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- 2019年01月20日 11:25
総務省と通信業界の仁義なき戦い?大手通信キャリアへの総務省の提言から業界に横たわる問題点と消費者のメリット・デメリットを考える
2/2■メリットばかりの提言ではない
ここで重要なのは、その指導や要請が正しい方向を向いているのか、という点です。砕いて言えば、消費者にどんなメリットがあるのかということです。例えば定期契約時の違約金発生にまつわる問題点は、これまでは契約満了月であるにも関わらず違約金が発生していたという点です。違約金を回避するためには満了月の月額料金を支払わなければならず、結果としてどのような解約であっても料金が発生する仕組みとなっていたことから改善が求められていたもので、これは純粋に消費者保護の観点と言えるでしょう。
しかし、17日に緊急提言された完全分離プランの義務付けの場合は少し状況が異なってきます。
この提言の根拠となっているのは、端末代金と通信料金を長期の定期契約(割賦契約)を前提としてセット販売することが、消費者の流動性を阻害し企業間の競争が抑制されてしまう点や、不透明な支払総額の設定が容易であることから端末代金が過剰値引きされていたり(不当廉売、不当競争価格の設定)、端末代金の値引きを隠れ蓑として通信料金部分が高止まりする危険性があるという点です。
この点を見るならば消費者には十分なメリットがあるように考えられますが、一方で端末とのセット販売であるからこそ受けられるサポート体制や保障があるのも事実です。
料金体系が完全分離化されれば端末代の大幅値引きは当然無くなり、新品端末の販売総量は大きく落ち込むことが予想されます。それに伴い中古端末市場やSIMフリー端末市場がさらに活気づくもことも予想されますが、通信キャリアが販売していない端末は保証ができず、また故障の際の修理もできません。使い方の案内なども現在は無料で行っているキャリアショップがほとんどですが、そういったサポートも無くなるか、有料となる可能性があるのです。
確かに通信料金の透明性は確保され、端末販売についても正しい市場競争が始まるものと思われますが、過去を振り返れば20年前から通信キャリアのインセンティブを前提とした1円販売や0円販売といった「ばらまき商法」で急成長し、現在でも大幅な値引きと通信キャリアからの補填によって成立している携帯電話市場およびその販売店は大打撃を被ります。少なくとも現在の市場構造は大崩壊を起こすでしょう。
端末代金は大幅に値上げされ、販売店が通信キャリアから分離されることで通信プランを選択する手間が増え、端末の保証は薄くなり、サポートは有料化し、時にはサポート対象外の端末と言われて自己責任で片付けられる事例も増えるのです。携帯電話やスマホに関する知識の薄い人々やITリテラシーの低い人々にとって、これからの通信端末は非常に扱いづらい道具となる可能性があります。
■消費者たる私たちにできること
このように、総務省が提言する項目の多くには常にメリットとデメリットが存在します。例えば「通信料金が4割安くなる」などという文字だけを見れば誰でも喜んでしまうところですが、そのカラクリ(仕組み)の部分を知ることが重要なのです。過去を振り返ってみても、日本の携帯電話市場は端末の0円販売や格安販売によって急成長し、ガラパゴスケータイ(ガラケー)などと言われるほどの進化を遂げました。またiPhoneの普及についてもソフトバンクが格安で販売を行ったことが大きな要因の1つであったことは間違いなく、世界的なスマホへのパラダイムシフトへ乗り遅れることなくガラケーから移行できたことは幸運だったとさえ思うところです。
販売施策や収益構造で多くの歪みを抱えている通信業界は、今後どのように修正され健全な市場競争を模索していくのか、注意深く見守る必要があります。時には消費者の立場として施策へNOを突きつける必要もあるでしょう。しかし、通信は絶対に必要不可欠な生活インフラなのです。
みなさんもぜひ、端末代金と通信料金が分離された時のことを想定し、自分で端末を選び通信料金プランを選択するだけの知識があるのか確認してみて下さい。道具を扱うのは自分自身です。道具に対する正しい知識を身につける良い機会かもしれません。






