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空前ブーム!独自に進化した日本サウナは海外と何が違うか - 日本×フィンランド・サウナ頂上対談

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昨今、空前のサウナブームが巻き起こり、改めてサウナが注目を浴びている日本。一方、北欧に目を移すと日本から7500km離れ、「サウナ」という言葉を生んだフィンランドでも、これまでとは違うサウナムーブメントが起きているという。

これほどまでに人々を惹きつけるサウナの魅力とはなんなのか。新刊『公衆サウナの国フィンランド』の著者で、“フィンランドサウナに最も詳しい日本人”とも呼ばれるフィンランド在住のサウナ文化研究家・こばやしあやな氏と、温浴事業コンサルタントとして早くからサウナ専門家として活動する「サウナ王」太田広氏が語り合った。【構成:島村優 スカイスパ横浜MTGルームで収録】

サウナで仕事は忘れるべきか、仕事をするべきか

こばやし:フィンランド在住でサウナ文化の研究をしています、こばやしです。よろしくお願いします。

太田:太田です。よろしくお願いします。

こばやし:サウナ王というのは、どういった称号なんですか?サウナのコンペティションか何かで?

太田:「サウナ王」という呼び名は、もともとは前の会社にいた時のあだ名に由来します。当時コンサルティング会社で働いていて、仕事中に抜け出してサウナ入ったり、夜中サウナに行ったりしていたら、自然と周りからそう呼ばれるようになって。

こばやし:すごいですね。時間を見つけてサウナ。

太田:会社的に本来はダメなんですけど、頭が回転しなくなるとうまくいかない仕事なので、そういう時にサウナに行っちゃうと。

こばやし:ヨガでリセットする的な。

太田:そう、疲れたらサウナで回復して会議に出席する、といったことを毎日やっていて、毎月15~20万円くらいのお金をサウナにつぎ込んでいたら、社内表彰制度で「何か一つのことに取りくんでいる」ということで「サウナ王」として表彰されて、この呼び名が定着しました。

次の年に経営コンサルとしてテレビ出演する機会があり、「サウナ王」と名乗ってからはずっとこの肩書きを使っていますね。

こばやし:それは会社の近くの同じサウナに行っていたんですか?

太田:いえ、同じところではなく使い分けていました。大事な会議があって頭が働かないとまずい勝負の日はこのサウナ、社内の軽いミーティングだけの日はこの銭湯、という具合に。

こばやし:勝負サウナがあるんですね。

太田:他にも、アイデアが出なくなったら、部下を連れてきてサウナで会議をする、といったことをしていました。

こばやし:それはフィンランドでもよくやっています。外交官や大使が「サウナ外交」を行ったり、ビジネスマンが商談相手をサウナに連れて行って仕事の話をしたり。ただ最近のフィンランドでは、そうした習慣は「男の文化だからやめましょう」という流れになっています。

太田:日本でもそうですね。僕も人事部に怒られたことがあります。女性社員から「太田さんにサウナに連れて行かれる。会議室があるのに嫌だ」と言っていると。

こばやし:女性からしたら化粧も落としたくありませんよね。

太田:館内着も着たくないと。昔は「うるさい!」って言って連れて行っていたけど、今はさすがにもうそういうことは出来ません。ただ、私はサウナの方が様々なアイデアが浮かぶと思っています。会議室よりも、良いアイデアも出てくる気がする。

こばやし:個人的には、仕事を忘れられるのがサウナの良いところの一つなので、サウナには仕事を持ち込みたくないと思っています。これは多くのフィンランド人も同じだと思います。

ただ、その一方で、最近はフィンランドで若者を中心にサウナブームが起こっていますが、クリエイティブな職種の人が熱心に通っているという面があります。老舗公衆サウナが残る場所も、東京でいう高円寺や下北沢のような場所なんですけど、彼らに話を聞くと公衆サウナに行くとクリエイティビティが刺激されるとも言っています。フィンランド人の中でのサウナに対する考え方が変化しているのかもしれません。

サウナ王・太田広氏

日本のサウナはレジャー施設として広がった

太田:最近ではネットやSNSの影響で日本でもサウナブームが来ていますが、当時は今と比べ物にならないほど、サウナは地味な存在でした。僕も趣味がサウナや水風呂だと言うと、ちょっと変わっていると思われて。今でこそ僕も好きなんです、と言われることも増えましたけど。1990年代から2000年にかけての話ですね。当時、全国のサウナ巡りをしているのは私しかいなかった。

こばやし:「お遍路型」ですね。

太田:自分が通うお気に入りのホームサウナがある、というのが一般的でした。今はSNSで情報がつながりますが、昔はサウナに行くと地元のおじいさん、おじさんがいて「どこから来たんだよ」「地元じゃねえだろ」と言われるようなアウェー感がありました。

こばやし:今は検索サイト「サウナイキタイ」もできていますね。

太田:そう、情報が広がっているんですよ。当時はSNSどころかネットも普及していないので、例えば大阪駅で降りたら、電話帳でサウナのページを調べて一軒一軒電話するところからサウナ巡りが始まりました。

「どんなサウナなんですか?」「水風呂はあるんですか?」「温度は何度くらいですか?」などと聞いて。

こばやし:電話帳!それは大変ですね(笑)。

太田:10円玉をたくさん持ち歩いて。レンタカーにカーナビもない時代なので、地図を片手に運転して行って、いざサウナに入ってみても当たり外れがあって一喜一憂して。今は最初からネットで調べれば温度や設備が全部わかるから便利です。その分自分で見つける楽しみはなくなったかもしれませんね。

こばやし:この間、中央アジアにフィールドワークに行ったんですけど、カザフスタンとかキルギスには日本の「サウナイキタイ」のような検索サイトあって、情報は日本よりも充実しているんです。例えば、ヴィヒタ(白樺の束)が何の種類があるかとかまで書いてあるんです。

太田:それはすごいな。

こばやし:フィンランドにはないんですけど(笑)。フィンランド人にとってサウナというのは、日常にあるもので、日本人にとってのお風呂のような存在です。現代の人は毎日サウナに入るわけではないと思うんですけど、やっぱり入らないと気持ち悪い、という感覚があるようです。体もきれいになるし、サッパリする。気持ちもリフレッシュして、リラックスできる、そういう日常習慣の場所です。

フィンランド人は昔から「ストーブがあってベンチがあるサウナに入れれば良いんだ」くらいのスタンスで、サウナ室の中は何十年、何百年と変わらないんですよ。

太田:そうなんですね。

こばやし:少しくらい新しい要素があってもいいじゃないですか。サウナ室をデコレーションするとか、熱波を扇ぐパフォーマンスをするとか。でもフィンランド人は、そういうものに全く関心がなくて。最近はサウナツーリズムも盛り上がっていますが、「こんなものが観光資源になるとは思ってもみなかった」と現地の人がよく話しています。

太田:日本のサウナは、創生期にレジャー関係者が手がけることが多かったので、サウナ室が派手だったり、明るかったりするのが現在まで続く特徴です。まずサウナ室にテレビがありますからね。

こばやし:日本以外では、テレビは置いていないですよね。サウナは主に男性客を楽しませるための施設だったと思いますが、やましくはないんですよね?

太田:やましくはないですよ。ただ、サウナから出たらクラブがあってホステスがいる施設や、水着の女の子がスタッフとして働いているところもありました。ビキニの子がサウナマットを回収したり、温度を読み上げに来たり。

こばやし:なるほど。

太田:レジャーは不景気になると最初にお金が使われなくなるので、バブルが崩壊して金回りが悪くなったことのサウナ業界への打撃は大きかったですね。

こばやし:水風呂は昔からあったんですか?

太田:水風呂は戦後、サウナが日本に登場した時代からありました。

こばやし:フィンランドには水風呂はないんです。サウナの前に湖のような天然の水風呂があれば入りますけど、公衆サウナは街中だからありません。外気浴できれば良いので、特に必要もないと。日本の水風呂はどこから来たんですかね。

太田:ドイツにはサウナとセットで大きなプールがありますよね。

こばやし:そうか、その延長で水風呂が導入されたのかな。

こばやしあやな氏

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