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負の遺産〝夢洲再活用〟で風呂敷を広げすぎた「大阪万博」

大阪万博の会場となる夢洲:Getty Images

「結局、夢洲(ゆめしま)の再活用ということ以外、これと言って大きなメリットなんてないと思いますよ」。

2025年の国際博覧会「大阪万博」が決まったことに、さぞ地元・大阪は盛り上がっているかと思いきや、意外や意外、地元のエンターテインメント関係者の中からは冷めきった声も…。

日本での万博開催は、05年の「愛・地球博」(愛知県)以来20年ぶりだが、大阪では70年の「大阪万博」以来、実に55年ぶりとなる。まさに「あの時の感動をもう一度」と言いたいところだが、その開催が決まったにもかかわらず、どこか暗雲が漂い始めているのだ。

もちろん、開催に向けて意欲を見せていたところもある。中でも吉本興業は率先して誘致活動に動いてきた。ダウンタウンが誘致委員会のアンバサダーとなったかと思えば、「万博待ってるで〜」と、吉本新喜劇の座長・酒井藍や西川きよし、桂文枝、今くるよ、間寛平、坂田利夫らで「大阪もんのうた」を制作するなど、誘致に向けてのPR活動に努めてきた。「まるで〝吉本万博〟でも開くかのような熱の入れようだった」(業界関係者)なんて揶揄する向きもあったほどだ。

今回の万博で誘致活動に動いていたのは、大阪の他には、ロシアとアゼルバイジャンだった。

ロシアは「万博は新たな場所と資格を持つ国、ロシアで開催されるべき」と訴え、一方のアゼルバイジャンも独自のルートでPR活動を繰り返してきた。

1回目の投票は日本の85票に対して、ロシアは48票、アゼルバイジャン23票だった。最終的に日本とロシアの〝2カ国決戦〟となり、その投票の結果、日本がロシアの61票を大きく上回る92票を獲得し、メデタく「開催国」になった。

この決定には安倍(晋三)総理も「〝復興五輪〟とされる20年の東京五輪後の景気対策として期待される」なんて大喜びだったが、本当に、この万博が景気を押し上げてくれるのかと思ったら、実は疑問だらの開催計画だったのである。

大阪万博決定を喜べない新聞各紙

と言うのも万博が決まった時の新聞各紙。さぞ歓喜に満ちた見出しになるかと思っていたら、

「万博 重い民間負担〜埋立地 どう防災」(毎日新聞)
「会場費1250億円 〜膨らむ恐れも」(読売新聞)
「万博デザインこれから 〜財源未定」(朝日新聞)
「大阪万博どうするねん」(東京新聞)

なんと、どこも開催を不安視する見出しばかり。一紙ぐらいは「ご祝儀見出し」ぐらいあっても…と思ったほどで、さすがにこれには驚くばかりである。

東京新聞に至ってはサブタイトルが「経済効果2兆円『ほんまかいな』」だった。

「いのち輝く未来社会のデザイン」などといった崇高なテーマを掲げ、高齢化社会に向けての「健康」や「長寿」「医療」をアピールしていくようなコンセプトを前面に出してはいたが、いざ蓋を開けてみたら単に「開催」が目的になっていて、肝心な中身が後回しになっていた感がある。

財源に不安だらけの大阪万博

BLOGOS編集部

冒頭でも記したように、万博開催の最大の目的が大阪の中では〝負の遺産〟と言われ続けてきた「夢洲の再活用」だったからだ。実際に開催が決定するや松井一郎知事が「二度と負の遺産とは言わせない」なんて言ってしまったら、さすがに「そこかよ!」と一声かけたくなってしまうだろう。

この「夢洲」というのは、大阪市湾岸部の人工島。いわゆるバブル崩壊による計画の頓挫、さらにはオリンピック誘致の失敗などで、持て余していた場所である。「もはや使い道がない島」とも言われていただけに、万博開催で「ようやく」という思いだったことは明白だ。だが、そこまでである。

まず、当初から発表している会場費の1250億円だが、その財源は「国」「地元」「経済界」で負担としている。この中で、例えば経済界の負担金は約400億円とも言われているが、実際には「何も決まっていない」のである。

さらに、その財源以外に会場予定地の整備や鉄道インフラなど少なくとも1000億円がかかると言う。それだけではない。誘致活動の時に「(大阪での開催が)実現した場合は、途上国など約100ヶ国にパビリオンの建設費として約240億円を支援する」なんて言ってしまっている。

「風呂敷を広げすぎた」

さすがの松井知事も「財源不足」が深刻化することが分かってか、開催決定後の記者会見で、「風呂敷を広げ過ぎるぐらい広げてしまったので、ぜひ日本の皆様方の総力を挙げて作り上げて頂かなければ実現不可能と思っています」。

それにしても、この言い方はないだろう。これじゃ無責任の権化と言われても反論できない。しかし、松井知事といえば、昨年9月、大阪が台風21号の直撃を受けて大混乱している中、災害の陣頭指揮を執るどころか、沖縄県知事選の自民党候補応援に行っていた。どうやら己の行動に対して後先を考えるような御仁ではないようである。

そんな松井知事が、「大阪万博」開催で考え抜いたのが、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致だった。会場となる夢洲を「万博」と「カジノ」の2つに分けて整備すると言うのである。まだ、日本国内のどこにカジノを作るのか決定していないが、どうやら政治的にも「勝算」があるようである。

それにしても、「健康」や「長寿」「医療」を掲げる万博とカジノとは全くテーマがそぐわないが、そこは「夢洲再活用」が最大の目的である以上、もはや結果オーライ。テーマとか面倒な話は後回しということだろう。

「とにかく、地下鉄などの延伸にかかる約540億円のうち200億円をIR事業者に負担して貰おうというのが松井知事の考えのようです。もっとも、そのIRにしても、トランプの支援者であるサンズが濃厚と言われていますが、現時点では、どこの事業者が参入するのかも決まっていません」(事情通)

大阪市は会場の造成を進めるための埋め立て費用136億円と鉄道整備の検討調査費1億3600万円など、総額140億円の補正予算案を提出する。夢洲の予定地は155ヘクタールあるが、そのうち30ヘクタールを前倒しで埋め立て、盛り土や地盤改良を加速させるというが、その後の地盤沈下なども予想されるだけに不安も残る。

しかも、ここにきて松井知事は、前回の万博の会場である大阪府吹田市の万博記念公園についても関連会場として活用する方針を表明した。それだけではない。この公園にある芸術家・岡本太郎氏制作の「太陽の塔」を、2025年の万博に合わせて「世界遺産登録を目指す」とも言い出した。ここまでくると、さすがに全てが「思いつき」のように思えてきてしまうのだが…。

2005年に愛知県内で開催された21世紀最初の日本国際博覧会「愛・地球博」。これは総事業費1900億円を費やした国際博だったが、環境問題を前面に出したテーマ性が受け入れられ、当初の目標だった1500万人を大きく上回る2200万人を動員した。そういった意味で考えたら「大阪万博」についても「やってみないと分からない」部分があるのかもしれないが、2020年の「東京五輪」の動きを見る限り、不安は募る。間違いなく混迷を極めた万博になりそうだ。

それにしても…。

「大阪万博」については「ネット時代に国を挙げて行うのは興味を示さない」と言った意見もあるのだが、オンライン旅行プラットフォームの「エアトリ」が10代から70代を対象にアンケート調査を実施したところ、「大阪万博」の開催を「嬉しい」と回答したのが45.6%と半数を占め、さらに63.8%が「行きたい」と回答したという。国民の間では、やはり期待する声が多いようだ。

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