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「戦後政治の安泰―ポスト安倍が見えない」―自民党内の親中派を見誤ることなかれ― - 屋山太郎

 自民党総裁の任期を3選までとした結果、安倍晋三氏は内閣史上、最長の任期を全うすることになる。その長期政権の結果、日本の戦後政治は初めて安泰となるだろう。一強多弱の政治情勢のどこが一番良くなったかと言えば、自衛隊が増強され、集団的自衛権がまがりなりにも行使できるようになったことだ。

 安倍首相は「加憲」をしない限り、自衛権、自衛力を行使すれば違憲と言われる。そのため改憲に向かって世論を必死で揺さぶっている。私も改憲するのがベストと思うが、反撃する権利を有することは明白だ。

 安倍氏が泰然自若としているせいで、ポスト安倍が見えなくなったと言われる。党内に安倍氏と同様の思想、力量を持った人物が見当たらないからだ。安倍3選に当たって、野田聖子総務庁長官が立候補を模索した。野田氏は安倍内閣の国務大臣の一人である。その一人が現職の自民党総裁と争うという。争うからには安倍首相のここが気に入らないと指摘するか、閣僚を辞職するのが筋だろう。しかし野田氏の発想だと、総裁になった人の思想がどうであれ、政治は誰でも転がせるということのようだ。

 安倍政治を俯瞰して最高と言える点は、日米安保条約をがっちりと固めたことだろう。国政で衆参4連勝したのは安倍氏だけだが、安倍氏の功績の最たるものは日米の連帯を一段と強めたということに尽きる。これが見えないとすれば、野田氏は何を掲げて“野田政治”を訴えたのか。政党とは何なのか。中学校の級長でも選ぶつもりだったのか。

 森喜朗内閣の時、自民党の重鎮加藤紘一氏が民主党の菅直人氏と組んで“森つぶし”を試みた。野党の菅氏に頼んで森内閣不信任案を出してもらい、与党の加藤派が賛成に回るというのである。こうなると政党のワクが潰れ、政治は派閥単位で行われることになってしまう。日本の政党が党紀に厳しいのは、政治を政党単位でやってもらう狙いからだ。

 加藤の乱は反乱の計画が漏れて、翌朝にはYKKと言われた小泉純一郎、山崎拓各派も抑えられ、加藤氏の周辺も抑えられた。

 YKKの森内閣が気に入らない理由の最たることは、森氏の対米親和の姿勢だったろう。加藤氏は昔の池田隼人氏に通じる宏池会の代名である。外交は日米中で「正三角形」を形成すべしとの論である。河野談話の河野洋平氏もこの派の代表格だった。日本だけが核を持たず、米中が同格で付き合ってくれるのか。

 現在、安倍首相は国を守るには「日米同盟しかない」と信じている。仮想敵国は中国である。この日米で中国を抑え込む、或いは対抗するという構図は、中国が没落しても当分必要なのではないか。技術的にはG5(第5世代)の時代に入り、宇宙軍も創設されるだろう。米国も日本なくして自国を守れない域に入ってきたようだ。安倍一強が怖いのは党内の親中派が世界情勢の変化に伴い思想を変えたのかどうか、見えにくいことだ。

(平成31年1月23日付静岡新聞『論壇』より転載)

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屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。
著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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