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介護現場の賃上げは当たり前。一番重要なのは現場レベルからトップへの風通しの良さですよ - 「賢人論。」第80回童門冬二氏(中編)

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現場の改革は”心の赤字”をいかに克服するか

みんなの介護 上杉鷹山も無私無欲で、「自分さえ良ければ」と思わずに、米沢藩の財政改革に取り組んだと言われています。

童門 そうですね。鷹山はあの時代を生きたヒューマニストでした。倹約を旨として財政改革を進めるにあたり、「自分さえ良ければ」という藩士たちの心に潜む「赤字」を解消しなければ藩財政の赤字も消せないと鷹山は考えました。

もちろん「恒産なくして恒心なし」ですから、心の赤字を消すには藩内の生活を豊かにしなくてはなりません。そこで産業の振興に力を入れていきます。

コメだけでなく漆やこうぞ、桑などを植え、加工して商品化させるようにしました。付加価値のある商品化を進めたのです。また織物産業にも力を入れました。鷹山はこうした先行投資に費用を惜しまず、得た利益を藩が独占するのではなく、生産者にも還元するようにしています。

みんなの介護 鷹山は藩校も作っていますね。

童門 そうです。家臣たちの反対もありましたが、鷹山は学問の普及にも力を入れ、江戸から細井平州を招き、藩校を創設しています。他の藩の藩校と異なり、藩士だけではなく農も工も商も、学びたい者は誰もが入れるようにしました。

もちろん重臣たちの妨害もありましたが、隠居していた養父、重定の助けもあって改革を進めることができました。

みんなの介護 改革を押し進めるために必要なことについてはどうお考えですか?

童門 当時も今も、改革を行うために克服する課題は3つあると考えます。一つは制度、二つ目は物理的な壁、そして三つ目は”心の赤字”です。

本来、リストラクチャリング(restructuring)とは「事業の再構築」を意味します。すなわち真のリストラとは、人を生かし、新規事業も起こすことでなければならないのです。

そこで、重要なのは三つ目の”心の赤字”をいかに克服するかということになります。

改革のリーダーは、根底に人間への愛情や慈しみの気持ちを持たなければなりません。鷹山には、現代の経営者以上にヒューマニズムが感じられます。

身を切るような改革を部下に強いる場合、「このリーダーならば」あるいは「この人ならばついていこう」という、「ならば」が不可欠です。

鷹山はこうした素養を備えていましたが、それでも時間がかかってしまうほど、改革は難しいものなのです。

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