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気合だけかな地銀経営

日経1面の連載記事に「地銀波乱」がある。今日が2回目、興味深く読んでいる。地方銀行の利益水準が低空飛行を続け、このままゼロ金利が続けば経営困難の事態も想定される。かつての地方の殿様はどうなるのか。金融機関をとり巻く政策が正しかったのか。

奈良県の地方銀行は南都銀行。圧倒的な地位を築いていた。大学を卒業する時点で、就職先候補として南都銀行があった。転勤もないし「いいな」と思った。株式投資をしていないので候補から外れたのだが。

その南都銀行、会社四季報を見ると、現時点の時価総額が1000億円に届かない。中小企業とまでは言わないものの、もはや地方の殿様と言うには寂しい状態である。実のところ、地銀(相互銀行から地銀になったのではなく、昔からの地銀)で時価総額1000億に届かないところはいくつもある。

都銀の経営が苦しい理由は超金融緩和によるゼロ金利だけではない。マクロ経済の視点から日本経済を観察すると、次の特徴が浮かび上がる。

企業の場合、既存の事業が投資資金の回収時期にある。つまり成熟段階にある。
日本国内の成長機会が乏しい(企業自身、成長機会を作れていない)。
以上から、企業に資金が余り、資金調達が不要な状態になっている。
日本国内では、東京に企業が集中している一方、地方には活力が乏しい。
個人はそもそも資金余剰であり、全体としては資金を供給する側にいる。
このように概観すると、海外に展開できず、日本の地方で金融業務を展開し、それを続ける多くの地銀の経営環境はきわめて厳しい。

日本国内で唯一と表現していい資金の借り手、政府は、ゼロ金利政策の恩恵を受け、ほとんど金利を支払わずに資金を調達できる。地銀にとって、10年国債、20年国債と投資期間を長くしないかぎり、わずかな金利差でさえ獲得できなくなった。将来、金利が上昇すれば、そのわずかな金利差は価格の下落によってすぐさま吹っ飛んでしまう。

そんな中、中小企業を育成するためにもっと資金を貸し出せとか、今日の日経にあったように金融危機時に中小企業の審査を長期的な視点で見ろ(経営を支えろ)とか、要するに「地銀、もっとがんばらんとアカンやろ」と気合をかけ続けられた。その気合の結末の1つが、スルガ銀行の事件だったのではなかろうか。

今日の日経には「(地銀の不良債権が増えたのは)銀行も企業も再建計画をよく吟味せず・・」と書いてある。いかにも当事者である銀行と企業だけが悪者のようだが、本当なのか。コヒマやインパールで見たように、指揮監督者が現場を知らず、「気合が足らん」、「もっと頑張れば攻略できるはずだ」と、現実離れした命令を出していたのではなかろうか。

中小企業の育成、地方経済の活性化、そのためには地銀の積極的な貸出が鍵を握る、企業に対する目利きが必要・・。いかにもきれいな図柄である。政治家が好き好みそうだ。第二次世界大戦を正当化するためのキャッチ、大東亜共栄圏に似ているような。
しかし、最初に見た日本経済のマクロ的な状況からすれば、無理難題に近い。本当に気合にしか頼るものがない。よしんば当面は気合が重要だとしても、後方支援、つまり政策が積極的に後押ししなければどうしようもない。そんな地方や地銀を向いた政策がどれだけあったのだろうか。

すでに地銀に就職した若手の戦線離脱が始まっているらしい。金融に関する知識は重宝がられるから、インパール作戦のように戦線離脱が死屍累々につながることはない。しかし、地銀に取り残された者はどうなるのか。

金融行政の大きな転換が求められているようだ。そのためには現実を客観的に評価する必要がある。地銀の経営統合だけではどうしようもないだろう。

なお、以上は一般論としての地銀のことである。元気な地銀があることも書き添えておかねばならない。

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