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川口市いじめ不登校訴訟 裁判長が被告側の認否が不十分として書面の再提出を命じる。市側はプレスリリースで争う姿勢を示す——第3回口頭弁論

中学校時代に不登校になったのは、いじめや体罰を受けたことなどが原因だったとして、埼玉県川口市の元生徒・栃尾良介(仮名、16)が「教育を受ける権利を侵害された」として、市を訴えている裁判の第3回口頭弁論が12月26日、さいたま地裁(岡部純子裁判長)で開かれた。被告の市側は、認否を明らかにするための準備書面を提出。しかし、岡部裁判長は、認否が十分ではないとして、再提出を求めた。次回までに被告側が主張を整理することとなった。

被告・川口市に対して、裁判所は「認否が不十分」と再提出を求める

訴状などによると、良介さんは、1年生のときに部の同級生のLINEグループから外され、3学期には部活の練習中に一部の生徒から襟首を後ろからつかまれ、首絞め状態で引きずられ、揺さぶられるなどの暴力を受けた。2年生の2学期には、部員が良介さんの自宅や自転車をスマホで無断撮影し、LINE上にアップし、中傷した。また1年生から2年生にかけてLINEの中で、部員がなりすまし、からかいや誹謗中傷を受けていた。

被告の川口市側は「原告主張の事実関係に対する認否」をしたとする準備書面を提出した。しかし、岡部裁判長は、訴状の請求原因、つまり損害賠償が発生する不法行為が成り立つために必要な要因について、認否をきちんと整理し、明らかにするように求めた。

一方、市側は閉廷後にプレスリリースを発表し、「認否した」と明言した。それによると、「原告が違法だと主張する市の対応は、教育行政上、被告に与えられた合理的裁量の範囲内であり、裁量の逸脱・濫用の違法はない」として、争う姿勢を見せている。

閉廷後に母親は記者団に対し、「裁判長は、こちらの訴状はまとまっていると言っていましたが、被告側がこちらの主張に対して、十分に回答してないということです。これでは、いつになっても、訴状に対する回答がないということになります。何がしたいのでしょうか」と述べた。

閉廷後、さいたま地裁の前で報道陣の取材に応じる原告の母。

被告側「母親が会わせなかったから、自傷行為やいじめに関する主観を確認できず」

ただ、準備書面では市側の認識が一部、明らかになっている。一例をあげると、原告の良介が自傷行為をしたことに関して、「主張しているのは原告母のみであり、戸塚中学校は、原告母の主張する自傷行為について確認できなかった」とした。理由としては、母親が「教職員を原告に会わせず」、「原告への事実確認を禁止した」からだという。また、「教職員らは原告から直接、事情を聞くために繰り返し家庭訪問をしたが、原告母は、原告に会わせなかった」ともしている。加えて、被告側は「原告母は学校に対して原告にいじめの有無に関する質問を禁じたため、学校は、原告の主観を確認できなかった」と主張を展開している。

これに対して、閉廷後に母親は記者団に対し「私が会わせないということはない。校長も担任も顧問も、息子が不登校になった後に家に来て話をしています」と回答している。

被告はいじめについても争う?「学校の調査では事実や証拠は認められず」

いじめの一部についても、被告は争う姿勢を示しているように伺える。原告がサッカー部の練習中に首を締められたということを主張していることに対して、原告本人から申し出たことは卒業まで一度もなく、「繰り返し主張していたのは原告母のみ」とした。被告側は、以下のようにも指摘する。

「他のサッカー部員にも訴えたことはなく、平常に登校し、かつ、サッカー部の練習にも元気よく参加していた」「原告母は『サッカー部のいじめ』を主張していたが、学校の調査によっても、『サッカー部のいじめ』の事実および証拠は認められなかった」

いじめの有無や不登校に関しては、いじめ防止対策推進法による「重大事態」として、川口市教委は調査委員会を設置した。報告書(2018年3月発表)によると、サッカー部の練習中、「ひじで顔を叩かれたこと」については、時期が過ぎていたために、部員や顧問の記憶が定かではないという理由で「実行行為を確認できなかった」とした。一方で、「A(原告)がD(部員の一人)からいきなりTシャツの後ろの襟首を引っ張られ、首を締められた状態で倒されたこと」は「Dからの聞き取りにより、実行行為を確認できた」として、いじめを認定している。

しかし、被告側の準備書面では、学校の調査ではいじめが確認されていないことで、被告側は、調査報告書の内容を事実上否定、あるいは無視しているようにも読める。母親は「こちらはいじめの有無について争ってはいないですが、(準備書面の)全体を読む限りでは、争うのかな、という印象を受けました」と話した。

母親は続ける。

「市教委や学校の対応はずっと、起きた問題に向き合わず、どちらかというと、背を向け、論点をずらしてきました。だからこそ、今回の準備書面も想定内です。市教委が不適切な対応をしたことに向き合ってないのです」

いじめ調査委の報告書と主張が矛盾。原告代理人「調査委のあり方に関わるが、そこまで考えているのか」

いじめ防止対策推進法では、いじめによって自殺未遂や自傷行為、不登校になった場合は「重大事態」とされ、調査委員会が設置されることになる。川口市でも、市教委を事務局として調査委が設置された。その調査委が作成した「報告書」では、自傷行為の有無には触れてないが、いじめの認定と、不登校の因果関係を認めている。

教育長は「いじめにより生徒が不登校に陥る事態を招いてしまい、その間、初期段階で組織的に迅速な対応が遅れてしまった」として、謝罪コメントを発表していた。

しかし、報告書の内容と準備書面の内容に一部、ズレている点がある。調査報告書の内容には法的拘束力はない。原告代理人は記者団に「調査委員会の報告書と違った主張をするのはありえることですが、これは市として意図的に、あるいは(市と市教委が)一体となっていることなのか気になります。この訴訟もいじめ対応の一貫だと思います。ぜひ推進法をもう一度読んでいただきたいと思います。ただ、報告書の問題は全国的な問題でもあります。今後の、調査委員会のあり方に関わります。川口市はそこまで考えてるのでしょうか」と述べた。

次回は2月13日。

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