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【読書感想】ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活

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ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活 ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活
作者: 國友公司
出版社/メーカー: 彩図社
発売日: 2018/09/27
メディア: 単行本(ソフトカバー)
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内容紹介
国立の筑波大学を卒業したものの、就職することができなかった著者は、大阪西成区のあいりん地区に足を踏み入れた。
ヤクザ…、指名手配犯…、博打場…、生活保護…、マイナスイメージで語られることが多い、あいりん地区。
ここで2カ月半の期間、生活をしてみると、どんな景色が見えてくるのか?
西成の住人と共に働き、笑い、涙した、78日間の体験ルポ。

 2018年4月、7年間かけて筑波大学を卒業したものの就職先が決まらなかった著者は、この本を出版した彩図社を訪れ、「原稿が良ければ本にしますよ」と言われて、西成に「潜入」するのです。

 僕は西成についての新書を読んだことがあって、最近はけっこう「常識的な街」になってきているのかな、と思っていたんですよ。

 でも、「ひとりの若い流れ者」として、この街に潜入してきた著者がみた「西成」は、あまりにもカオスな場所だったのです。

 この本を読んでいて、最初は、著者が「もともと自分はここにいるべき人間じゃないんだ」と、西成の住人たちを見下しているようで、「なんか感じ悪いなあ」って思っていたのです。
 ところが、読んでいくうちに、僕も「実際にずっと接していると、『人類みな兄弟』『人間はみんな平等』みたいな建前を維持していくのはきついよねえこれは」と、思うようになってしまったんですよね。
 むしろ、そういう差別意識とか嫌悪感みたいなものを率直に表明しているからこそ、この本は「読みやすい」ところもあるのです。

 そもそも、著者自身も、自分の今後の人生について不安だらけで、だからこそ、「ここの人たちと自分は違う(はず)」と思わないとやってられなかったのかもしれません。

 なぜだか分からないが自分が本当にどうしようもない――西成で一生ドカタをするしか選択肢のない――人間であるように思えてきた。前科はないとはいえ、私はもう二十五歳。このままライターを続けたところで売れる保証などどこにもないし、むしろどうにもならなくなる可能性のほうが高い気がする。「こりゃダメだ」と気付いた時にはもう三十歳。正社員経験のない裏モノ系ライターがそこから就職するなんて、司法試験よりも難しい。少なくとも自分が人事担当だったら裏で「変わった人が来たんですよ」と話題にするだけで、間違っても採用しないだろう。

 著者が接した「西成の人々」の多くは、無垢な善人などではなく、日雇い仕事をしては、まともに予想しているとも思えないような賭け方でギャンブルをして、一瞬でその給料を失ってしまったり、自分よりさらに弱い人を苛めてストレスを発散したりする、という「共感するのが難しい連中」か、トイレでずっと意味不明なことをブツブツ言っているような「おかしな人」だったのです。
 いや、いくらなんでも、2018年にこんな状態なのか?と言いたくなるくらいに。
 福祉の最前線、である西成には、その福祉によって落ちるカネがあり、「貧困ビジネス」も盛んです。

「他にも何かないですかね?」
「そうだな、じゃあヒットマンの仕事とかどう?」

 ヒットマンというと浮かんでくるのはやはり殺し屋であろう。やっぱり思い切りヤクザじゃねえかと私も焦ってしまったが、あいりんでいう「ヒットマン」とは殺し屋のことではない。

 あいりんにはママリンゴをはじめ、多くの福祉専門ドヤというものがある。早い話が、生活保護を受けている者が中心に宿泊しているドヤ。ほとんどが初期費用ゼロで入居することができ、生活保護が下りるまでは少額ではあるがお金も貸してくれる。もちろん生活保護の申請もすべて面倒を見てくれる。保護申請のやり方が分からずに路上生活に陥ってしまうというケースがとても多いのだ。

 しかしドヤとしては、入居者一人当たりの収益は毎月の家賃や共益費合わせて月に四万円程度。どんなホテルでも同じではあるが、とにかく空き部屋を作らないということが重要だ。そこでヒットマンの登場である。なんばや梅田を中心に(時には兵庫や京都まで)その辺でくすぶっているオヤジに、「もう疲れたやろ。生活保護受けよか?」と声をかけ、候補者を引っ張ってくるというわけだ。

 カジタニの会社に仮に一人の候補者を連れてきたとする。まずは会社で申請書類を作成し、生活保護申請をする。
 保護が下りるまでの(大体下りるらしい)一ヶ月程度の間は、連れてきたヒットマンが一日千円程度を手渡し、面倒を見ることになる。そして保護が下りた時に、そこから貸した三万円と会社からのマージン三万円が懐に入るという流れだ。それにプラスして、その後も毎月四千円がバックとしてヒットマンに渡される。カジタニの会社の稼ぎ頭である不動産会社のある社員などは、現在百人ほどのオヤジを抱えており、何もしなくても月四十万円もらっているそうだ。

 しかしこのヒットマン、かなり過酷な仕事である。保護申請中に逃げられたら、もちろん貸した金は返ってこないし、「千円じゃ少ない、増やさないと逃げるぞ」とカマをかけてくる輩までいる。シャブ中もウジャウジャいて、「金がない」だの「逃げるぞ」など、わけのわからない電話が四六時中かかってくるというわけだ。

 「貧困ビジネス」で弱者から金を吸い取るなんて、ひどい奴らだ……と僕は思っていたのですが、こういう現場でのやりとりを知ると、「オヤジ」たちも、けっして無知で無垢な人間ではなさそうです。
 食うか食われるかの世界、なんだよなあ、結局。

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