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杜撰だった毎月勤労統計

 新年を迎え、御代替わりの輝かしい一年のスタートを切ったが、政府・厚生労働省は重苦しい雰囲気に包まれている。国の重要な基幹統計である、「毎月勤労統計」に不備が見つかったためである。本来は500人以上の企業の全数調査であるべきところ、東京都内では長年にわたり3分の1ほどの抽出調査を行ってしまったという。

 抽出調査にするならば総務省統計局に届け出なければならないが、それを怠り事実を隠してきたこと、また大企業が漏れていたために、実態よりも給与水準が過少に出てしまうという問題が起きた。またこれを基にした失業保険や労災保険など、12種類ほどの給付や手当てが少なく払われていた。この影響を受けた国民は2000万人にも上り、約800億円の予算修正を余儀なくされた。

 影響を被った国民の皆様にはご迷惑のかからぬよう、いち早く給付の補填をしなければならない。さらには国内総生産(GDP)をはじめとする経済統計の信頼性も損ないかねず、是正後の数字をできる限り早く公表して、信頼の回復に努めなければならない。

 「無謬性」を看板に掲げる我が国の官僚組織の中で、なぜこのようなことが起こってしまったか。昨年から続いた中央省庁幹部の不祥事と同様、公務員としての規律や自覚の箍が緩み始めているのかも知れない。また今回の厚労省の件は、業務が過大で人手が十分に充てられない状況のもと、基幹統計は外注しないで自前でやろうとしたことが仇になったのかも知れない。外注していればこのような過ちはなかったかもしれないが、言い訳は通用しない。

 2001年の橋本行革の結果、官邸や総理のリーダーシップは効きやすくなったかもしれないが、特に内閣府と厚労省の業務の肥大化が著しくなった。このことも本件の背景にはあるようだ。自民党行革本部においては、数年前からこのような肥大化を是正し、省庁の再々編を検討しているが、なお時間がかかると思われる。

 やはり当面はガバナンスの徹底と綱紀粛正を標榜して、再発の防止に努めなければならない。また12年前、同じ厚労省を舞台にした「消えた年金問題」を切っ掛けとして、統一地方選、参議院選挙で自民党が大きく後退して、第一次安倍内閣が退陣に追い込まれたという悪夢を再現してはならない。

 かつて我が国では「官僚は一流、政治は三流」と揶揄され、政治がおかしくなっても官僚がしっかりしていて、日本の危機を救ってきたと言われた時代があった。しかし今や、政治がしっかりして、官僚組織を監視することが、とても重要になってきている。

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