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「いだてん」いきなりクライマックス、宮藤官九郎ワールド炸裂 - 田部康喜 (東日本国際大学客員教授)

NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」(1月6日スタート)は、日本が初めて五輪に参加するストックホルム大会直前の明治末と、1964年東京五輪の開催が決まる昭和の高度経済成長時代を背景として、いきなりクライマックスを見せた。ストックホルム大会の代表となったマラソンの金栗四三の登場と、64年東京大会誘致が決まったミュンヘンにおけるIOC総会である。

脚本の宮藤官九郎の代表作になることが決まった瞬間でもある。宮藤自身は創作活動の転機となった作品としてこれまで、連続テレビ小説「あまちゃん」(2013年・のん主演)と、映画「中学生円山」(同年・草彅剛主演)をあげてきた。今回の作品は、時空を超えた壮大なドラマとして、「クドカン」の新たなページに加わる。


(EvrenKalinbacak/iStock/Getty Images Plus)

2020年東京五輪は、開催まであと1年余りを残すのみなのに、列島の盛り上がりが欠けている。国立陸上競技場の設計変更やシンボルマークの盗用疑惑など、準備レースは最初からつまずいた。そもそも、なぜいま五輪なのか、人々はいまだに腑に落ちていない。

それは、20年東京五輪が人々の胸を打つ「物語」をいまだに語っていないからだ。大河ドラマ「いだてん」はおそらく、その空白を埋めることだろう。実は、競技施設や酷暑対策などよりも、五輪が成功するためには「物語」が大切なのである。「クドカン」もそれを十分に意識しているだろうし、重要な役割を「クドカン」に委ねた制作陣に敬意を払いたい。

大会にこぎつけるまでの苦闘のドラマが予想される

1959年5月のミュンヘンにおけるIOC総会に60年東京大会の開催がかかっていた。ライバル都市との最終投票を前にしたプレゼンテーションを担当するはずだった、外務省の官僚が省内の運動会でアキレス腱を断裂し、急きょ、代役に立ったのは外交評論家の平沢和重(星野源)だった。誘致を決定づけたと伝えられている平沢のプレゼンは、日本の小学校6年生の教科書に五輪についての記述があることから始まる。「オリンピック、オリンピック、オリンピック、世界の人が世界の旗をもって集まる……」と。そして、いまこそアジアで開催されるべきだ、と説くのである。

60年五輪の記録映画である「東京オリンピック」(1965年、市川崑監督)では、ギリシャで採火された聖火が、アジアで初めての五輪を祝うかのようにイスタンブールからイラクやイラン、タイなどの諸都市でランナーたちによって引き継がれる映像が美しい。

五輪招致の中心人物となったのが、朝日新聞の役員から、日本水泳連盟会長などを務めた田畑政治(阿部サダヲ)である。プレゼンテーションをする外務官僚が負傷してあわてて、火をつけたたばこを逆に口に当てて熱がる仕草がおかしい。阿部サダヲはいうまでもなく、クドカン組の常連ともいえる俳優である。「木更津キャッツアイシリーズ」(2003年・2006年)や「謝罪の王様」(2013年)のクドカン脚本の演技で印象に残る。

60年東京大会の招致が決定した文書を持って、会場から飛び出してくる田畑(阿部)は、ドラマのひとりの主役である。大会にこぎつけるまでの苦闘のドラマが予想される。

五輪にかける人々の人生が織りなすドラマに期待

もうひとりの主役が、12年ストックホルム大会にマラソンで出場した、金栗四三(中村勘九郎)である。東京高等師範学校の学生だった。

11年(明治44年)11月19日、ストックホルム大会に派遣する選手を選考する大運動会が、京浜電鉄がレジャーランドに予定していた土地を400m走ができる競技場に整備した「羽田競技場」。講道館の創始者である東京高等師範学校の校長の嘉納治五郎(役所広司)が企画したものだった。嘉納は駐日フランス大使を通じて、日本の五輪参加を要請されて、自らが引き受けたのだった。

大運動会は、途中から土砂降りの雨となった。マラソン大会に出場した選手たちは、次々に棄権していった。参加資格は中学校卒業が前提だったが、嘉納がひいきにしている車引きの小学校卒の清さん(峯田和伸)が胸に「早せ田」ゼッケンをつけて走っているのが微笑を誘う。嘉納役の役所広司は日本を代表する本格派俳優であるが、三谷幸喜脚本・監督の一連の喜劇映画でもたっしゃな演技をこなしてきた。

雨のなかをひとりの選手がゴールを目指して走ってくる。嘉納が叫ぶ。「来た!」「韋駄天(いだてんだ)!」

ゼッケン51番から、東京高等師範学校の生徒である金栗四三であることがわかる。

「いたぞ!いだてん」「かれこそいだてんだ!」

記録は2時間32分。当時の世界新記録である。

大運動会の記者発表会で、嘉納は世界新記録がでなかった場合は、五輪出場を辞退するといっていたのである。

嘉納はアジア初のIOC委員として、東京五輪の招致を目指すようになる。40年東京大会の開催都市の投票で勝利するが、この大会は第2次世界大戦によって見送られた。38年カイロにおけるIOC総会後の帰路の船中で死去した。それを看取ったのが、64年五輪の招致のプレゼンテーションをした、平沢和重だった。

五輪にかける人々の人生が織りなすドラマに期待したい。

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