについては2018年12月、連邦最高裁は一時差し止めを支持した。

つまり、いかに強権的な大統領、すなわち行政府が無理を押し通そうとしても、司法府すなわち裁判所がタイムリーにこれについて判断を行い、差し止める、つまり抑止力を発揮しているのである。これこそまさに三権分立である。

一方で我が国の現状はどうか。一般にはあまり知られていない、「統治行為論」という考え方が昭和34年という古い最高裁大法廷判決(砂川事件)で確立されて以来、司法が行政府の行き過ぎにストップをかける、という機能は失われている。国家行為の統治の基本となるような高度な政治性をもつ事柄については、司法審査の対象からはずす、という理論である。

しかし、小選挙区制が導入されてこれが定着し、有権者の割合に比して少数の得票で議会において圧倒的多数を得るという近時の傾向がある。さらには公認権を握った党幹部の権力が圧倒的になっているという実態も存在する。この両者によって、行政府と立法府があたかも大統領制の国であるかのように、権力が政権与党の中枢に集中している。

これを抑制する力として期待されるのは、憲法の建前どおり、司法すなわち裁判所なのである。砂川事件判決は、終戦後間もない時期の判決であり、その判断には我が国に当時絶対的な影響力をもったアメリカの意向が働いていたことが近時の研究により明らかにされている。権力の集中を是正するシステムとして、今の時代に即したスピーディかつ果断な裁判所の活躍が期待される。

大統領の法律顧問団が裁判所の意向を推し量って政策決定をするほどの尊重が、本来あるべき先進国の権力均衡システムなのだ。

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