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そもそも【放射能を測る】ってどういうこと? - 佐野和美

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福島第一原子力発電所の事故以来、【放射能を測る】という言葉をテレビや新聞、雑誌などで頻繁に見かけるようになりました。
しかし、そもそも、【放射能を測る】とはどういう意味なのでしょうか?
まずはここから考えてみましょう。
(文中の※1~7は、明日3月29日公開予定の記事をお読みいただく際の参照箇所です。)

■放射能と放射線


放射能とは放射線を出す能力のことです。焚火や暖炉の火によく例えられます。火は、近くにいる時には暖かいけれど、距離が遠ざかるほどに暖かくなくなっていきます。このとき、火が熱を発する能力が「放射能」に、発せられる熱が「放射線」に当たります。

放射能の単位は「ベクレル(Bq)」、放射線の量の単位は「シーベルト(Sv)」と言います。どちらも、よく耳にする単位となりました。

「ベクレル」とは、どれくらい放射線を出す能力を持っているかを表す単位です。放射性物質の原子核は壊れる時に放射線を出します。1秒間に何個の原子の原子核が壊れて放射線を出すかという数を表すのがベクレルです。放射性物質は、原子核が壊れて別の元素に変化していくので、次第に放射線を出す能力を失っていきます。

もとあった原子の半分が壊れた状態になるまでの時間を「半減期」と呼び、ヨウ素の放射性同位体であるヨウ素131が8日、セシウムの放射性同位体であるセシウム134が2年、セシウム137が30年などとなっています。たとえば、セシウム137は最初の30年間で半分になり、さらに30年経つと最初あった量の四分の一(半分の半分)になります。

一方の「シーベルト」は、放射線による被曝量を人体への影響の大きさとして表す単位です。放射性物質が出す放射線にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線があります。その種類や放射線のエネルギーの大きさは放射性物質の種類によって決まっていて、人体への影響が異なります。また、放射性物質から離れれば影響は小さくなります。

そのため、放射能を表すベクレルだけでは、人間に対する影響の大きさはわかりません。シーベルトは人間が受けた放射線の量を人体への影響の大きさとして表現する単位で、放射線の種類や放射性物質の違い、外部被曝と内部被曝の違いなどを取り入れたものです。どんな放射線による被曝であれ、シーベルトで表される量が同じなら人体への影響は同じと考えることができます。

(実際には、シーベルトという単位で表される放射線の量にはいくつかの種類があります。ここでの説明は新聞などにもっともよく出てくる実効線量のことで、体全体への影響を表します。ほかに同じシーベルトという単位で表される甲状腺等価線量などもメディアで見ることがありますが、このふたつは違うものなので直接比較することはできません)

放射線の強さは「1時間当たり何シーベルト(Sv/hと書きます)」で表されることが多く、これは、その強さの放射線を1時間浴びるとそれだけの放射線量になるという意味です。30分しか浴びなければ放射線の量は半分ですし、2時間なら2倍になります。このSvとSv/hの違いは、特に原発事故直後のメディアでは頻繁に混同されました。

■測るものが違えば装置も方法も違う


放射能を測りたいのか、放射線の強さを測りたいのか、被曝量を知りたいのかなど、目的によって、測る装置や方法が違ってきます。

昨年の3月11日の事故以降、それまで放射線とは無縁だった多くの人が、小さな放射線測定器を手にしました。その多くはガイガー・カウンターと呼ばれる簡易装置で、放射線を検出する部分にGM管(ガイガー・ミュラー管)を用いているためその名があります。

ガイガー・カウンターはGM管に飛び込んできた放射線の数を数える装置で、多くは放射線の強さをcpm(count per minute)の単位※7(←柏市取材篇の注番号。以下同様)で表示します。

cpmは1分間あたり何個の放射線が飛び込んできているかという数のことです。ベータ線に対して感度が高くガンマ線に対しては感度が低いのが普通なので、ベータ線が多い環境では主としてベータ線の数を測りますが、アルミ板などでベータ線を遮って、透過力の強いガンマ線だけを測ることもできます。

外部被曝の程度を知るために空間線量(その場所に一定時間いた場合どの程度被曝したか)を測定する場合は、ガンマ線の線量率(マイクロシーベルト毎時:μSv/h。μは100万分の1です)を測るのが適しています。ガンマ線は遠くまで飛ぶうえ、体の中へも透過するので、人体への危険度が高い放射線です。各地のマイクロシーベルト毎時の値がニュースなどで頻繁に発表されるのはこのためです。

それにはガンマ線のcpmをμSv/hに変換する必要がありますが、ガンマ線のエネルギーは放射性物質の種類によって違うので、多くの場合、セシウム137からのガンマ線だと仮定して変換しています。市販のガイガー・カウンターの中には、cpmを表示せず、線量率(μSv/h)だけを表示するものもあるようです。機種によってはガンマ線だけを測定するためにベータ線を遮蔽する必要がありますが、これをしなかったために、思ったより高い値が出て混乱を招いた例も少なからず見られました。

ガンマ線の線量率をより正確に測定するためにはシンチレーションカウンターなどの高価な測定器が必要となります。シンチレーションカウンターでは各ガンマ線のエネルギーも測定できるので、放射性物質の種類も知ることができます(ただしそのためには、どのエネルギーの放射線が検出されたかを表示するスペクトル表示の機能が必要で、シンチレーションカウンターでもその機能がないものもあります)。

また、装置自体を正しく補正しておく必要があります。この作業を「校正」※6と呼びます。これは、例えば容器に入れた砂糖の重さを計る際、最初に容器だけを乗せて目盛りをゼロに合わせる作業をするのと同じようなものです。既に放射線強度がわかっている線源を測定して、調整します。機械は時間が経つにつれてずれていくものなので、定期的に校正する必要があります。しかし、個人が既に値がわかっている線源で校正できる機会はほとんどないので、官公庁から発表された空間線量のデータと比較して、自分の測定値にどの程度ずれがあるのかを知っておくのも役立ちます。

■放射能を測るとは


ここまで、外部被曝を防ぐためにガンマ線の強さを測る、つまり「放射線量率を測る」ことを考えてきました。線源となる放射性物質が体の外にある時は、ガンマ線が危険なのです。環境が放射性物質で汚染されている時には、この外部被曝の影響を一番に考える必要があります。

外部被曝に対して、食べたり吸い込んだりして放射性物質を体内に取り込むことによる被曝を内部被曝と言います。放射線を出す源が体の中に入ってしまうと、近くに影響を及ぼすベータ線やアルファ線の人体への影響が深刻になります。今、食品の放射能汚染では特に放射性セシウムが問題になっていますが、放射性セシウムもこのベータ線を出します。

事故から間もない時期は、空気中に舞っていた放射性ヨウ素やセシウムが野菜の表面に付着し汚染していました。しかし、これらは洗い流せば落とせたのでそれほど問題にはなりませんでした。また、水道水からも検出された放射性ヨウ素は半減期が8日と極めて短いので既にほぼ無くなっており、事故当初に子どもたちが放射性ヨウ素でどの程度被曝したかを推定することも困難になっています。

現在、食品の「放射能を測る」と言うと、ほとんどの場合は食品に取り込まれた放射性セシウム(セシウム137とセシウム134)を測っていることになります。セシウムはカリウムと化学的な性質が似ている元素なので、植物はカリウムと同じように取り込んでしまいます。放射性セシウムで汚染された植物を食べた動物の肉や乳にも移行します。

とはいえ、例えば半減期が30年のセシウム137でも、体内で30年間人体に影響を与えるかと言うと必ずしもそうではありません。カリウムが体内で代謝されやがては排出されていくように、植物や動物が生きている限り、セシウム137も排出されていきます。これは、「生物学的半減期」と呼ばれ、セシウム137の場合、おとなで約100日とされています。

ところで、外部被曝なら空間線量に滞在時間を掛けただけの放射線を浴びることになりますが、内部被曝ではどうでしょうか。体に取り込んだ放射性物質は排出されるまで放射線を出すので、被曝が続きます。そこで、排出されるまでの被曝量をすべてあらかじめ足してしまい、「今食べた分の放射性物質によって将来にわたり合計これだけ被曝するはずだ」という量をその食品による被曝量とするのが便利です。

これを「預託実効線量」といい、やはりシーベルトで表します。つまり「まだそれだけの被曝をしているわけではないけれど、将来にわたりそれだけ被曝するはずだ」という量を、食べた段階で計算にいれてしまうのです。この点が、外部被曝量と内部被曝量を表示する際の大きな違いです。この預託実効線量は、食品中にどれだけの放射性物質が含まれているかがわかれば求められるので、食品中の放射性物質量を測ることで知ることができます。

■食品の放射能測定


さて、では、実際に食品に含まれる放射性セシウムの量はどのように測るのでしょうか。

残念ながら、市販のガイガーカウンターの多くはこの目的には不向きです。

以前は、ガイガーカウンターを食品に直接当てて測定している例を多く見かけましたが、それでは空間の放射線の影響のほうが強く出て、食品を測っているとは言えません。

食品中の放射性物質量は少ないので、感度が低い市販のガイガーカウンターではそもそも測定が難しく、また、たとえ空間の放射線を遮蔽して長い時間測定したとしても、多くの食品には自然放射性物質であるカリウム40が含まれていてそれと放射性セシウムを区別できません。

カリウムは人間にとって必須の元素で、その中には必ず微量の放射性カリウムが含まれています。食品の放射能をきちんと測定すればこのカリウム40も検出されるはずなので、これを放射性セシウムと間違えないようにしなくてはならないのです。

そのため、食品中の放射能濃度を測定する場合、放射性物質の種類を見分けられるヨウ化ナトリウム(NaI)シンチレーション検出器※5を用いたガンマ線スペクトロメータなどの測定器が必要です。特に、4月から下限値が引き下げられることから、より精度が高い装置でなければ測定不可能になります。非常に精度の高い測定をしなくてはならない場合には、ゲルマニウム(Ge)半導体検出器が用いられます。これは高価な上、液体窒素で冷やさなくてはならないなど、簡単には使えない装置です。

ただし、大まかに一般食品中の放射能濃度が基準を超えていないかどうか判断する(スクリーニング)ためには、NaIシンチレーション検出器も使用可能です。一般の人も使える民間の測定所などではこのような検出器を使っています。実際の測定では、一定の量の食品(それもかなり多い)を必要とし、それらを細かくすりつぶして容器いっぱいに詰めて測定器にかけます。食品を入れる部分は空間放射線の影響を受けないよう厚い鉛などで覆われています。微量の放射性物質の量を測るには、たくさんの放射線を検出しなくてはなりません。そのため、測定には20分程度かかります。

今はたいていの食品に含まれる放射性セシウムの量が少ないので、測定の誤差が問題になります。測定された量はいろいろな原因でばらついて、何度測定しても同じ数字にはならないのですが、量が少ないと、測定された量とそのばらつきぐあいとがあまり違わなかったり、はなはだしい時はばらつきの方が大きくなったりします。もちろん、その場合には測定された量を信頼するわけにはいきません。極端な場合には、数字の上では放射性物質が検出されていても、実はあるのかないのかすら、はっきりと言えないこともあります。

そのため、測定量には「これより少ないと検出できない」量と「これより少ないと、あることはわかってもどれだけあるかはわからない」量があり、前者を「検出限界」、後者を「定量下限」※1と呼びます。

NaIシンチレーション検出器の定量下限はおおよそ20~50 Bq/kg程度とされています(これは測定時間によって変わり、測定時間を長くすると10 Bq/kg程度まで可能)。一般食品の新規制値は100Bq/kgなので、NaIシンチレーション検出器で測定するのは大変で、以下のようにすることになっています。

放射性セシウムの含有が非常に低い、またはほとんどない食品であればスクリーニング検査を行い、50 Bq/kgを超える値があるかを検証します。規制値の50%水準(より厳しい値)である50 Bq/kgを超えるかどうかを測定し、「検出無し」であれば、規制値100Bq/kg以下は満たしていると判断します。しかし、どのような測定器でも、検出限界ギリギリの測定には誤差が大きくなります※3。もし規制値の50%(つまり一般食品で50 Bq/kg)を超える検出があれば、より感度の高いゲルマニウム半導体検出器による確定測定を実施し、含有量を確定する必要があるでしょう。ゲルマニウム半導体検出器では、精密分析すれば3 Bq/kgまでの測定が可能とされています。

飲料水については、規制値が10 Bq/kgであるため、ゲルマニウム半導体検出器以外では、スクリーニング検査も含め、検査は困難です。
(※引用元:同位体研究所HP)

■新規制値について


厚生労働省は、平成24年4月より、従来の暫定規制値より大幅に厳しい食品中の放射性セシウムの新規制値案を適用する方針※2を打ち出しています。

新たな基準は、「一般食品」の放射性セシウムの基準値が、1kg当たり100Bq/kgです。これは、これまでの暫定規制値 (500Bq/kg) の5分の1の値になります。

また、成人より放射線の影響を受けやすい子供用の食品「乳児用食品」、および「牛乳」は50 Bq/kg、「飲料水」は10Bq/kgと定められています。「乳児用食品」や「牛乳」については、子供が摂取する食品区分であるため、流通する食品のすべてが汚染されていたとしても影響のない値ということで、100Bq/kgの半分の値である50 Bq/kgが基準値とされました。

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