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自己責任論が蔓延する「予期せぬ妊娠」 誰もが子どもを産み・育てやすい環境にしていくには

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写真AC

「子供がほしいのになかなか授からない」――。日本は、カップルの6組に1組が不妊に悩む「不妊大国」と呼ばれている。不妊治療とともに里親制度への関心も高まり、日本財団が2018年に行った調査では、潜在的な里親家庭候補は全国に推計約100万世帯いることがわかった。一方、予期せぬ妊娠により、1年間で約18万件の人工妊娠中絶が行われているという現実がある。

子どもたちがあたたかい家庭で健やかに育つことができる社会を目指す日本財団の「ハッピーゆりかごプロジェクト」担当者の新田歌奈子さん、予期せぬ妊娠に悩む人たちの支援を行う一般社団法人「にんしんSOS東京」相談員の小関真澄さん、吉田麻紗子さんに、日本における妊娠・出産の現状や課題について話を聞いた。

にんしんSOS東京の吉田さん、小関さん、日本財団の新田さん

孤立化する女性たち

小関:にんしんSOS東京では、24時間365日、メールまたは電話で相談を受け付けています。相談者は10~50代の女性の方からの相談が8割ですが、男性からの相談も2割います。メールや電話の相談に限らず、直接お会いして具体的な支援につなげていくということも行っています。

15歳の女子中学生から、「妊娠検査薬を使ったら、妊娠していることがわかった」とメールで相談が寄せられたことがありました。

生理が遅れていることを相手に伝えたら連絡が取れなくなり、ひとりで検査薬を使うことも怖くてできず、時間がどんどん過ぎていってしまったとのことでした。メールで信頼関係を築きながら実際に彼女に会い、妊娠検査薬を使った再確認に立ち会ったのち、産婦人科につなぐなどのサポートをしました。

こうしたケースは社会的に問題を抱えた「特定の人にだけ起こるもの」と思われがちですが、実際には誰にでも身近に起こりえることなんです。例えば学校に行きいわゆる「普通の学生生活」を送っている環境でも、学校帰りに恋人と時間を過ごす中でお互いの同意や性的知識の乏しいまま行為に及んだり、出会い系アプリやサービスが一般的になったいま、ネットを介して仲良くなった人と会ったら無理やり性行為を強いられたというケースは少なくありません。

にんしんSOS東京の小関さん

吉田:未成年で妊娠をした場合、「性に奔放で、だらしがない」「自業自得」と周囲から批判される傾向にあります。ただ、私が相談に乗った方の中で、気軽に性行為をした結果が妊娠という方はこれまでにひとりもいません。

彼のことが好きだけれども性についての知識が乏しいために避妊に失敗し予期せぬ妊娠をしてしまったり、貧困や孤独感など家庭の事情があったり。話をじっくりと聞くとそこには相談者なりの背景や性知識の不足があります。この問題は当事者だけのものではなく、「大人の責任も大きい」と思うことがとても多いです。

小関:また、「予期せぬ妊娠」というと、若年の未婚者の妊娠を想定する方も多いと思うのですが、30、40代など既婚者の方から「夫と性行為をしたら妊娠したけれど産むかどうか悩んでいる」と相談を寄せられることもあります。

夫との関係は良好でも、3、4人目を育てるには経済的に厳しかったり、夫が忙しいためひとりで子育てを担っていて、周りに支えてくれる家族もいなかったり。また、「今は職場で昇進のチャンスだから、産んでも育てられない」という声も聞きます。

妊娠=喜ばしいこと、という大前提が日本の社会にあり、相談者の方は「そんな風に悩んでしまっていいのか」と自分自身を責め、周囲に相談ができず孤立化してしまいます。

新田:たとえ友人がいたとしても相談できるものとできないものがあると思います。先ほどの家庭の事情もそうですし、例えば付き合っている相手が不倫をしていた場合、周囲には言えない。また、相手が薬物使用者や暴力団関係者だった場合、相談しても妊娠とはまた別のところでフォーカスされてしまい相談には乗ってもらえないのではという心配もあると思います。

行政サービスも様々な支援制度が整えられていますが、基本的には平日の日中に窓口に出向かなければ情報は手に入りませんし、たとえ足を運んだとしても、毎回別の担当者が対応し、その度に同じことを説明しなければならないことも多く、心理的負担は大きいと思います。

また、電話相談窓口は、1回目の電話で誰が出てどのように対応してくれるか、ということがすごく大切で、そのときに相談を受けた側があいまいな返事をしてしまうともう2回目はないと言われています。特にこうした命に関係することであればなおさらです。

にんしんSOS東京さんでは、助産師、看護師、社会福祉士などの有資格者から行政サービスと医療的なアドバイスの両方のアドバイスを受けることができ、さらに必要に応じては役所や病院への相談に付き添いをしてもらえるという支援を受けることができます。 また、相談内容はどんなことでも聞いてもらえるということも、悩む方たちが「社会的な孤独」に陥らないためにもとても大切な取り組みだと思います。

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