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「台湾同胞に告げる書」40周年とASF - 澁谷 司

 今年(2019年)1月2日、北京の人民大会堂で「台湾同胞に告げる書」(1979年元旦、中国全国人民代表大会常務委員会が“台湾同胞”に「中台統一」を呼びかけた)発表40周年記念大会が開催されている。そして、習近平主席が演説を行ったが、中国共産党は、またしても台湾に対し「1国2制度」による両岸の「平和的統一」を提唱した。

 この演説の中で、「中国人は中国人を攻撃しない」としながらも「台湾への武力使用を放棄しない」と強調しているのは明らかな矛盾である。これは「中国人は中国人を攻撃しないが、台湾人だから攻撃する」との意味なのか。

 おそらく、中国人からすれば、台湾人は中国人よりも下位に存在する人間なのだろう。だから、中国人は(彼らの言う事を聞かない)台湾人を攻撃しても良いと言う意味に受け取れなくもない。

 次に、そもそも中国共産党は(馬祖・金門を含む)台湾を1日たりとも統治した事がない。それにもかかわらず、「台湾独立」は許さないと主張する(本来「台湾独立」とは、(台湾人による蒋政権の)「中華民国体制からの独立」を指す)。

 実際、台湾は中国大陸から「独立」しているのに、中国共産党が「台湾独立」を阻止するとしても、それは単なる“言葉遊び”にしかすぎない。「2つの中国」ないしは「1つの中国、1つの台湾」の存在は、紛れもない事実である。今更、中国共産党が、いくらそれを否定しても、この事実は曲げられないだろう。

 また、台湾は、中国が直接支配しているチベットや新疆・ウイグル、内モンゴルとは違う。無論「一国両制」下の香港、マカオとも異なる。周知の通り、台湾は中国共産党の支配下にはなく、民主的な政府の下、“自立的”に動いている。

 更に、習近平主席は「92年コンセンサス」(1中各表=「1つの中国」、ただし、国共がそれぞれ「1つの中国」を規定する)の存在を民進党政府は認めよ、と迫っている。だが、国共が香港で“口約束”しただけで、両党間で取り交わした文書がない。したがって、北京が台北にそれを認めよと言っても、単なる“水掛け論”で終わるだろう。

 台湾で行われた最新の世論調査(「両岸政策協会」が実施し、1月9日発表)では、「1国2制度」に反対する人は80.9%だった(賛成は13.7%)。蔡英文総統が習主席の「1国2制度」による両岸の「平和的統一」を即座に拒否したのは当然ではないか。

 さて、昨年8月来、「アフリカ豚コレラ」(ASF)が中国国内で蔓延しているが、未だ、その猛威は衰えていない。

 今年1月2日、黒竜江省でASFが発症し、7.3万頭の感染した豚が殺処分された。その後、1週間以上、中国国内でASFが発症しなかったので、ようやくASFの勢いが衰えたと思われた。ところが、10日後の12日、今度は江蘇省でASFが発生し、6.9万頭の感染した豚が殺処分されている。

 更に、翌13日、(未だASFの発症が見られなかった)甘粛省がついに“陥落”したのである。感染した豚はわずか9頭だが、その意味は決して小さくはない。これで、31省市(自治区を含む)中、24省市でASFが発症した。中国全体の省市中、77%にのぼる。

 中国当局の公式数字では91.6万頭のASFに感染した豚が殺処分されたという。仮に、この数字が本当ならば、中国の豚総数7億頭の0.13%に過ぎない。だが、実際にはもっと数字が大きい可能性が高い。

 中国国内では豚肉の価格が高騰しているが、それに引きずられて牛肉の価格も上昇している。確かに、中国人中産階層以上は、豚肉や牛肉の価格上昇は、痛くも痒くもないかもしれない。しかし、春節前、「低端人口」と呼ばれる下層の人達(7億〜8億人)にとっては、かなり痛手ではないか。

 実は、昨年12月31日、中国大陸から豚の死骸が台湾の金門島海岸に打ち上げられた。明けて1月2日、その死骸は台湾本島へ送られている。翌3日、そこからASFの陽性反応が検出されたのである。

 また、訪台した中国人客や大陸から戻って来た台湾人等が、ASFウイルス入りの餃子やソーセージを不用意に台湾島内へ持ち込もうとしている。

 いったん、ASFが台湾で蔓延したら、その被害は少なく見積もっても7000億円以上という試算がある。そこで、民進党政府は昨年12月、突然、罰金を引き上げ、ASFの流入を防ぐため厳戒態勢を敷いた。

 台湾政府が、中国政府にちゃんとした資料を公表するよう何度も請求したが、北京は無視している。やはり、中国人は台湾人を軽視している証左ではないだろうか。

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