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「毎月勤労統計」調査ミスと12年前の年金記録問題

  厚労省が、「毎月勤労統計」の調査をルール通りにやらなかった問題、12年前に厚労大臣として年金記録問題に対応したが、そのときに驚愕した社会保険庁の無責任体質を思い出す。

  2004年から昨年まで、このルール違反が続いていたというから、実は私が厚労相を勤めた時期(2007~2009年)も含まれる。私が、この問題に気づかなかったことは申し訳ないと思うが、統計調査の現場でまさかこのような手抜きが行われていたとは思いもしなかったし、担当職員からこの統計調査について説明を受けたこともなかった。

  2007年の参院選で、自民党は大惨敗を喫したが、選挙後、私は安倍内閣の厚労大臣となり、年金記録問題の解決に努力した。

  選挙の前から、私は参議院自民党政審会長として、この問題に取り組んだが、社保庁の業務センターを視察したときの感想を書いたメモ(2007年6月18日)を再録する。

*        *       *

  まず目につくのは、その非効率性である。親方日の丸、情報隠蔽、職務怠慢と、かつてのソ連邦を訪ねたときのような印象である。トップの歴代長官は、現場を見たこともなく、高給をむさぼり、1〜3年の在職後、巨額の退職金を手にして、次の天下り先に渡っていく。この渡り鳥たちが、第一の戦犯である。

 コンピューターのシステムは、旧式(レガシーシステム)であり、たとえば、1430万件のマイクロフィルム化された旧台帳の記録は、オンライン化されつつあるのに、その件数が検索できない。手書きの台帳をやめてコンピューターを導入しようとしたとき、首切りにつながるとして反対したのが労働組合である。これが第2の戦犯である。

 この組合は、かつては自治労国費評議会と呼ばれていたが、歴代長官と「覚書」を取り交わし、仕事をさぼるために驚くべき労働条件を定めてきた。このような覚書が廃棄されたのは、わずか5年前である。

  『フライデー』(2007年6月29日号)に掲載された「国費評九州地連三役会議」の2001年12月1日の文書によれば、「我々はどうか。電話照会を受けながら、タバコを吸いながらの入力。疲れたらコーヒーを飲んで一服。年休はどんどん取ったり、時間内組合活動、職場集会をやったり、病休者がいたり、パソコンひとつも一人で満足に扱えず、雑談したり色々。昼休みも電話がかかってきたり、来訪者がきても休憩している」そうである。そして、このようなふざけた労働状態について、「一生懸命たたかってきたから今の労働条件があり、我々の財産である」と誇らしげに述べているのを見ると、まさに噴飯ものである。この労働組合は、約1万7000人の社保庁職員の7割を組織化しているという。

 もちろん個々の職員でまじめに勤務している者もいよう。しかし、この役所は組織として腐敗しきっており、まさに旧国鉄と同じである。国民の不便も顧みず、動労や国労がストを行い、サービス業としての自覚すらなかった国鉄は、分割民営化によってまともな組織になった。社保庁もまた、同様な解体分割が不可欠である。

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厚労大臣に就任して、私は社会保険庁を解体し、日本年金機構に作り替えた。大臣を辞めて10年が経とうとしている。10年前の改革が反古にされないことを祈るのみである。

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