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"看過できぬ"全国の僧侶が警察に怒るワケ

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そもそも法衣(僧衣)とは何か

しかし、ひとたび青切符を切った以上、それが撤回されることはまずありえない。最終的には裁判所の判断に委ねることになりそうだ。

私は個人的にはさっさと反則金を納めて、下手に裁判所の判断を仰がないほうが得策ではなかったかと思う。青切符が正当であると裁判所の判断が下れば、取り締まりが強化されかねない。

本件は仏教界において、歓迎される事態ではない。しかし、法衣が注目が浴びること自体は、悪いことではない。ここで少し、法衣についてその歴史とともに解説したい。

今回、取り締まりを受けた僧侶が着用していた法衣は、浄土真宗では布袍(ふほう)と呼ばれるもの。しかし、私の所属する浄土宗や他宗では「改良服」という名称で使われている。ここでは改良服の名称で解説する。

そもそも法衣(僧衣)とは何か。標準的な衣体は、白衣の上に、黒衣(法要などでは僧階に応じた色付きの衣をまとう)を羽織り、袈裟を着用する。この僧侶が着用する衣服の総称が、法衣(僧衣)と呼ばれている。しかし、現場の僧侶が「法衣」と呼ぶことはあまりない。「衣」あるいは「袈裟」と呼ぶことが多い。袈裟は厳密には法衣の一部を指す。

警察官にも読んでほしい「法衣・袈裟の発祥」

袈裟の発祥は古代インドの原始仏教にさかのぼる。

お釈迦様が説法の旅に出られた時、美しい田園の風景が目に飛び込んできた。そこで、弟子の阿難尊者に「このような美しい水田のような衣服を弟子のためにつくるように」と命じられた。それが、「福田衣(ふくでんね)」とも呼ばれる袈裟のおこりである。水田を模しているので、袈裟はパッチワークのように複数の布をつなぎ合わせ、つなぎ目には「畦道」のような縁が、デザインされる。

袈裟が1枚の布で作られないのは、金銭的価値、つまり執着をなくすことで修行に邁進できるようにとの意味も込められている。本来、袈裟は掃除で使ったようなボロ切れをつなぎ合わせて作られるものであり、こうした袈裟を糞掃衣(ふんぞうえ)と呼ぶ。

だが、仏教発祥の地インドにおいて、お釈迦様やその弟子たちが着用していた法衣に比べ、日本の僧侶の法衣は似ても似つかぬものになっている。なぜか。

それは日本では6世紀の仏教伝来以降、僧侶は国家の枠組みの中に取り込まれた(官僧)ために、貴族の服装に準ぜられた衣装が用いられるようになったからである。

「そのうち袈裟は、より装飾的な意味が濃くなり、人に見せるための衣装として発達、変化していきました」(久馬慧忠・著『袈裟のはなし』法蔵館)

車社会に適当した「新・改良服」を考案する時期なのか

現在、市井の僧侶は日常的には、黒衣を簡略化した改良服を身に着けることが多い。改良服の上に、やはり簡略化された袈裟である「輪袈裟」「威儀細」を着用する(詳しくは、プレジデントオンライン2019.1.13『西日本では“遺骨”を火葬場に残すのが常識』)。


※写真はイメージです。(写真=iStock.com/Xavier Arnau/)

改良服とは、その名の通り、正式の黒衣を「改良」し、着脱や動作をしやすくしたものだ。改良服は日常のお勤めや接客、葬儀会場などへ赴く際の移動着などの略装として、用いられる。

実は江戸時代までは僧侶は常に正装が求められていた。だが、明治時代になって新政府によって「平服」が許可されることになった。これは、国家神道を推し進める明治政府の、仏教にたいする俗化政策の一貫として捉えることができる。

『近代の僧服改正・改良・改造論をめぐって』(川口高風著、禅研究所紀要 通号 26)には、「ただ、僧侶は平服の着用といっても全くの俗服になることには抵抗があったようで、法衣が日常生活では不便であったところから、法衣らしく簡易なものが基準となり、平常用の略法衣が創作され始めた」とある。

また、過去の戦争も法衣のデザインに大きな影響を与えたとされている。日清戦争以降、僧侶が大陸などの戦地に赴き、戦死者の慰霊や布教などを実施していく。中には、僧兵のように武器を取って戦いに参加した僧侶もいた。戦争と仏教との関連性は、今後、本コラムで論じていきたい。

さらに、明治以降、交通機関が発達していくと、僧侶の移動が増えていく。こうして明治以降、ムラ社会から飛び出して外の世界に活動の場を広げていった僧侶のために、より動きやすい法衣へと「改良」されていったのである。

したがって、日本の法衣は常に社会情勢を受ける形で、デザインを変容させてきた歴史がある。日本は法治国家であるから「法衣で運転はダメ」と言われれば、従わざるを得ないだろう。むしろ、車社会に適応した「新・改良服」を考案する時期にきていると思う。

(浄土宗僧侶/ジャーナリスト 鵜飼 秀徳 写真=iStock.com)

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