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- 2011年08月12日 23:28
東海テレビ放送事故の不思議2
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前回のエントリーを上げたあと、東海テレビが簡単な検証番組を放送しているYouTubeのリンクを教えて貰ったので、見てみた。厳密に言えば、番組制作者である東海テレビ自身がアップロードしたものではなさそうなので、この動画は違法アップロードであろう。いくら相手に落ち度があるとはいえ、ネット側がなんでもやっていいということにはならない。MIAUの代表理事という立場上、こういう動画を参考にエントリーを書くという事に躊躇はあるが、事故再発防止の役に立つかもしれないという点で、社会的利益はあるだろう。今回はそちらの方を優先させるべきと判断した。
検証番組中では、前日に放送で使用するテロップ類をタイムキーパー(TK)がチェックすることになっているようである。そしてCG担当者が悪ふざけで作ったものを、TKが訂正の指示を出したものの、担当者は訂正の依頼だと受け取らなかった、とある。
この部分だけでもいくつか説明が必要なようだ。テロップをCG(Computer Graphics)と呼ぶことに対して、いちいちテロップをMayaやLightwaveで作るのか、という指摘があった。MayaやLightwaveは3DCGを制作するためのソフトであるが、2Dを制作するペイント系、ドロー系のソフトで作ったグラフィックも、CGと呼ぶ。実は昨日のエントリーの下書きではその説明も書いていたのだが、さすがにそれはわかるだろうと思って削除してしまった。読者に配慮が足りなかったようだ。申し訳ない。
80年代から90年代までは、このようなテレビ用のテロップは、クオンテルのPaint Box、Harry、Harrietといった装置で作っていた。これらは動画を下敷きにしてその上にぐりぐりとフリーハンドで絵が描ける装置である。たぶんPaintboxを世界的に有名にしたのは、AhaのTake on Meのプロモーションビデオである。曲もいいので、興味のある人は見てみるといいだろう。
しかし現代はこのような高価な装置を使うまでもなく、Windows PCで十分作れるようになった。CG担当者は50代というから、筆者よりもさらに年上である。筆者が業界入りしたときにはCGなどという職種は存在しなかったので、のちにこの職業に転職したということだろう。おそらくは元々セット美術さんか、印刷会社のデザイナーか、写植屋さんだった方ではないだろうか。最初からテレビ業界だったとすると、相当の大御所である。
一方TKという職種は、あまり説明されることが少ない。タイムキーパーは生放送などのときに、番組の時間的な進行具合をチェックし、時間ぴったりに番組が終われるよう管理する仕事である。台本には大まかな進行時間が書かれており、それに対して現場がどれぐらい時間的に押しているか、あるいは巻いているかを計算し、ディレクターに伝える。ディレクターはそれに応じて、次のコーナーを巻いたり伸ばしたりして、放送終了時間にめがけて時間調整していく。
TKさんは、伝統的に女性である。まあ広い世の中、男のTKさんも存在するかもしれないが、寡聞にも筆者はお会いしたことがない。通常TKさんは局員ではなく、完全なフリーランスか、映像専門の派遣会社からの派遣である。どうやってTKさんという職業になるかというと、筆者の知る限り「弟子入り」が最短コースだ。最初は先輩TKさんにくっついて雑用をやりながら仕事を覚え、テレビ局スタップに顔を覚えて貰う。仕事を覚えて1人でできそうだ、というところまでになれば、先輩TKさんが持っている番組を「のれん分け」してもらい、独り立ちする。技術者というよりは、メイクさんやスタイリストさんに近い職業である。
検証番組の内容からは、おぼろげながらスタッフ間の人間関係が把握できる。東海テレビでは、テロップの確認は前日にTKが行なうという。しかしこのワークフローは、問題がある。普通このような演出上の確認ごとは、ディレクターか、もしくはディレクターの下で働くAD(アシスタントディレクター)の仕事である。そのような業務をTKさんに振っていたということは、おそらくこの番組にはADが付いていないのではないか。人手が足りないので、TKさんにADの代わりをさせているのかもしれない。
TKさんは局員ではなく雇われている立場なので、そういう「○○ちゃんこれもやっといてよー」というリクエストに弱い。これは連綿と続く、女工哀史的な話である。今は女性のADやディレクターも結構多いが、昔はテレビ関係の職種で女性がほとんどいなかったために、TKさんが女性特有の気を回す細かいことをやる立場になりがちであった。まあ逆にベテランTKさんになると、遅れてきたディレクターの代わりに本編の編集の指揮を執るような豪傑もいたが、本来はADがやるような仕事、例えばコーヒーを注文するとか灰皿を変えるとか、そういうこともなんとなーく女性であるという理由だけでやってきたという歴史がある。職種と職種の関係を円滑につなぐ役目、というのが、テレビの現場で働く唯一の女性に求められてしまった結果である。
50過ぎのベテランCG屋さんと女性TKさんでは、立場的にはTKさんのほうが弱い。悪ふざけを注意するにも、かなり気を遣った言い回しをしないといけなかっただろうということが想像できる。それがゆえに、訂正の依頼だと受け取られなかった可能性は高い。きちんと演出サポートの役割を担うADを使わず、TKさんを便利に使っていた番組スタッフの構造に、まず問題がある。
検証番組中では、前日に放送で使用するテロップ類をタイムキーパー(TK)がチェックすることになっているようである。そしてCG担当者が悪ふざけで作ったものを、TKが訂正の指示を出したものの、担当者は訂正の依頼だと受け取らなかった、とある。
この部分だけでもいくつか説明が必要なようだ。テロップをCG(Computer Graphics)と呼ぶことに対して、いちいちテロップをMayaやLightwaveで作るのか、という指摘があった。MayaやLightwaveは3DCGを制作するためのソフトであるが、2Dを制作するペイント系、ドロー系のソフトで作ったグラフィックも、CGと呼ぶ。実は昨日のエントリーの下書きではその説明も書いていたのだが、さすがにそれはわかるだろうと思って削除してしまった。読者に配慮が足りなかったようだ。申し訳ない。
80年代から90年代までは、このようなテレビ用のテロップは、クオンテルのPaint Box、Harry、Harrietといった装置で作っていた。これらは動画を下敷きにしてその上にぐりぐりとフリーハンドで絵が描ける装置である。たぶんPaintboxを世界的に有名にしたのは、AhaのTake on Meのプロモーションビデオである。曲もいいので、興味のある人は見てみるといいだろう。
しかし現代はこのような高価な装置を使うまでもなく、Windows PCで十分作れるようになった。CG担当者は50代というから、筆者よりもさらに年上である。筆者が業界入りしたときにはCGなどという職種は存在しなかったので、のちにこの職業に転職したということだろう。おそらくは元々セット美術さんか、印刷会社のデザイナーか、写植屋さんだった方ではないだろうか。最初からテレビ業界だったとすると、相当の大御所である。
一方TKという職種は、あまり説明されることが少ない。タイムキーパーは生放送などのときに、番組の時間的な進行具合をチェックし、時間ぴったりに番組が終われるよう管理する仕事である。台本には大まかな進行時間が書かれており、それに対して現場がどれぐらい時間的に押しているか、あるいは巻いているかを計算し、ディレクターに伝える。ディレクターはそれに応じて、次のコーナーを巻いたり伸ばしたりして、放送終了時間にめがけて時間調整していく。
TKさんは、伝統的に女性である。まあ広い世の中、男のTKさんも存在するかもしれないが、寡聞にも筆者はお会いしたことがない。通常TKさんは局員ではなく、完全なフリーランスか、映像専門の派遣会社からの派遣である。どうやってTKさんという職業になるかというと、筆者の知る限り「弟子入り」が最短コースだ。最初は先輩TKさんにくっついて雑用をやりながら仕事を覚え、テレビ局スタップに顔を覚えて貰う。仕事を覚えて1人でできそうだ、というところまでになれば、先輩TKさんが持っている番組を「のれん分け」してもらい、独り立ちする。技術者というよりは、メイクさんやスタイリストさんに近い職業である。
■女工哀史
検証番組の内容からは、おぼろげながらスタッフ間の人間関係が把握できる。東海テレビでは、テロップの確認は前日にTKが行なうという。しかしこのワークフローは、問題がある。普通このような演出上の確認ごとは、ディレクターか、もしくはディレクターの下で働くAD(アシスタントディレクター)の仕事である。そのような業務をTKさんに振っていたということは、おそらくこの番組にはADが付いていないのではないか。人手が足りないので、TKさんにADの代わりをさせているのかもしれない。
TKさんは局員ではなく雇われている立場なので、そういう「○○ちゃんこれもやっといてよー」というリクエストに弱い。これは連綿と続く、女工哀史的な話である。今は女性のADやディレクターも結構多いが、昔はテレビ関係の職種で女性がほとんどいなかったために、TKさんが女性特有の気を回す細かいことをやる立場になりがちであった。まあ逆にベテランTKさんになると、遅れてきたディレクターの代わりに本編の編集の指揮を執るような豪傑もいたが、本来はADがやるような仕事、例えばコーヒーを注文するとか灰皿を変えるとか、そういうこともなんとなーく女性であるという理由だけでやってきたという歴史がある。職種と職種の関係を円滑につなぐ役目、というのが、テレビの現場で働く唯一の女性に求められてしまった結果である。
50過ぎのベテランCG屋さんと女性TKさんでは、立場的にはTKさんのほうが弱い。悪ふざけを注意するにも、かなり気を遣った言い回しをしないといけなかっただろうということが想像できる。それがゆえに、訂正の依頼だと受け取られなかった可能性は高い。きちんと演出サポートの役割を担うADを使わず、TKさんを便利に使っていた番組スタッフの構造に、まず問題がある。



