- 2012年03月30日 14:13
中国人民解放軍と中国情勢~国家の背景を考える
中国人民解放軍
国軍化論は「断固阻止」
中国情勢
薄氏解任で露呈した中国の政治体制のひずみ
中国共産党は軍隊も政治も掌握した絶対君主の存在
中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」は19日、共産党の指導下にある軍を政治的に中立な「国軍化」すべきだとの議論を「断固阻止する」と強調する評論記事を掲載しました。
国軍化論は軍内部で長年議論されてきたがタブーの一つであり、機関紙がその存在に言及するのは異例のことです。
外国から見ていると分かりにくいのですが、建前としては「共産党が国家を経営している」という状態になっています。
また、共産主義の原則上、中国共産党は広大な土地を持っていると言えます。
国が土地を所有しているので、土地の売却という概念はなく、50年リース、75年リースで土地を貸し出すという方法しかありません。
さらに土地に加えて軍隊を保有しています。
土地も軍隊も中国共産党のものであり、中国共産党が運営する国家の名称が「中華人民共和国」というのが実態です。
軍事力統帥の源泉になっているのは、党中央委員会から選出される「党中央軍事委員会」と人民代表会議から選出される「国家軍事委員会」です。
形の上では「国家軍事委員会」は人民代表会議からの選出となっていますが、実際のところ「党中央軍事委員会」と「国家軍事委員会」のメンバーは同一で党総書記が主席を務めています。
中国人民解放軍というのは共産党の傘下にあり、この組織が中華民国を追い出す戦争に勝利したというのが歴史的な事実です。
では中国共産党という存在はどのように規定されているのかというと、憲法前文で中国共産党に政治面での指導的地位が明記されており、国家権力は共産党の指導を受ける仕組みになっています。
軍事委員会の委員長を国家主席が務めているので、中国共産党は絶対君主として軍も政治も完全に抑えていますが、時折、軍隊が暴走してしまうのが難しいところでしょう。
中国には中国人民解放軍と公安の傘下にある人民武装警察という2つの組織があります。
暴動の鎮圧に軍隊が出動することは稀で、大抵は公安が動きます。
しかし、実際天安門事件のときには軍隊が鎮圧に乗り出しました。
外から見ていると非常にわかりづらいのですが、中国人民解放軍に絡む問題というのは中国にとって非常にデリケートな問題です。
薄熙来氏が解任された、本当の理由とは?
22日付けの英フィナンシャル・タイムズは「薄熙来氏の解任で露呈した中国の政治体制のひずみ」と題する記事を掲載しました。
これは毛沢東以降の中国が合意に基づいて統治する集団指導体制を確立したとする一方、10年に1度の指導部交代を迎え、投資主導型から内需主導型へ転換を図ろうとしている中、薄熙来氏が突然解任されたことは党の結束が幻想であることを露呈したと指摘しています。
今後中国国内では、薄熙来氏が解任された理由について、様々な憶測が飛び交うことが予想されます。
現時点でも、習近平氏の周辺を盗聴していたとか、薄熙来氏が夫人と共に殺人に関与していたなど、実態はよく分からない噂がいろいろと出てきているようです。
今後もさらに色々な説が出てくると思いますが、どんな噂が出てきても驚くには値しません。
薄熙来氏は国民の人気が最も高かった政治家なので、突然解任するということは簡単なことではありません。
そのため、わざわざ解任されるに相応しい複雑な理由・シナリオを作り上げているのです。
体制が変更するときには、その移行がスムーズに行われたということを演出する必要があります。
これは北朝鮮を見ていても分かるでしょう。
薄熙来氏への様々な噂は、まさにこの「演出」に他なりません。
いかに薄熙来氏がダメだったのかを強調することで、コントラストが演出できるというわけです。
本当に薄熙来氏の国民からの期待は大きかったので、その意味で相当色々な「演出」をしなければならないと思います。
薄熙来氏が疎まれてしまったのは、毛沢東への回顧が強すぎた点にあると私は見ています。
繁栄から取り残された恵まれない人々を救済しよう、黒社会を撲滅しよう、というテーマについて先頭に立って取り組んでいました。
そして中央政府に対する反旗の翻し方が、理念闘争に近いところにまで達してしまいました。
どちらかと言えば、中央政府は毛沢東を忘れたいと思っています。
毛沢東の歴史を紐解けば紐解くほど、例えば2000万~5000万人も死亡したといわれる大躍進政策を実施していたなど、忘れられている問題が暴き出される可能性があるからです。
それらには触れず、前へ進んでいきたいと考えていると思います。
この背景こそ薄熙来氏が解任された本当の理由であり、今流されている噂は人民が納得するための「付け足し」に過ぎません。
軍隊も土地も所有しているので、中国共産党は絶対君主の存在であり、中国の政治を見ていると、そういう独特な難しさがあると感じます。
また、笑い話ではありますが、中国人は金儲けの話をする前に、必ず「俺は共産党を信じている」と前置きをすると言われています。
それほど国民にも、中国共産党に歯向かうべきではないという意識が強いということだと思います。
中国共産党には歯向わない一方で、金儲けの時には平気で海外から「盗む」のが中国の面白いところです。
3.19-3.25号BloombergBusinessweek誌では「Hey China! Stop Stealing Our Stuff(中国よ、俺達のモノを盗むな!)」という題が表紙に大きく掲載されていました。
さすがにiPadの問題などもあり、米国は怒り心頭の様子です。
日本でも同じように中国に怒りを感じている人も多いかも知れませんが、今の中国ほど極端ではないにせよ、かつて日本も米国から「盗んだ」経験があり、かつて通った道とも言えます。



