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客入り報道だけでは決してわからない沢田研二ライブの凄さ

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 前日、観覧に訪れた知人に衣装を「可愛かったよ」と言われたと話した後、「可愛いはマズいよ。体型も体型だからな、いいジイさんという感じか。体型も可愛さのうちか」と自身の恰幅の良さについて語り始め、こう続けた。

「いろんな方から『痩せたんじゃない?』とか言われるんですけど、『痩せろ』ってことだろうなと」

 観客の爆笑を誘った後、意外な話が飛び出した。

「全然、痩せる気もないんですけどね。風邪引いて、3週間、3食少し食べて薬飲んで寝ていたら、5キロくらい痩せて。思いましたよ、ヘルスメーター乗った瞬間、『やばっ。いけねえ、声に響く』」

 近年のジュリーは、若い頃と比べて体型が変わったことを揶揄されるが、声量を維持するためには一定以上の体重が欠かせないようだ。

 もちろん、全てのボーカリストが何キロ以上でなければならないという基準はないし、細身で声量のある歌手も存在する。この発言を言い訳と捉える人もいるかもしれないし、元来の体質もあるだろう。

 しかし、ジュリーの体のことはジュリーにしかわからない。試行錯誤を重ねた結果、ジュリーは声量を維持するための適切な体重を見つけたのかもしれない。

 ポロッと出てしまった『声に響く』という話を打ち消すかのように、

「(デビュー)51年目になるわけですが、もちろん私も努力いたしましたが、そんなに、そんなに努力してない。特に、若い頃なんか努力なんか微塵もしたことなかった。持って生まれたものだけでやっていました」

 と笑わせた。私は、この言葉を照れ隠しのようにも感じた。努力をしないでトップに立てるはずがない。70歳の今、鍛錬なしに全盛期と変わらない声量を保てるわけがない。とっくに喉が衰えを見せても不思議ではない年齢なのだ。

 続けて、ジュリーはファンに感謝の意を表した。

「出来るだけ長く歌い続けたいと思う気持ち、今も変わりません。こういった幸せをかみしめながら、毎日歌うことが仕事であり、楽しみであり、皆さんと会えることが本当に幸せなことだなと思い続けたいと思います」

 幸せを感じられる自分でいるために、年齢に抗い続ける。そんな宣言だった。

 沢田研二にとって大切なのは、大枚を叩いて会場に足を運んでくれる観客である。初めて観に来る人や長年のファンを満足させるために何が必要か。体型を気にする人も存在するし、それを理由に離れたファンもいるだろう。

 だが、歌手・沢田研二の生命線はあくまで声である。かつて、ジュリーはこう語っていた。

〈“この人、自分で自分を諦めてないんだ”。そういうふうに思ってくれると、いいなと。僕は、人にどう思われようとちゃんとやってるよ〉(『winds』 2001年6月号)

 世間にいくらバッシングされようとも、気力を持ってあきらめずに戦い続け、全盛期の声量を失っていない。

 古稀にして、観客を魅了する稀代のボーカリスト。ギタリストと2人だけで3日連続、日本武道館公演を開催できるのは沢田研二しかいない。

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