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【森永卓郎氏書評】ベーシックインカム導入が目標とする理念

【書評】『お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?』/エノ・シュミット 山森亮 堅田香緒里 山口純・著/光文社新書/840円+税
【評者】森永卓郎(経済アナリスト)

【『お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?』/エノ・シュミット 山森亮 堅田香緒里 山口純・著】

 ベーシックインカムとは、すべての国民に無条件で一定額を給付する新しいタイプの社会保障制度だ。まだ、本格導入した国はないが、すでに世界中で社会実験が行われており、左派から右派まで、導入を支持する有識者が多い。本書は、そのベーシックインカムを全編にわたって採り上げた本だ。やわらかいタイトルがつけられ、本文も「ですます調」で書かれているので、軽い本だと思われるかもしれないが、内容は本格的だ。

 本書では、まずベーシックインカムの定義やこれまでに取り組まれてきた活動やその成果について整理している。私は、これまで数冊のベーシックインカムの本を読んできたが、本書の解説は、どこよりも丁寧で、的確で、分かりやすい。この部分だけで、本書は十分な価値を持つのだが、最大の見どころは、ベーシックインカムが何を目標にしているのか、つまりベーシックインカムを導入すると、我々の社会に何が起きるのかというところだ。

 それは、フランス革命の理念であり、フランスの三色旗が意味する「自由、平等、友愛」だという。精神的な自由と法的な平等、そして友愛に基づく経済活動だ。そのことは、いまの社会と対比すると、分かりやすいかもしれない。

 我々は、お金に縛られて生きている。お金のために自由な精神を奪われ、お金のために平等な暮らしを奪われ、お金のために利己主義になる。ベーシックインカムはその縛りから、我々を解放してくれるのだ。お金からの解放後は、自ら社会の一員としての責任を持って、社会を自らデザインしていく「社会彫刻家」になれる。つまり国民全員が、芸術家になるというのだ。

 これから、第四の産業革命で多くの仕事を人工知能とロボットが代替するようになる。失業が多発するのではないかと恐れる人が多いが、そうではない。仕事を人工知能とロボットがやってくれるなら、そのとき人間が何をすべきかを問うべきだ。その意味で本書は、未来社会への指針でもあるのだ。

※週刊ポスト2019年1月18・25日号

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