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「徴用工問題」における「韓国」の身勝手

(リベラルタイム2019年2月号掲載)

日本財団理事長 尾形 武寿


第2次世界大戦中に朝鮮半島から動員された元徴用工らが新日鉄住金と三菱重工業に損害賠償を求めた訴訟の上告審で韓国の大法院(最高裁)は10月と11月、相次いで2社の上告を棄却し、両社の敗訴が確定した。

日韓の賠償請求権問題は1965年の日韓国交正常化に当たって結ばれた日韓請求権・経済協力協定で、我が国は当時の韓国の国家予算のほぼ2倍に当たる計5億ドル(無償3億ドル、借款2億ドル)の経済援助資金を提供。協定には請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決された」と明記され、当時の朴正煕大統領は資金を道路やダム建設などインフラ整備に充て「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を実現した。

交渉の中で日本側は、韓国側が求めた8項目をすべて認め、文在寅大統領の政治的師匠にも当たる廬武鉉政権も2005年、個人請求権問題は無償3億ドルの中に含まれている、と結論付けている。徴用工に補償金が渡らなかったのは、ひとえに韓国側の事情で、この意味で徴用工問題は日韓間の問題ではなく、韓国の国内問題である。

これに対し大法院判決は、「請求権協定の交渉過程で日本政府は植民地支配の不法性を認めないまま、強制動員の被害に対する法的な賠償を根本的に否定した」として、請求権協定には慰謝料請求権が含まれないと判断した。

植民地支配の評価は当時の日韓交渉の原点でもあり交渉は難航したが、最後に双方が歩み寄り、「完全かつ最終的な解決」をうたうことで、その後の戦後処理に道筋を付けた、と理解する。半世紀以上を経て一方的に「不法だった」と決め付けたのでは、先人の努力を無にするばかりか、戦後処理自体が振出しに戻り、日韓関係の正常化は一層、遠のくことになる。

そうでなくとも合意された条約や協定が簡単に反故にされるようでは国と国の関係は成り立たない。それ故に日本国憲法は98条で「締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と定め、日韓両国が批准する「条約法に関するウイーン条約」も「合意は守られなければならない」としている。

河野太郎外務大臣が判決を「暴挙」と批判したのは理解できるし、「歴史問題によって韓日の協力関係が損なわれてはならない」としながら、判決から1カ月以上を経ても何らの収拾策を示さない文大統領の姿勢にも疑問を禁じ得ない。

過日、文政権の中枢にいる知人と話した際、知人は「判決を苦々しく受け止めている人は政権内部にも多い。しかし弱者第一を唱え当選した大統領が、それを言うのは難しい。日本国政府はそこを理解してほしい」と語った。これでは、あまりに勝手が過ぎるのではないか。

文政権は慰安婦問題でも11月21日、日本が出資して2015年末に設立された「和解・癒し財団」を解散した。結果、「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓合意は反故になり、財団方式による徴用工問題解決の道も閉ざされた形となる。合意時点で存命だった元慰安婦47人のうち34人が1人約1億ウオン(約1千万円)を受け取っていたにも関わらず、である。

近隣諸国と緊張状態になるのは本意ではないが、国民感情を優先するのであれば、日本国民の感情も留意されなければならない。筆者は機会あるたびに日韓基本条約に何が書かれ、それがどのように履行され、結果、何が起きているか、まず検証するのが韓国の責任と指摘してきた。

韓国は二言目には「日本は戦争の贖罪を果たしていない」、「謝罪が足りない」と言うが、我が国は戦後処理を十分に果たし、約束事も誠実に履行している。地政学的に離れることのげきない隣国が同じ価値観を共有出来ない現状を、心底から憂慮する。

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