- 2019年01月21日 09:15
千葉から横浜に「旅行」する大学生の感覚
1/2いま「若者の旅行観」に大きな変化が起こりつつあります。長年、若者の消費動向を追いかけているサイバーエージェント次世代研究所・所長の原田曜平さんは「若者が旅行をしない、という常識にとらわれないほうがいい。若者の旅行観は確実に新しい芽が出始めている」といいます――。(全3回、第1回)
■「旅行には行くほう」だという9人の現役大学生の本音
撮影=プレジデントオンライン編集部サイバーエージェント次世代研究所・所長の原田曜平さんは、現役の高校生・大学生たちと日常的にコミュニケーションをとり、共同作業をすることで、若者の価値観やトレンド、それらの時代ごとの微細な変化を、15年以上にわたって定点観測してきました。
原田さんは、ここ数年で、最近の若者、特に大学生の「旅行観」に大きな変化が見られるようになっていると指摘します。それらを明らかにすべく、「旅行には行くほう」だという9人の現役大学生に集まってもらい、若者の旅行観について議論しました。
現代の若者は旅行に何を求め、旅でどんな消費活動を行っているのでしょうか。座談会の模様を3回にわけてお届けします。第1回は「旅のイメージ」についてです。
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<座談会の参加メンバー>正田郁仁 法政大学 経営学部 2年
神谷菜月 明治大学 経営学部 3年
須田孝徳 早稲田大学大学院 商学研究科 修士1年
牧之段直也 早稲田大学 政治経済学部 3年
小野里奈々 法政大学 社会学部 2年
高貫遥 明治大学 経営学部 3年
今野花音 上智大学 文学部 3年
佐藤美梨 慶應義塾大学 文学部 2年
浅見悦子 青山学院大学 地球社会共生学部 3年
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■海外旅行に行くかどうかは「親」が鍵
【原田】今年7月にJTB総合研究所が発表した調査結果(※)によると、ここ数年で、今まで海外離れと言われていた若者たちが、少しずつ海外旅行に行くようになってきているんだけど、みんなはどう思う? 景気が良くなって、バイト代が上がってきているからかな?
※年代別平均旅行回数を2000年と2017年で比較した場合、19歳未満の男性は年1.0回から1.3回、19歳未満の女性は1.3回から1.4回と増加している。
【浅見】私のまわりの大学生はけっこう海外旅行してますよ。
【高貫】留学する子もまわりで増えてきたし、「海外に行く若者が減っている」と言われても、実感はあまりないですね。
【原田】マクロデータで見ると、まさに僕の世代、現在アラフォーであり、就職氷河期世代でもあった「ポスト団塊ジュニア世代」が、最も「海外に行く若者」だったんだよね。それからさらに景気が悪くなり、海外に行く若者がずっと減っていったんだけど、この数年で少し若者の海外離れが復活してきているんだ。
もっと正確には、全員が海外に行こうとする時代から、行く人と行かない人が明確に分かれる時代に完全に変わった、と言えるかもしれない。都市か地方か、所得が多いか少ないか、海外に行くモチベーションが高いか低いかで、若者の「海外経験格差」が非常に大きくなっているんだと思う。
東京では偏差値が「MARCH」クラス以上の大学生は、年を追って海外留学に行く子が増えている印象がある。今回のみんなのようなある程度高学歴な若者の実感からすると、「若者の海外旅行離れ」といわれても実感がないんだろうね。
【神谷】確かに私の体感だと、海外へ行く子はよく行くけど、行かない子はパスポートすら持っていません。これはいい大学の学生の中でも二極化していると思います。
また、よく海外へ行く子の中でも、特に海外に対するモチベーションが高く、海外旅行に行くためにがつがつバイトしているのは、地方からの上京組に多い気がします。そして、その中でもひとりで海外に行く子は決まって上昇志向が異常に強い(笑)。
【原田】この前、早稲田大学の総長とお話していたら、「早稲田の学生の70%が東京近郊出身になっている。多様性が減っている」と嘆いていた。そして、他の東京の大学でもこうした傾向になっているらしい。戦後、日本の政治の失政で、あらゆるものを東京に一極集中させてきたので、人口減少社会である今でも東京の人口は増え続け、今、代々東京出身の江戸っ子の若者が非常に多くなっている。現在41歳の僕の時代の慶應大学は地方出身者が周りにごろごろいたけど、今はだいぶ少なくなっているようだね。
代々東京出身者が増えるということは、「東京の田舎化」が進んでおり、東京において地元愛の強い「マイルドヤンキー」が急増している。マイルドヤンキーだらけになっている東京より、こんな時代にわざわざ地方から上京してくる若者の方がモチベーションが高くなっているのかもしれないね。
【佐藤】友達で、かたくなに「海外旅行には絶対行かない」って子がいて、行くのは大学の卒業旅行だけ。夜勤のバイトもしてる子なので、単純にお金も興味もない。
【高貫】お金を貯めたいから行かない、という人は結構多いのでは。
【原田】昔はお金なくても車を買ったり、海外に行ったりしていたのが日本の若者像だったんだけど、今の若者は無理をしなくなっているよね。
■「チル」という価値観で生きている今の若者
【原田】あと、前提として、平成不況やデフレで日本のサラリーマンの給料はこの15年くらいで大体60万円くらい下がっているから、両親と同居している学生も以前より金銭的に余裕がなくなり、「海外旅行離れ」につながっている点は押さえておくべき。「海外に興味がないんじゃなくて、金がねーんだよ!」と言いたい若者は、かつてより多くなっているのは事実。ただし、この数年で景気回復と人手不足、さらにLCC(格安航空会社)の普及などで、その前提に変化が見られるようになってきている。
撮影=プレジデントオンライン編集部
【今野】私は上智大学なので、周りに海外志向の子が多くて海外に行きまくっています。特に男子より女子のほうが海外に行っている印象です。女の子のほうが親に甘やかされていて、親に旅行費を払ってもらってる子が多い。男子のほうがそれが少ないから、男子は海外より国内に行っている印象です。
【神谷】海外に行かないタイプは、面倒くさがりの子が多い印象かな。パスポートを取るのだって結構面倒くさいですしね。
【原田】今の若者を表すキーワードの一つに「チル(まったりする)」というのがあるね。最近の学生は、「ネフリでチルってる(ネットフリックスを見ながらまったりしている)」なんて言葉をよく使う。「チル」という価値観で生きている今の若者にとって、海外旅行の手続きや事前準備は基本的には面倒でしかないんだろうね。
【高貫】小さい頃から親に海外へ連れて行ってもらっていた子ほど、今も行っている印象です。
【原田】それは統計的にも本当にそうらしい。今日のメンバーも、小さい頃から親に海外に連れて行ってもらっていた人がきっと多い。2000年代の初頭から「格差」という言葉がキーワードになったように、出身世帯のさまざまな格差が、子供に与える影響が非常に大きくなっている。
現在アラフィフのバブル世代から現在アラフォーのポスト団塊ジュニアくらいまでは、そもそも親に海外に連れて行ってもらった人の比率が必ずしも多くないから、親に海外に連れて行ってもらったかどうかではなく、多くが個人の動機によるものだった。
が、今は個人の動機が減り、親が小さい頃に海外に連れて行ったかどうか、という「海外旅行の原体験」が非常に大きな影響力を持つようになっている。
また、特に今の若い人は、昔と比べて親とすごく仲が良くなってきているので、より親の影響を受けるようになっている。例えば、『ママっ子男子とバブルママ』(PHP新書)という本にも書いたんだけど、今の若年男子が化粧水を使い始めたきっかけって、母親からのススメが一番多いんだよね。
僕らの頃は、親に黙ってアジア各国をバックパックで放浪する、なんて若者がたくさんいたけど、今の若者たちは親と何でも話し合える子が多いよね。
【高貫】自分ひとりや友達とは行かないけど、家族と年に1回は行くという子もいますね。
【正田】それこそ、僕は年1で家族旅行してますよ。国内ですけど、箱根とか横浜のインターコンチネンタルホテルとか。
【須田】箱根は僕も家族旅行で行きました。
【神谷】この8月に家族と熱海に行きました。
【浅見】私も家族旅行はよくしますね。ここ最近だと箱根とか群馬の万座温泉とか。
【原田】大学生になっても普通に家族旅行しているんだね。僕なんか今でも恥ずかしくて母親と2人で外を歩くのが苦手だけどなあ。
やっぱり、今の若者は、親と仲がいいんだね。ある意味うらやましい。旅行業界は少子化と若者の旅離れにより、中高年ばっかりをターゲットとして見るようになっているけど、実は「子供や若者を撒き餌とした親」という市場が急拡大していることに気づくべきだよね。
【小野里】私は家族全員ではないですが、母と二人で行きますよ。
【原田】『ママっ子男子とバブルママ』にも書いたけど、特に母親と子供の仲が良くなっているようだね。女子だけでなく、お母さんと二人で旅行に行く男子も増えているみたい。どうやらお母さんと二人でも、周りから変な目で見られる、ってことはなくなっているようだね。僕なんか41歳の今でも母親と2人で歩くのは恥ずかしいけどね。
■非日常の写真が撮れたら、近くても「旅行」
【原田】友達同士だと、国内旅行はどの辺に行くの?
撮影=プレジデントオンライン編集部
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