記事

JOC竹田会長"贈賄疑惑"は仏の報復なのか

1/2

■不正を全面否定する文書を読み上げ、すぐに退席

わずか7分の記者会見には唖然とさせられた。国内外の報道機関70社、記者やカメラマンら140人を集めながら、一切質問に応じずに終わらせてしまう。集まった報道陣の背後に多くの読者や視聴者がいることを考えないのか。記者会見によって社会に訴える術があることを知らないのだろうか。

東京五輪の招致活動をめぐる不正疑惑で1月15日、当時の招致委員会理事長だった竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)会長(71)が東京都内で記者会見した。フランスの検察当局は、竹田氏が贈賄に関与したとの容疑で本格的捜査に乗り出している。これに対し記者会見を開いた竹田氏は、不正を全面否定する文書を読み上げただけで、そのまま会場から姿を消してしまった。文書は竹田氏の一方的な言い分だった。

この日、ニュース番組では、報道陣から「質問を受けて下さい」「なぜ答えないのですか」という声が次々と上がって騒然とする会見場の様子を放送していた。

2019年1月15日、2020年東京五輪・パラリンピック招致に絡む贈賄疑惑問題で、記者会見する日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長。会見は7分で打ち切られた。(写真=時事通信フォト)

■「7分会見」の竹田氏は甘くて愚かだ

実は、記者会見直前の15日未明にJOC広報からメディアに「フランス当局が捜査中なので質問を控えてほしい」という内容のメールが届いていた。さらに会見でも再度、同様の内容が告げられた。

質疑応答を行わない旨は、事前に通知されてはいた。とはいえ、たった7分で会見を打ち切るのは非常識だ。捜査中だから対応できないというのは逃げの常套句だ。なぜ、きちんと説明責任を果たそうとしないのか。これでは世論の反発を買う。立場を悪くするだけである。日本国内だけではなく、世界が注目している。国際世論は国内の世論以上に手厳しい。「旧皇族で明治天皇のひ孫」という血筋に甘えたのか。竹田氏は甘すぎる。

せっかく大勢の報道陣が集まったのだから、それをテコに自らの正当性を伝える絶好のチャンスだった。きちんとアピールできれば、世論が味方に付いてくれたかもしれない。竹田氏は愚かだった。

■「フランスの報復説」が浮上しているが……

冒頭部分でフランスの検察当局が本格的捜査を始めたと書いたが、フランスでは検察の予備的捜査を経た後に重大な事件と判断されると、今度は判事が公判前に自ら捜査する「予審」という手続きに入る。判事はこの予審を経て容疑者を刑事裁判の被告として起訴するかどうかを決める。

フランスの有力紙ルモンドなどによると、フランスの検察は昨年12月10日に予審の手続きに入った。竹田氏には東京への五輪招致が決まる直前、日本円に換算して2億3000万円の不正なお金が動く贈収賄事件に関与したとの容疑がかかっている。

そこで浮上しているのが、フランスの報復説である。日産自動車のカルロス・ゴーン前会長に対する日本の検察の捜査に対し、フランスの検察当局が反発して竹田氏を血祭りに上げようと画策しているとの見方だ。

■捜査協力を求めた相手国の邪魔をするとは考えづらい

しかしこの報復説は筋違いで、間違っている。

なぜなら本格的捜査の予審手続きに入ったのは、贈収賄という強い事件性を認識したからだ。司法制度が確立した国であれば、本格的捜査に着手するは当然だ。

フランスの検察当局が東京五輪招致疑惑の捜査に乗り出したのは、遅くとも2016年である。ゴーン氏が逮捕されたのは昨年11月だ。フランスは3年という長い時間をかけて疑惑解明の捜査を続けてきたわけで、ここにきて急に捜査に着手したわけではない。

しかも2017年2月には、東京地検特捜部がフランスの検察からの捜査共助の要請を受け、竹田氏に対して事情聴取を行っていたことが判明している。協力を求めた相手国の捜査機関の足を引っ張るような行為を先進国のフランスがするだろうか。フランス政府は反日感情を煽る韓国政府やしたたかな外交を展開するロシア政府とは違う。

最近、フランス政府は自国の大手自動車メーカーのルノーに対し、会長兼最高責任者(CEO)にとどまるゴーン氏を解任するよう求めたという。日本の検察の捜査にフランス側が理解を示した結果の動きだと思う。

注意しなければならないのは、フランスと日本の司法制度の違いである。フランスでは民間同士の賄賂に関しても贈収賄罪が成立する。そこがJOCにとって大きな落とし穴となる可能性が強い。

■2億3000万円で開催地を決めるための票を買収か

そもそも竹田氏に対する不正疑惑は、どこから火が点いたのだろうか。その導火線をたどってみよう。

これまでの報道を総合すると、端緒はロシアの組織ぐるみのドーピング問題だった。フランスの検察当局は2015年にセネガル人で国際陸上競技連盟(IAAF)前会長のラミン・ディアク氏とその息子がドーピングを黙認する代わりに多額の現金をロシア側から受け取っていた容疑で捜査を始めた。

IAAFの本部がモナコにあったことなどからモナコと密接な関係にあるフランスの検察当局が捜査を担当。その捜査の過程で東京五輪の招致疑惑が出てきた。ラミン氏は日本が招致活動を行っていた時期、国際オリンピック委員会(IOC)でかなり力のある委員だった。

フランスの検察当局は、竹田氏が理事長を務めていた東京五輪招致委員会が2013年、シンガポールのコンサルタント会社に2億3000万円を支払い、その一部がラミン氏側に渡り、東京でのオリンピックの開催を決める票の買収に使われたとみている。東京開催が決まったのはこの2013年だった。

竹田氏はコンサルタント会社と契約して、2億3000万円を送金したことを認めてはいるものの、「契約は一般的なものだ」と正当性を強調。2016年9月1日には、JOCが調査チームの報告書を公表し、「契約に違法性はない」と結論付け、不正疑惑を否定した。竹田氏は2017年と昨年12月10日の計2回、フランス検察当局から事情聴取を受けている。

今年1月15日の7分記者会見も、この報告書に基づいて自らの正当性を主張するものだった。

あわせて読みたい

「JOC竹田会長の贈賄疑惑」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    即位の礼 要人もどよめいた奇跡

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  2. 2

    昭恵夫人にドレスコード違反の声

    女性自身

  3. 3

    文氏低迷でGSOMIA維持派が台頭か

    高英起

  4. 4

    竹中平蔵氏 借金1000兆円は煽り

    PRESIDENT Online

  5. 5

    モテる男性が結婚繰り返す残酷さ

    NEWSポストセブン

  6. 6

    NHK大河が低迷 N国の追及を警戒?

    渡邉裕二

  7. 7

    収入ギリギリの住宅を買うリスク

    長谷川高

  8. 8

    佳子さまの十二単姿に「麗しい」

    女性自身

  9. 9

    よしのり氏「皇統の危機が心配」

    小林よしのり

  10. 10

    日本が財政破綻へ? カギは少子化

    永江一石

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。