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根拠なく組織的隠蔽でないと報告書は結論づけるが統計不正は厚労省の組織的隠蔽と言わざるを得ない

 統計の専門家、弁護士等の外部有識者で構成される「毎月勤労統計調査等に関する特別監察委員会」が昨日(1月22日)、「毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書」を公表しました。この調査報告書を読んだ全経済産業省労働組合副委員長の飯塚盛康さんが感想を書いてくれましたので以下紹介します。

 組織的隠蔽はなかった?

 報告書によると、(1)2004年に始まった東京都の抽出調査は、2003年に企画担当係長名で東京都の一部産業を抽出調査にする旨の事務連絡を発出後、統計情報部長名で同様の内容の「事務取扱要領」を発出した。(2)2008年、2011年には厚生労働大臣から総務大臣に毎月勤労統計調査の変更を申請しているが、これは大臣官房統計調査部長の専決決裁で行われた。この変更申請は他対象事業所の変更で、抽出調査への変更ではなく全数調査をしていることになっていた。(3)2015年統計委員会で毎年3分の1ずつ替えていくローテーション・サンプリングの議論でも500人以上の事業所は全数調査と説明し、政策統括官が専決決裁をした調査変更申請書にも全数調査の記載があった。(4)「法令順守意識が欠如している」が「意図的な隠蔽とまでは言えない」として組織的隠蔽はなかった、と結論づけています。

 役所が文書を発出する場合、必ず文書番号をとって決裁した上で発出されますが、各役所には「専決規程」というものがあって、大臣名、部長名で発出するものは、どこまでの決裁を取ればいいか決まっていますので、大臣名と大臣印が押してあるからといって、全部大臣が見ているわけではありませんが、上記(1)(2)(3)はそれぞれ統計調査部長名、大臣名で発出されているので「必ず」決裁を回しています。

 もし、専決規程に則った決裁文書を組織的な関与がなかったというのであれば、役所の文書はすべて組織的な関与がなかったということになります。

 最初は東京都から調査件数が多いので何とかならないのかと言われたことがきっかけで抽出調査にしたとしても、「事務取扱要領」を発出した段階で組織としてやったことになるのです。

 2004年に統計委員会に抽出調査に変更することの承認を取っていれば、当然、抽出調査結果の復元方法についても併せて承認を取るので、抽出調査しても信頼できるデータになったはずです。しかし、それをしなかったという判断を一担当者ができるはずもなく、少なくとも担当課長、担当部長の指示があったはずですが、これも組織的な関与がなかったというのであれば、「組織的な関与」という定義があまりに狭すぎるのではないでしょうか。

 加えて、国家公務員は仕事のあり方を変更するとき、「個々人の関与」だけで判断せず「組織的な関与」で判断します。ですから、東京都だけ抽出に変更したり、2018年1月の意図的な復元をしたりする変更を「個々人の関与」だけでせず「組織的な関与」で変更することが基本です。普段は「組織的」に仕事をする国家公務員がどうしてこのときだけ「組織的」でなくなったのかがこの報告書は明らかにしていないと思います。

 また、2018年12月13日に2018年1月の調査から段差が生じているため、統計委員会委員長と総務省との打ち合わせで雇用・賃金福祉統計室長が東京都で抽出調査をしており、その前は復元処理をしていないこと、抽出調査の対府県(神奈川、愛知、大阪)を拡大することを説明した際に、統計委員会委員長はテレビ報道の中で統計室長が「悪びれることなく堂々と説明していた」と言っていましたが、この統計室長は個人の判断でやっていることではなく「組織としてやっていることの何が悪いんだ」と思っているから統計委員会委員長の前で堂々と説明したのだと思います。

 それから、報告書の以下の点です。

政策統括官(当時)Hは、在任中に当時の担当室長Fから「東京都の規模500人以上の事業所については全数調査を行っていない」旨の説明を受けた(説明を受けた時期は平成29(2017)年度の冬頃であったと述べている。)。その際Hが、公表資料と齟齬があるのであれば手続き的に問題であり、「然るべき手続きを踏んで修正すべき」旨指示したと述べているが、統計技術的な問題となる復元は当然行われていると思い込んでいたと述べており、その後の処理はFに委ね、放置した。Hが復元処理の有無を含めた調査設計・実施方法について自ら的確に把握し、部下であるFへの適切な業務指示及びその後のフォローアップ等を行っていれば、今般の事案に対する早期対応が可能となったと考えられることから、適切な対応を行わなかったと認められる。また、後任者であるJに対し、東京都の規模500人以上の事業所については全数調査を行っていない旨を引き継いでおらず、適切な対応を行う機会を逸した。(報告書24ページ)

 上記にある、政策統括官(当時)Hの「統計技術的な問題となる復元は当然行われていると思い込んでいた」「後任者であるJに対し、東京都の規模500人以上の事業所については全数調査を行っていない旨を引き継いでおらず」という点は、組織的隠蔽を政策統括官(当時)Hの「不適切」な対応だけに矮小化するもので、これをもって組織的隠蔽の意図がなかったと断言できないと思います。

なぜこんなことが起こったのか?
――異常に軽んじられている統計

 報告書では組織としてのガバナンスが欠如しているとの指摘がありますが、それも要因の一つであることは間違いないところです。しかし報告書には政策統括官付参事官が調査対象事業所数が少なくなっていることについて、「良くないと考え、予算を増やせないか相談したが、予算の作業が大変になるのでやめてくれと言われた」という記載があります。

 これは厚生労働省が「統計調査」というものを軽んじている証拠であり、実際、厚生労働省の統計職員も2006年の331人から2016年には237人と激減しています。

 全省庁の統計職員も、2006年の5,581人から2016年の1,886人とこの10年間で66%(3,695人)も削減され激減しており、統計調査の民営化まで考えている省庁もあります。

 報告書は総括で「国民生活に直結する各種政策立案や学術研究、経営判断の礎として常に正確性が求められ、国民生活に大きな影響を及ぼす公的統計」と書いていますが、政府はこのことを頭に入れて必要な人員は確保しないと、同様のことが起きてしまいます。

 最後に、厚生労働省は毎月勤労統計が雇用保険、労災保険などの給付額の上限に影響することは、わかっていたはずです。この金額が不正な調査によって低くなれば給付は減ることもわかっていたはずです。それでも、続けていたのは厚生労働省の特別会計である雇用保険、労災保険などの支出が減るので見逃していた面があるのではないかと思っています。

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