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大ヒットホラー映画に学ぶマーケティング

本日のテーマは「話題のビジネス書からの学び」

昨夜、久々にテレビで心霊系のホラー番組をやっているのを見て、もう夏が近いな~なんてのほほんと感じながら、この映画を思い出しました。

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1994年10月、モンゴメリー大学映画学科に所属する3人の大学生がドキュメンタ リー映画製作のためにメリーランド州ブラック・ヒルズの森に分け入った。その土地に今なお残る伝説の魔女“ブレア・ウィッチ”をテーマにしていたのだ。

だ がヘザー、ジョシュ、マイクの3人はそのまま消息を絶った……。

手掛かりが発見されないままやがて捜索は打ち切られる。しかし事件から1年後、彼らが撮影 したものと思われるフィルムとビデオが森の中で発見されたのだ……。
ホラー映画がものすごく苦手なので見たことはないのですが、超のつく低予算で製作されながらも世界中でメガヒットとなったドキュメンタリー(風)映画。

全米興行収入1億4000万ドル、全世界興行収入2億4050万ドルという大ヒットの裏に、どんな仕掛けがあったのか?その緻密さについては、各ビジネス書でも取り上げられています。

その代表的な一冊がこちら。ジョン・スポールストラによる一冊で、大ヒットしたビジネス書「エスキモーに氷を売る」の続編でもある一冊です。

エスキモーが氷を買うとき―奇跡のマーケティング/ジョン スポールストラ
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これまで当たり前だった手法の”逆張り”


”逆張り” をするという戦略は、昨日の記事でご紹介したような”イノベーション”にはツキモノですが、これまでの映画のマーケティングとしても、いわゆる公式のスタイルがありました。

それが以下の3本立て。

  1. 大量のテレビCM
  2. 大量の新聞広告(公開後、徐々に広告量を減らす)
  3. 広報(映画の看板スターを次々にトーク番組に出演させる)

一般的な映画にかけるマーケティングの費用がおよそ3000万ドルもかかると言われている典型的なハリウッド映画。

しかし、ブレア・ウィッチ・プロジェクトでは、この3つの手段、全てを無視した手法をとっていたようです。

テレビCMは打たない、新聞広告も無し、トーク番組に映画の出演者を出すことも無し。

言わずもがな、ただの「経費削減」ではありません。その裏にあったこの映画のコンセプトと、それに合ったマーケティングがあったわけです。

この小さな作品に合った、小さな方程式


ブレア・ウィッチ・プロジェクトを手掛けていたアーティザン・エンターテイメント。

彼らはまず最初に、コミュニティーにおけるトレンドセッター的人物、つまりコミュニティの中でのティッピングポイントの学生たちをインターンとして100人採用。

そして彼らをクラブや書店、カフェなどの若者が集まる場所に送りこんで、行方不明者のチラシを配らせました。

その3人の行方不明者・・・それがまさにこの映画の主人公である、魔女探しをしていた大学生。彼らについて詳しく知りたいと思った人間が、この映画のウェブサイトに誘導されるような流れは本当に起こっている現実の事件のような緊迫感を与えていたようです。> The Blair Witch Project Official Website(恐る恐るウェブサイトを見て、確かに納得。無理!笑)

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映画公開前だったにも関わらず、魔女を探していたこの3人の大学生が失踪したことを知ったサイトの訪問者たちは、すぐにこの事件について拡散。サイトのヒット数は1億1500万を突破し、事件の信憑性もどんどん高まっていたよう。

ティッピングポイントであった学生インターンが、サイトの訪問者へマーケティングをさせるという構図の出来上がりです。

そしてもちろん、映画出演者である”3人の大学生”は、ブレア・ウィッチ・プロジェクトと名付けられたビデオの撮影をしている途中に失踪。”ビデオだけが発見されたときにはすでに死んでいる” という設定なので、まさかトークショーに出ているはずはありませんよね。

過去の成功方程式に何でも当てはめて考えるのではなく、そのプロジェクトや製品、サービスに合ったマーケティングを考える。

たとえば今回の場合、行方不明者が出たという点だけを考えれば大きく広報をすることで、”大変な事件が起きた”ということを伝えられたはず。

しかし、この映画が”残された一本のビデオテープ”として公開されるためにはその大きな広報では伝わらないリアリティーさが必要で、かつ学生の間で噂になっている ”らしい” 、ある種の奇妙さ、謎に包まれた気持ち悪さ、テレビでも報道できないような恐ろしさが全てのキーとなっていたんですよね。

マーケティングをする上で、製品やサービスのコンセプト以上に大事にしなければいけないのは、マーケティングの”サイズ感”なのかも知れません。

欲しくて欲しくて仕方ない状況に

ブレア・ウィッチ・プロジェクトがこれだけ莫大な収入を得たのはこれが「風と共に去りぬ」以来の最も偉大な映画だっただろうか。

私はそうは思わない。

それはアーティザンが映画の古いマーケティングの公式を捨て去って、同社独自の手法を編み出したからだと思う。
著者のジョン・スポールストラはこのように考察しています。

日本で公開されたときにも話題になっていましたが、こちらの映画、公開する映画館をかなり制限していましたよね。

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どの映画館もすぐにチケットが売り切れになりましたが、アーティザンはあえて上映館を増やすことをせず、「売り切れ」の雰囲気を維持させ続けました。

この”欲しくて欲しくて仕方ない”制限された状況は、消費者にとって満足度がより上がる瞬間。ディズニーランドなどの乗り物だって、並べば並ぶほど、”これだけ並んでようやく乗れた”という気持ちから、満足度が自然と上がることが心理学的でも証明されているようです。

”常識破り”をやるなら徹底的に


最近では、同じような手法で成功した「パラノーマル・アクティビティ」というホラー映画がありました。

こちらも海外でのマーケティングは成功していましたが、日本での広報は随分大々的に、「怖かったー!」と見たあと涙する観客たちの嬉しそうな姿を連日放送し、なんだか全然緊迫感やコンセプトが伝わらなかったのを覚えています。

パラノーマル・アクティビティ [DVD]/ケイティ・フェザーストーン,ミカ・スロート
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従来のやり方とは逆張りの方程式で勝負する際には、そのコンセプトをその映画に関わる人物みんなで共有し、ズレや漏れがないように徹底するのが鉄則。

大した製品やサービスでなくてもマーケティングによって大ヒットする例があるように、良いサービスや製品そのもののコンセプトがマーケティングによってぶち壊されてしまうということもあるはずですよね。

ホラー映画のようにコンセプトがはっきりしていて、さらにその裏にストーリーを繋いでいくことができるサービスでは、マーケティングが持つ役割や効果についても分かりやすいケースが多いと発見。

個人的にホラー映画は苦手ですが、常識破りなマーケティングをするために学べることも多そうです。

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