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衆院財務金融委員会の海江田万里委員長が、浅川和彦社長になぜ丁半博打に負けたか追及しても無意味

◆株式市場には、「相場のことは相場に聞け」という格言がある。売り買いが激しく交錯する株式市場で、相場がどう動くかを予想しようとしても無駄である。上がるのか下がるのかは、市場が開いてからでないと分からない。そこで相場の基本は、相場の流れに素直に乗ることである。相場の流れに逆らったり、偏見を持って相場を見てはいけない。相場は自分の都合に合わせて動いてはくれないからである。

 個人投資家ばかりでなく、相場のプロでさえも、とかく陥りやすいのが、自分の認識や相場観に反して相場が動いた時に、「必ずそのうち」「まだ大丈夫だ」「相場の方が間違っている」などと意地を張り、ずるずると損勘定を膨らませてしまうことだ。「見切り千両」という格言があるように、「相場」が思惑通りに行かずに、判断を間違ったと感じたときは、損失を最小限度に食い止めるため、直ぐに撤退することが、肝要である。

◆所詮、相場を張る行為は、「丁半博打」だ。相場は、上がった下がったりする。上がるのを「丁」、下がるのを「半」とすれば、どちらに賭けるかは、まさしく、「丁半博打」に他ならない。勝つこともあれば、負けることもある。博打打は、負けようと思って場を張っているわけではない。いつも勝とうとして一生懸命だ。そうでなければ、イカサマ博打となる。このイカサマがバレたときは、身包み剥がされ、フンドシまで取られて、最後は、「簀巻き」にされて、大川に投げ込まれてしまう。これが、博徒の掟であり、宿命でもある。

 しかし、イカサマを張ったわけではなく、「丁半博打」に負けただけならば、本来は、だれからも咎められることはない。博打場の客である旦那衆が大金を叩いて、特定の博徒に賭けて場を任せて負けたとしても、それは、その博徒に描けた旦那衆が、自己責任において、潔く損失を引き受けなくてはならないのである。

◆だから、博徒や旦那衆、あるいは、仲介役が、国会に参考人として呼び出しを受けて、「どうして負けたのだ」と厳しく叱責されて追及されている光景は、何かしら違和感がある。というより、どこか、滑稽だ。それも、呼んだのが、衆院財務金融委員会の海江田万里委員長というから、これが最もおかしい。海江田万里委員長と言えば、本職は経済評論家であり、金融証券界に通じたプロ中のプロのはずだ。相場が、「丁半博打」であることくらいは、当然、熟知している。

 そのプロ中のプロが、野村証券出身の営業のブロであるAIJ投資顧問会社の浅川和彦社長を呼びつけて、「どうして負けたのか」と詰め寄る姿は、変なのである。それは、相場を張れば、勝つこともあれば、負けることもあり、絶対に負けずに、連戦連勝、つまり「常勝」であることは、よほど博打の天才でない限り、あり得ないことである。韓国の俳優ィ・ビョンホンがテレビ映画「オールイン」で演じた主人公は、米国ラスベガスのカジノで大勝して大もうけしたが、普通はこうはいかない。

◆浅川和彦社長が、厚生年金基金から預かった企業年金の運用に失敗したのは、トレーダーたちにひたすら「逆張り」を指示し続けたのが原因だったという。朝日新聞デジタルが8月26日午前9時1分、、「AIJ、相場反転に賭け『逆張り』高リスク取引重ねる」という見出しをつけて、以下のように伝えている。

「AIJ投資顧問(東京都中央区)による年金資産の消失問題で、同社は金融商品の取引市場の相場が下落しているなかで、反転しないと利益を得られない『逆張り』と呼ばれるリスクの高い取引を繰り返していたことが証券取引等監視委員会の調べでわかった。浅川和彦社長は監視委の調べに対し、『損失が膨らみ、早く巻き返そうと思った』と説明しているという。監視委の調べや関係者の話によると、AIJはケイマン諸島に設立したファンドで2002年6月から、投資信託の運用を本格的に始めた。このファンドは昨年3月期までに、1458億円を年金基金から集めていたとされる。AIJは年金基金に対し、日経平均株価などに連動して上下するデリバティブ(金融派生商品)によって、高い収益を上げていると説明していた。しかし実際には、運用開始直後から損失を重ね、その総額は昨年3月期で1092億円にも達した。特に、リーマン・ショック後の10年3月までの1年間に、約500億円の損失を出していた」

 野村証券関係者によれば、浅川和彦社長は、証券営業の一流のブロではあっても、いわゆる「相場師」ではなかったという。旦那衆などを相手に営業をかけて客にする証券営業のブロではあっても、「相場師」 として運用実績を上げる「勝負師」ではなかったということだ。

 浅川和彦社長は、衆院財務金融委員会で「博打をやったつもりはない」と発言しているが、この発言こそ、運用実績を上げる「相場師」でもなく、「勝負師」でもなかったという恐るべき無責任さを証明している。他人の大切な資金を運用するからには、「相場師」でもあり、「勝負師」でなくてはならないのだ。資金運用は、専門のトレーダーやファンド・マネージャーに任せていたのである。

 しかし、任せるとは言っても、口うるさく指示していたと言われており、結局、証券界のガリバーと言われる野村証券の知名度をバックに顧客を信用されて、資金運用の素人が、危険な相場に手を出したのが、災いしたものと思われる。
 こんな素人に資金を預けて、運用を任せてしまった厚生年金基金の役員たちの罪は、極めて重い。それぞれが、個人資産を差し出して、損失を補填すべきである。

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