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なぜ若者は"実家近くのイオン"に集うのか

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■「最後に頼れるのは、親だけだ」

実はインタビューした100人の20代男子のうち、74人がこの「自己責任」に近いニュアンスを口にしました。

大きなきっかけは2004年、イラクで日本人3人が誘拐された際、小泉内閣が使った「自己責任」という言葉だったようです。おそらく当時、内閣はそういう意味合いで発言したわけではないのですが、彼らはこう捉えていました。

「この先、国も会社も、自分を守ってくれない」「だからちゃんと貯金して、自分で自分の身を守らないと」「いざという時のために、地元の友達と仲良くしておかないと」

そして彼らは、こうも言っていました。「知らない大人は信用できない。最後に頼れるのは、親だけだ」と……。

つまり、根拠のない自信を持ったバブル世代は、競争主義で肉食系、極端に言えば、周りを蹴落としても自分が上に行くことで、男性として「勝利」の感覚を得たかった。口うるさい親元も、早く離れたかった。でも彼ら草食系世代は、「無理に親元から都会に出て、競争した果てに、いったい何が残ったんだ?」という、バブル崩壊後のシビアな現実を見て育っています。

■結婚後も「親の近くに住みたい」

そんな無意味な競争をするぐらいなら、むしろ親や地元の友達と仲良く緩くつながって、楽しく働きたい。カッコつけて分不相応な車に乗ったり、飲めないお酒を無理に飲んだりするより、よく見知った地元の友達や親の近くに住んで、等身大の生活を送りたい。

特に、今の20代(主に「ゆとり世代」)は、一人っ子の割合が増え、親だけでなく祖父母にもかわいがられて育った世代です。だからこそ、結婚後も「親の近くに住みたい」とか、「じいじ・ばあばの近くで暮らしたい」など、地元志向が強いのでしょう。

地元好きで親や古くからの友人と仲がいい、いわゆる「マイルドヤンキー」も、イオンが多い郊外型のエリアに多い人たち。彼らもまた、イオンが生活に根付いています。

■「イオンに集う若者」と「恋愛しない若者」の共通項

コスパや自己責任を重視する若者たちは、「海外旅行好き」と「そうでない人たち」に、二極化しています。実は今の20代にも、海外旅行のリピーターは数多くいます。LCCやホテルの比較予約サイトなど、格安で弾丸旅行に行ける手段が整い、思い立ったときいつでも気軽に、安く旅行できるからです。

でも、「海外旅行はコスパに合わない」「自己責任が伴う」と考える若者は、無理に行こうとはしません。それなりにお金がかかるし、テロの危険性もある。大事な親に、「怖いから行かないで」と言われれば、無理に行く必要はないと考えます。

そして何より、地元のイオンなら安くて何でもそろう。「いつかは海外に行ってもいいな」と思っていても、日々の生活や休日のレジャーは、イオンで事足りる。そこにないモノは、ネットで買えばいい。

逆に、コストやリスクを費やしてまで、見知らぬ世界に足を踏み出そうとは思わない。この感覚は、「恋愛に憧れはあるけど、別に今じゃなくていいや」と話す、「恋愛しない若者たち」に似ています。

■「初デートがイオン」はよくある話

旧ジャスコグループが「イオングループ」に変わったのは、平成元年、1989年のことでした。この時代に生まれ育った30代以下の世代は、物心ついたときからイオンがありました。イオンはいわば地元、親元の近くにある、等身大で安らげる場所です。


東海友和『イオンを創った女 評伝小嶋千鶴子』(プレジデント社)

経済評論家の大前研一さんはイオン大好きな「イオニスト」の存在を指摘しますが、分かる気がします。私たちがインタビューしても、「初デートがイオン」や「クリスマスは家族でイオンで過ごす」といった話がよく出てきます。子供のころから慣れ親しんだ場所だけに、大人になった今、地元で集まる際も、「イオンに集合ね!」と言い合う。そこに安心感や、昔からの思い出が詰まっているからです。

イオン人気は、もちろん若者だけのものではありません。40~50代のファミリー層や、60代以上のシニア層にも人気なのは、特にこの10年で「二世代」「三世代」が楽しめる空間を創り上げてきたからです。

シニア世代にインタビュー調査をした際、こんな声があがりました。「普段あまり若い人と接する機会がないけれど、イオンのベンチで本を読みながら座っていると、若い人たちが元気に行き交う様子を肌で感じられる。だからイオンが好き」。人ごみのざわざわした空気を胸に吸い込むことで、安らぎを覚えるそうです。

■イオンは「インフラ」になった

かつては「団塊世代が70代、80代になると、運転しなくなり、郊外型のイオンは廃れる」とも言われました。しかし岡山や旭川など、駅前型のイオンが増えています。何より「自動運転」が予想以上に早く、生活に浸透しそうな勢いです。事故を防ぐ「自動ブレーキ」はいち早く義務化の動きが進んでいます。安全に車を使えるなら、シニアが車を手放す必要はなくなります。

つまり郊外型のイオンも、以前予想された以上に長く存続するでしょう。イオンはもはや、あらゆる人たちの生活に欠かせない「インフラ」となっているのです。

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