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  • 連合
  • 2019年01月25日 16:54

座談会「2019春季生活闘争の重点課題」

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賃金実態把握の強化を

─中小組合にとっては地域相場も重要とのことだったが、この点で地方連合会の取り組みは?

岡田 春季生活闘争における地方連合会の最も重要な役割は、地域で働く未組織労働者への情報発信だ。連合東京では、東京の地域特性を考慮し、全国平均の水準に若干上乗せした「東京労働基準」を示すとともに、「賃金セミナー」などを開催して連合の方針や賃上げ要求の考え方の理解促進に力を入れている。少しずつだが、連合未加盟組織の参加も増えている。組織化につなげられればと思っている。

相原 格差には、規模間、雇用形態間、男女間、そして地域間の格差があるが、特に焦点を当てたいのは、地域間格差だ。やはり地域の賃金水準は、働く人にとっては最も身近な指標。とりわけ、地方の人口流出や東京への一極集中が課題となる中、地方連合会では、さまざまな工夫がなされている。労働組合に組織されているかどうかにかかわらず、地域の水準を表現していくことには非常に意義がある。

─水準を追求するには賃金実態の把握が必須とのことだったが、その状況は?

安河内 JAMの賃金全数調査の規模は、35万組合員のうちおよそ30万人を少し超えるくらいが集まっている。会社から、データを得られない単組では、年度初めの賃金改定表を組合が集めて集計している。最初は大変だが、それを積み重ねると、「差」がはっきりと見えて、何をめざして要求すればいいのかわかる。だから、面倒だとか大変だと思う役員はいない。組織力の強化にもつながっていると思う。

松谷 フード連合でも、会社から情報を得られない場合は、組合員から結果を集めたり、アンケートを実施しているが、残念ながら6割程度しか回収できていない。

相原 連合の賃金把握のツールは、結成以来展開している「地域ミニマム運動」だ。賃金実態調査なのだが、運動につなげるためにあえて「地域ミニマム『運動』」と名づけている。単組のデータを地方連合会が集約し、それを連合本部に集めて賃金指標づくりの根拠とするとともに、データを提供してくれた単組には、自社の賃金を分析するためデータやプロット図作成ソフトなどをC‌D−ROMに入れてお返ししている。これを使えば、同業他社や地域における比較も簡単にできる。

直近の2018闘争では47万人のデータが集まった。全体の傾向を把握するには十分な数字だが、都道府県別産業別に精度の高い分析を行うためには、もっと増やしたいと考えている。

岡田 連合東京の2017「地域ミニマム運動」で回収できたのは、16構成組織・156企業に働く2万8642人。中小調査なので、連合東京の組合員116万人が母数ではないものの、やはりまだまだ少ないし、未組織労働者に発信する根拠とするには弱い。単組の苦労は重々承知しているが、総がかりで賃金把握の取り組みを強化して、地域の水準を示していく運動につなげたい。

相原 賃金実態把握は、単組から構成組織、構成組織から連合本部というルートも考えられる。地方連合会が単組から直接情報を得ることが難しいケースもあるようだが、700万連合として実態把握の比率を上げていくために、さまざまなアプローチを考えたい。

松谷 構成組織を通じて賃金データを連合本部に集めるルートを強化し、それを活用できるシステムを構築すれば、単組の負担を軽減できるし、データ量も格段に増やすことができる。

安河内 実は、構成組織以外には情報を出さないでほしいという単組は少なくない。連合として情報開示の重要性を理解してもらえるような努力がもっと必要だ。また格差是正のためには、中小だけでなく大手組合のデータも不可欠。その把握は連合の役割だ。

岡田 連合東京の年齢別ミニマムを見ると、若年層は人手不足を背景に初任給が上がっているので全体的に高い水準にあるが、40歳前後では大きな格差が生じている。そういう現状に踏み込むためにも、「賃金水準」を追求する取り組みは重要だ。

相原 そこは本当に重要だ。データから、40歳代の賃金水準が停滞していることが見えている。就職氷河期世代では、非正規雇用で働き続ける人も多く、格差が非常に拡大している。規模間格差だけでなく、年齢や男女という観点からも実態を把握し、全体の賃金構成を再点検することが必要だ。デジタル化がこれだけ進んでいるのだから、連合本部が軸となって、より地域ミニマム運動と構成組織の賃金把握のルートをリンクさせていく必要がある。

松谷 人材育成のシステムもつくってほしい。連合や構成組織の本部で「賃金屋」と言われる専門スタッフをもっと増やせば、単組に過度な負担をかけない仕組みを構築できるし、組合員も連合の存在意義をより実感できるはずだ。

安河内 JAM大阪は、ベテランオルガナイザーを講師に、個別賃金要求の取り組み事例の検討会を実施している。非常に人気で全国から参加がある。

相原 連合も、そこは危機感を持っている。交渉環境の整備に向けたセミナーの開催など、充実させていく。

2020闘争以降を見据えて

「賃上げ」が最大の課題

─最後に、2020年以降を見据えて、一言いただきたい。

安河内 現状は、富裕層に所得が集中し労働分配率が下がり続けている。このままでは、デフレ脱却も経済の好循環も実現しない。とにかく賃金を上げていくことが日本最大の課題であり、その意味で春季生活闘争の役割は大きい。ただ、残念ながら、労働組合組織率は17%。この間、厳しい中でも賃上げを継続してきたが、その結果を全体に波及させるには、賃上げ額ではなく、めざす賃金水準に焦点を当てた交渉を行う必要がある。そして、連合の加盟組合であれば、これくらいの水準の賃金だということを世の中に示していくことで、社会全体に波及させていくべきだ。それが社会的責任だ。

松谷 おそらくこの先も、所得の一極集中が続き、格差が広がるだろう。しかし、労働組合があるからこそ、これだけの水準が確保できている、賃金以外の労働条件が守られていると大きく発信することで、労働組合に入ろう、労働組合をつくろうという動きにつながるはずだ。

岡田 春季生活闘争において「拡がり」は非常に重要なテーマ。それが、連合組合員だけのものだと捉えられないよう、「拡がり」を意識した取り組みをもっと工夫する必要がある。昨年は、集中回答日が終わった後に、その結果を中小、非正規につなげていこうと池袋で決起集会とデモ行進をした。「春季生活闘争は、すべての働く人の問題だ」と訴えたが、思いのほか反応が良く、街に出て直接呼びかける行動も重要だと実感した。

松谷 SNSで未組織労働者に参加を呼びかける工夫も必要だろう。社会へ発信することで、社会運動につながる。

安河内 運動を社会へアピールすることは大切。社会改革や政治改革にもつなげることができる。

相原 良いアイデアをたくさんいただいた。「考えよう、自分の賃金」。そんなスローガンを掲げて、賃上げを“自分事”として考えてもらえるような運動に向けて、SNSの利用や日程の戦略的配置など工夫できる余地はたくさんある。今日の課題意識を共有して、足がかりの一歩目となる「方向感」を見いだしていきたい。

─ありがとうございました。


※この記事は、連合が企画・編集する「月刊連合1・2月合併号」をWEB用に再編集したものです。

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